2024年8月5日に日経平均株価が歴史的な下落を記録するなど、株式市場が荒れています。日本の中央銀行である日本銀行が政策金利を引き上げ、米国で景気後退懸念がにわかに台頭していることが株価暴落の引き金です。

 9月優待株に関しても、多くの銘柄が急落し、株価が落ち着くまで時間がかかりそうです。特に為替市場で急速な円高が進んでいることもあり、海外で収益を上げる外需企業や円高で訪日外国人の消費落ち込みが不安視されるインバウンド(訪日外国人)関連の内需株などは不安定な値動きが続くかもしれません。

 ただ、好業績にもかかわらず全体相場の悪化で株価がツレ安している9月優待株に関しては、ある意味、割安で仕込めるチャンスと考えることもできます。

 長期的な株価チャートをよく見て、過去に株価が下げ止まった価格帯などを調べ、全体相場の動向にも細心の注意を払った上で優待株投資を行いましょう。

QUOカード年間3万円分など超高額優待の新設で株価急騰銘柄が続出!

 2023~2024年にかけて、株式を分割したり、株主優待制度を新設・拡充する企業が続出しています。

 その理由は、少額資金や優待目的で買えるようにすることで、個人投資家に安定株主になってもらいたいから。

 2024年からは新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠で年間240万円(総額1,200万円)まで優待株など個別株に非課税投資できるようになったことも、優待新設・拡充ラッシュの大きな要因です。

 9月優待株は全部で382銘柄、3月優待株の772銘柄に次いで1年で2番目に優待株が多い月だけに、優待新設&拡充銘柄も多数あります。

※楽天証券の株主優待検索より。本特集の株価、株数あたりの投資金額、予想配当利回りなどは全て2024年8月6日終値で計算。以下同

 中には保有株数次第で、QUOカード年間3万円分、ハーゲンダッツギフト券4枚、松阪牛カレー・焼肉缶詰170g(3,600円相当)がもらえる豪華な高額優待を新設する企業もあります。

 例えば、2024年7月19日には東京、千葉などで保育・介護・障害福祉サービスを展開するAIAIグループ(6557)が2024年9月末株主に対する株式2分割と9月末に300株以上保有(投資金額約74万5,500円)の株主にQUOカード1万5,000円分の高額優待の新設を発表。

 2025年3月末株主以降は10月1日に2分割された株式300株(2024年8月6日終値で計算して投資金額約37万2,750円)に対して3月・9月末にQUOカード1万5,000円分、年間3万円分とさらに優待内容が拡充されます。
※2024年8月6日終値で計算した、2024年10月以降の株式2分割後に300株を買うために必要な投資金額の目安

 これを受け同社の株価は翌営業日の7月22日から23日まで2日連続ストップ高。7月25日には発表前の19日終値より1,478円高の2,498円まで急騰しました。8月上旬に全体相場が暴落した際も大きく下がらず、株価は2,400~2,500円台で推移しています。

 優待を新設・拡充した企業を検索するには、楽天証券の「国内株式」→「適時開示情報」→「適時開示情報検索」を利用するのが便利です。「キーワード」欄から「優待」を選択すれば、優待に関する開示情報を閲覧できます。

 こうした適時開示情報は日本取引所グループが運営する「TDnet(適時開示情報閲覧サービス)」でも閲覧できますが、TDnetで検索できるのは1カ月前まで。

 楽天証券の「適時開示情報検索」なら過去1年間という長期間にわたって企業が開示した業績、経営に関する情報全てを閲覧することが可能ですので、ぜひ使いこなしてみましょう。


 

 検索の結果、2024年1月以降、優待の新設を発表した9月優待株は約11銘柄ありました。

 ただ、いくら株主優待が豪華で株価が一時的に上昇しても、業績が低迷していたり、日々の取引高が極端に少ない銘柄は投資に不向きです。そこで、優待を新設・拡充した9月優待株の中から、業績が安定していて、8月の全体相場の暴落後も株価の長期的な上昇に期待できそうな銘柄を厳選しました。

優待拡充で魅力度アップNo.1は王将フードサービス(9936)!

 9月の優待新設・拡充銘柄のNo.1は関西圏を中心に全国各地に「餃子の王将」731店舗を展開する王将フードサービス(9936)
※2024年3月31日現在

 9月・3月末に100株保有で2,000円分の食事券、3月末株主には飲食時の会計から利用代金5%割引が受けられる「株主優待カード」(有効期限は1年間)が贈呈されます。

 2024年9月末までは100株購入に投資金額が約73万8,000円必要なため、手を出しづらい面があります。

 しかし、2024年9月末に株式を3分割することを発表。しかも優待内容は分割後も変わらず、今後も100株(2024年8月6日終値で計算して投資金額約24万6,000円)で9月・3月末に2,000円分の食事券や3月末の飲食5%割引カードが贈呈されます。

 2024年9月26日(木)の優待権利付き最終日までに100株保有していると、今回の9月末優待も含めて、分割後の300株の保有株主として1,000円多い3,000円分の食事券が贈呈されます。

 同社は、コロナ明けの客数増加や値上げ効果もあって業績は堅調そのもの。堅実経営で財務力が非常に高いことでも知られ、今期2025年3月期も5円増配の1株当たり150円の株主配当(配当利回りは1.70%)を見込んでいます。

 8月上旬の全体相場の暴落で最高値圏にあった株価が2,000円近くも大きく値下がりしているので、購入を考えるなら株価が安定するのを待ちましょう。



 

2.日本エコシステム(9249)

 第2位は驚愕(きょうがく)の高額QUOカード優待が話題の日本エコシステム(9249)

 時価総額118億円の小型株ながら、中部地方を地盤に公営競馬場の投票券システム運営など公共サービス事業、環境、交通インフラ事業を手掛ける業績安定企業です。

 同社は2024年1月19日、流通株式の時価総額、流通株式比率の上場基準を満たすため、2024年3月末以降、9月・3月末に200株(投資金額約82万6,000円)保有で同社オリジナルのQUOカード1万5,000円分を贈呈する株主優待制度の新設を発表しました。

 この発表を受けて株価は1月19日終値の1,684円から、2024年1月22~24日にかけてストップ高を連発し4,585円まで上昇。8月上旬の全体相場の暴落以降も株価は4,000円台超を維持しています。

 同社は業績の急成長は見込めないものの、今期2024年9月期も道路保守管理会社の買収など積極的なM&A(買収や合併)で営業増益予想。1株当たり1円増配予定で、予想配当利回りは1.22%です。

 そのため、高額な優待新設で株価が一時的に急騰したものの、また下落するといったこともないようです。

 今後も地道なM&Aで業績の向上が続けば、もともと財務力が盤石なため、今回の高額優待導入に加えて、さらなる株主還元策に期待できるかもしれません。



 

3.アイスコ(7698)

 9月の優待新設株No.3は、アイス・冷凍食品の卸売事業を手掛けるアイスコ(7698)

 同社は2024年5月13日に2024年9月末での株式2分割と、100株(投資金額約27万9,000円)以上の保有でハーゲンダッツギフト券4枚贈呈の株主優待制度新設を発表しました。

 2025年3月末優待以降は3月・9月末に株式2分割後の100株(2024年8月6日終値で計算して投資金額約13万9,500円)以上保有で一律にハーゲンダッツギフト券各4枚が分割前と変わらずに贈呈されるので、さらにお得度がアップします。

 ちなみにハーゲンダッツギフト券1枚でハーゲンダッツのミニカップ、クリスピーサンド・バーのいずれか2個と引き換え可能。ギフト券1枚のメーカー希望小売価格は814円(非課税)です。
※2024年8月6日現在のハーゲンダッツ社のホームページ参照

 優待新設発表の2024年5月13日以降、5月14~15日にかけて同社の株価は13日終値の1,651円から653円高の2,304円まで上昇。

 同時に発表した今期2025年3月期の通期業績も8期連続増収と11%の経常増益予想で、猛暑によるアイス需要の拡大期待もあって株価は続伸中。その後も一時1,000円以上も上昇して現在は2,700円前後で高止まりしています。

 地球温暖化による夏のアイス需要の拡大や同社の主力事業である冷凍食品卸しの成長性を考えると、今後も業績拡大が続きそうな点が魅力です。

 ただ、直近の株価は猛暑特需を期待した買いで上がり過ぎている面もあるため、株価がもう少し下がるのを待った方がいいかもしれません。



 

4.イー・ガーディアン(6050)

 第4位は、動画・掲示板などの投稿監視代行事業を手掛けるイー・ガーディアン(6050)

 2024年5月7日に今期2024年9月期の4円増配(1株当たり配当31円)とともに、9月末に100株以上保有で一律、QUOカード5,000円分贈呈の株主優待制度新設を発表しました。

 1年以上継続保有すると、QUOカードの額面が8,000円分に増額されます。

 予想配当利回り1.72%の株主配当に加えて、100株(投資金額約16万6,800円)で換金性の高いQUOカード5,000円分ですから、なかなか魅力的な優待内容といえるでしょう。

 同社は、動画監視のアウトソーシング事業が低調で今期2024年9月期は2期連続の減益予想ですが、サイバーセキュリティ事業やゲーム会社向けカスタマーサポート事業などの成長に期待したいところ。

 株価は2021年11月高値4,125円から2024年3月には安値1,311円まで下落しました。2024年4月以降は上昇に転じましたが、8月上旬の暴落に巻き込まれて現在は1,600円台で推移しています。



 

5.空港施設(8864)

 羽田空港をメインに全国12の空港で不動産賃貸事業や施設の給水・熱供給事業を手掛ける空港施設(8864)

 同社は2023年3月末優待以降、優待内容を指定ホテルの宿泊割引券から、9月・3月末に100株以上保有で一律で同社運営のレストラン食事券2,500円分に変更した優待内容変更銘柄です。

 優待食事券を利用できるのは、飛行機が見える羽田空港近くのレストラン「ブルーコーナーUC店」(東京モノレール新整備場駅すぐ)のみ。東京在住の人以外は少し利用しづらいですが、飛行機好きには見逃せない優待といえるでしょう。

 同社はインバウンド拡大もあって、業績や株価の安定ぶりが魅力。インバウンド需要は最近の急速な円高のせいで少し落ち込む恐れもありますが、今期2025年3月期の予想配当利回りが3.23%に対する高配当株の側面もあります。

 また、株価が会社の保有する純資産の何倍まで買われているか示したPBR(株価純資産倍率)は0.48倍と非常に割安。

 香港の投資会社が物言う株主として株主総会でも経営陣の交代や自社株買いなどの提案を行っており、今後、積極的な株主還元策や経営改革が行われれば株価の反転上昇に期待できるかもしれません。