今週は日本銀行の金融政策決定会合、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が7月31日(水)に相次いで終了(FOMC終了は日本時間で1日未明)。

 日銀と、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策の動向が、株式や為替相場に大きな影響を与えそうです。

 また日米企業の2024年4-6月期決算発表が集中し、米国では30日(火)にマイクロソフト(MSFT)、31日(水)にフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)、8月1日(木)にアップル(AAPL)アマゾン・ドット・コム(AMZN)が発表。

 先週、総崩れだった「マグニフィセント7」と呼ばれる米国巨大IT企業の株価が好決算で持ち直すか、期待外れで下落が再加速するかに関心が集まります。

 日本でも31日(水)に先週、株価が前週末比10.4%も急落した主力半導体株のアドバンテスト(6857)、8月1日(木)の取引時間中には円安加速で先週7.1%下落したトヨタ自動車(7203)、全体相場悪化で5.7%安の三菱商事(8058)、5.0%安の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)など主要企業が一斉に決算発表します。

 先週の日経平均株価(225種)の26日(金)終値は前週末比2,396円(6.0%)安の3万7,667円と「暴落」に近い下落となりました。

 25日(木)には一時1ドル=151円後半まで円高が進んだことで前日比1,285円も急落。2016年6月に英国がEU(欧州連合)離脱を表明したブレグジット以来、約8年ぶりとなる下げ幅を記録するなど、5営業日全てマイナスでした。

 米国では、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週末比0.83%下落。ハイテク株急落が直撃したナスダック総合指数は2.08%安。

 その一方、米国で9月利下げが確実視される中、利下げの恩恵を受けやすい資本財など景気敏感株や金融株の影響力が強いダウ工業株30種平均は0.75%高と週間でプラスを維持しました。

 26日(金)夜には、米国の6月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)の上昇率が市場予想通り前年同月比2.5%増で前月より鈍化。米国株は巨大IT企業も含めて大きく反転上昇しました。

 26日のニューヨーク外国為替市場で1ドル=153円70銭台まで円安方向に戻したこともあり、週明け29日(月)の日経平均の午前終値は前週末終値比748円高の3万8,415円まで上昇しました。取引時間中の上げ幅は一時1,000円を超えました。半導体関連のハイテク株や素材株などが買われ、相場を押し上げました

 今週31日(水)の日銀会合で追加利上げが見送られた場合、為替レートが円安に振れることで外需株中心に大きくリバウンド上昇する可能性もありそうです。

先週:日米半導体株暴落で上昇相場終焉?日本株は円高も打撃で米国株以上に弱い! 

 先週の株式市場は大荒れ。半導体株が「無残」といっていいほどたたき売られました。

 半導体製造装置大手の東京エレクトロン(8035)は先々週の12.7%安に続いて、前週末比11.4%安と2週続けて2ケタの下落率。

 半導体成膜装置のKOKUSAI ELECTRIC(6525)は東証プライム市場の下落率ワーストとなる25.9%安。

 ここまで急落してしまうと、半導体株の長期上昇トレンドは完全に崩れたといえ、AI(人工知能)バブル崩壊が続くようなら今週さらに下げてもおかしくありません。

 建機向け油圧フィルタのヤマシンフィルタ(6240)が19.9%安、防衛関連の川崎重工業(7012)が14.1%安に沈むなど、米国共和党の次期大統領候補であるトランプ氏の政策に沿った建機、防衛関連株が買われる「トランプトレード」も終息しました。

 また、25日(木)には一時1ドル=151円90銭台まで円高が進行。

 外需株が下落した他、円高になると訪日外国人の国内消費が頭打ちになるという思惑から三越伊勢丹ホールディングス(3099)が11.7%安となるなど、インバウンド関連の内需株も売られました。

 23日(火)には、マグニフィセント7の一角を占める電気自動車のテスラ(TSLA)が発表した2024年4-6月期の利益が予想を下回り、自動運転タクシー「ロボタクシー」の発表延期も表明。

 AIに対する市場の熱が急速に冷め、翌24日(水)、テスラ株は前日比12%安、ナスダック総合指数も3.64%安と急落。

 24日の日経平均が前日比1,285円(3.3%)も急落する引き金になりました。

 米国では21日(日)に高齢のバイデン現大統領が11月5日に迫った次期大統領選からの撤退を表明。

 バイデン氏が後継として支持した副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党の次期大統領候補に指名されることがほぼ確実になりました。

 各種調査ではカマラ氏と共和党候補のトランプ前大統領の支持率にそれほど差がないことから、トランプ相場は小休止となり、今後は政治的混乱が市場リスクになりそうです。

 米国では巨大IT企業から「シクリカル(景気敏感株)」と呼ばれる重厚長大産業への「ローテーション(資金移動)」が鮮明で、巨大IT企業が失速しても、NYダウは先週まで4週連続で上昇しています。

 25日(木)発表の米国の2024年4-6月期の実質GDP(国内総生産)速報値は前期比年率換算で予想を上回る2.8%増と伸びが加速。

 26日(金)発表の米国個人消費の価格指数(PCEデフレーター)は予想通り鈍化し、物価の沈静化が鮮明になりました。

 米国経済が順調にソフトランディング(景気軟着陸)を続けていることは、今週の日米株価の下げ止まりにも貢献しそうです。

 ただ、米国の9月利下げが確実視され、31日(水)の日銀会合で金融引き締め策の決定が濃厚な日本株にとっては、今後、日米金利差縮小による円高が大きな逆風になりそうです。

 そう考えると、日本株は外需株中心に、米国株以上に上がりにくい状況が続く可能性も高いでしょう。

今週:日米中央銀行の政策動向で乱高下!?アップル決算や米雇用統計が相場かく乱!?

 今週は31日(水)昼に日銀の金融政策決定会合、日本時間1日未明に米国の金融政策を決めるFOMCが重なることもあり、日米両国の金融政策の変更で相場が大きく動く可能性があります。

 31日昼終了の日銀会合では、これまで月間6兆円程度だった国債の買い入れ額の減額が発表される予定です。

 減額規模は3~4兆円になり、2年後の買い入れ規模は現状の6兆円から2~3兆円に半減するというのが大方の予想になっています。

 市場の一部では現状0~0.1%の政策金利の利上げに踏み込むという警戒感も出ています。

 先週22日(月)には自民党の茂木敏充幹事長が講演会で、日銀は利上げの検討を含め金融政策正常化方針を明確に打ち出す必要があるといった趣旨の発言を行いました。

 円安による物価高が支持率低迷につながりかねない与党自民党からの要請もあり、日銀が今回、利上げに動く可能性がないとはいえません。

 ただ、先週の円高進行で日本株が急落したこともあり、今回の会合では10月末の利上げを匂わせつつ、政策金利を据え置きして様子見するだろう、という見方が大勢を占めています。

 1日(木)未明には米国のFOMCも終了。

 FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長が9月以降も2024年中に追加利下げを行うことに前向きな発言をした場合、株価にとってポジティブでしょう。

 FOMCだけでなく、米国では30日(火)に民間調査会社コンファレンス・ボードの7月消費者信頼感指数、31日(水)には給与計算代行会社ADP(オートマチック・データ・プロセッシング)社の7月民間雇用統計、8月1日(木)にはISM(全米供給管理協会)の7月製造業景況指数、2日(金)には7月雇用統計と、重要な雇用・景気指標が相次いで発表されます。

 8月2日発表の7月の米国雇用統計では非農業部門雇用者数が17.5万人増の予想。前回6月の前月比20.6万人増から緩やかに減速すると見込まれています。

 すでに9月利下げが確実視される中、今後、心配なのは株価の下支え要因である米国経済のソフトランディング(軟着陸)シナリオに疑問符がつくこと。

 今週の米国の雇用・景気指標が「極端に悪過ぎない」ことが日米の株価反転上昇の条件といえるでしょう。

 今週は巨大IT企業を含め、米国大企業の2024年4-6月期決算発表が相次ぎます。

 特に、8月1日(水・日本時間2日[木]早朝)にはアップル、アマゾン・ドット・コムの2社が発表。

 先週はテスラ以外にもグーグルの親会社アルファベット(GOOG)が23日(火)に2024年4-6月期決算を発表。

 売上高、利益ともに予想を上回ったものの、動画配信YouTubeの広告収入が予想を下回り、AI向け設備投資の費用増加が悪材料視され、翌24日(水)には前日比5.04%も急落。週間でも6.0%下落しました。

 巨大IT企業は株価が上がり過ぎているだけに、少しでも予想を下回る悪い数字が出ると、株価がたたき売られてしまうトレンドは今週も続きそうです。

 決算発表をきっかけに米国の巨大IT企業が再び急落に転じるようだと、今週も日米株式市場が悲観一色になる恐れもあるので十分な注意が必要でしょう。