長期的な「ドローダウン」で検証するS&P500の下落余地

 米国市場では、調整(Correction)とは「高値から10%以上の下落」とされ、「高値から20%以上の下落」は弱気相場(Bear Market)と呼ばれます。4月にみられた押し目は(高値から5.5%下落)は「Consolidation」(一時的な需給悪化)と呼ばれ、過去に数えきれないほど経験してきた事象です。

 今年はS&P500が7月16日まで38回にわたり最高値を更新してきただけに、株式市場の反落で恐怖指数が上昇すると、利益確定売りや「リスクパリティ戦略」と呼ばれるボラティリティ売りがかさみ株式相場が波乱に覆われやすい状況でした。

 図表2は、1994年から直近までの約30年にわたるS&P500の「ドローダウン」(直近の最高値からの下落率:終値ベース)を振り返ったものです。いわば、その時々の最高値で米国株に投資した市場参加者の「損失率」を振り返ったものです。

 30年の市場実績を振り返ると、「直近最高値からの平均下落率」は11.8%でした。現在の直近最高値からの下落率は4.2%です(24日)。こうした中、S&P500が約30年で「最高値を640回も更新してきたトレンド」に注目です。

<図表2>過去30年におけるS&P500のドローダウンを検証する

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年7月24日)

 上記したドローダウンは、株式投資の特徴が「ハイリスク・ハイリターン」である市場実績を示しています。とはいえ、リスクの顕在化をあらかじめ予見して短期売買(株価が高いところで売って安いところで買う)を繰り返し相場に勝ち続けることは専門家でも不可能とされます。

 米国の投資格言である「TIME in the market is more important than TIMING the market」(相場の上下に合わせて売買するよりも、長く投資を続けていく方が有利)は、資産形成の王道です。特に一般投資家の方々には「ドルコスト平均法」(相場が下落したときに安く多く買える)を活用した「長期積み立て投資」(定時定額投資)を継続することが大切だと考えています。