こう着していた日経平均を上放れさせた4つの理由

 日経平均は5~6月に8週間にわたり、狭いレンジの往来相場となっていました。強弱材料がきっこうして、上下とも動けない状態でした。6月末~7月初にかけて、上放れして最高値をつけたのには、4つの理由があります。

最高値更新の理由1 米国株強い、ナスダック総合指数の最高値更新続く

 生成AIを活用したビジネスのさらなる進展の期待が高まり、生成AI関連株の上昇、ナスダック総合指数(ナスダック)の最高値更新が続きました。

 生成AI関連株の中核、半導体大手エヌビディア(NVDA)(米国株で時価総額第3位)が崩れてきていたことから、私は、いったん日米株とも調整が入ると思いましたが、エヌビディアはとりあえず持ち直しています。

 生成AIの活用で先行したアルファベット(GOOGL)(グーグルの持ち株会社、米国株で時価総額第6位)、コパイロットの活用で期待が高まっているマイクロソフト(MSFT)(米国株で時価総額第1位)の上昇トレンドは継続しています。

エヌビディア株・アルファベットA株・マイクロソフト株日足:2024年5月1日~7月5日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成
出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成
出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

最高値更新の理由2 ドルが強い、1ドル=160円台へ円安進む

 ドル/円為替レートは1ドル=160円を超えました。4月29日~5月2日にかけて、政府日本銀行による巨額の円買い(ドル売り)介入によって、一時急激な円高が進んだことから、介入への警戒感で円安が進みにくくなっていましたが、ついに、前回介入のレベルを超えて、一時161円台をつけ、37年ぶりの円安水準となりました。

ドル円為替レートの動き:2024年1月2日~7月5日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

 FRB(米連邦準備制度理事会)はあいかわらずタカ派(利下げに消極的)、日銀(日本銀行)はハト派(利上げに消極的)のイメージが定着、大きく開いた日米金利差が、なかなか縮小しない思惑が広がっていることから、円を売りドルを買う流れが続いています。

 先週は、円安をきっかけに、外国人による日本株買いが復活したと推定されます。円安は、日本の企業業績にプラスであることに加え、ドルを円に換えて日本株を買う外国人にとって日本株を安く買えるようになることから、円安が外国人買いを誘発した可能性があります。

 長い目で見れば、FRBはいずれ利下げに転じ、日銀はいずれ利上げに転じると考えています。そうなると、日米金利差が縮小して、円高が進むと考えられます。しかし、短期的には、円安が継続し、それが日本株を支えています。

最高値更新の理由3 日本企業の業績への不安が低下

 今期(2025年3月期)の業績(会社予想)が低く、東証プライム全体で微減益が予想されていることが日本株の上値を抑えていました。自動車認証不正の影響も心配されていました。

 ところが、7月1日に発表された日銀短観の大企業DIは、製造業・非製造業とも高い水準であったことから、業績への不安が低下しました。円安の寄与もあり、これから本格化する4-6月決算は好調と推測されます。

日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2018年3月~2024年6月

出所:日本銀行「短期経済観測」より楽天証券経済研究所が作成

最高値更新の理由4 日米とも良好な金融環境が期待されている

 金融引き締めが続く米国では、景気堅調でインフレ低下が遅れて、利下げが先送りされる可能性が高まっています。それでも、「いずれ利下げになる」という見通しは続いており、金融環境が改善する期待が続いています。

 一方、日本ですが、インフレが高まってきたことから、いずれ利上げが不可避と思われますが、それでもすぐに利上げはなく、当分、緩和的環境が続くと期待されています。