インドは「人口ボーナス期」と呼ばれる高度経済成長期にある

 インドでは1980年代以降、経済自由化政策が導入され、1990年代には経済体制の改革と対外開放が始まりました。

 2014年にナレンドラ・モディ氏(インド人民党)が首相に就任して以降は「モディノミクス」と呼ばれる構造改革が次々と導入され、労働生産性や経済成長率が上向いてきました。そして、5~6月に実施された下院総選挙の結果、モディ政権は3期目入り(5年任期)を決めました。

「グローバルサウスの雄」と呼ばれるインドの総人口(14.2億人超)は2023年に中国を上回る世界最多となり、平均年齢が28歳と若く「生産年齢人口」の成長が続いています。インド経済は中間所得層が増勢局面にある「働きざかり」(人口ボーナス期=高度経済成長期)の途上にあります。

 IMF(国際通貨基金)が半年ごとに公表している最新の「名目GDPの調査と長期予想(ドルベース)」によると、インドの名目GDP(国内総生産)は2022年に旧宗主国の英国を抜き、2025年には日本を上回り「世界4位」に浮上。2027年にはドイツを抜いて(米国と中国に次ぐ)「GDP世界3位」に躍進する見通しとなっています(図表2)。

<図表2:インドの名目GDPは2027年に世界3位に躍進する見通し>

(出所)IMFの調査・予想より楽天証券経済研究所作成

 インドの平均所得(1人当たりGDP)は約2,500ドル(約40万円)と依然低く、貧富の格差は現存していますが、内需拡大を担う中間層や富裕層が増加しています。

 近年は「新・冷戦」(米中対立)を背景としたサプライチェーン(供給網)再構築および経済安全保障面のニーズを反映し、「世界最大人口の民主主義国」への海外からの直接投資(生産拠点や販売網の構築)や間接投資(株式投資・債券投資)が増加しています。

 インフラ(道路、電気、ガス、水道などの社会基盤)の整備が進む中、IT分野や金融などのサービス業が成長し、先端半導体の製造やEVを含めた自動車産業の成長も期待されています。

 外資系企業の誘致を中心に「メイク・イン・インディア」と呼ばれる製造業育成(雇用者増加)が進展していくと、経済成長のドライバーとして内需拡大に「外需(輸出)拡大」が加わっていくことも見込まれています。