「これからすぐ激減」は、強行感が否めない

 大胆なのは、石炭の代替としての天然ガス消費削減だけではありません。石油消費が減少するタイミングを「これからすぐ」としている点も、「非常に大胆」だと言えるでしょう。

 以下のとおり、これまでの石油消費量とNZEシナリオをつなげてみると、同シナリオが「これからすぐ急減」が始まることを想定していることがわかります。

図:世界の石油消費量の実績値(2022年まで)とIEAの見立て 単位:EJ

出所:Energy InstituteおよびIEA(国際エネルギー機関)のデータをもとに筆者作成

 あまりに突然急減がはじまることだけでなく、2050年の石油の消費量が1965年を下回る水準にまで達することも、「大胆」だと言えるでしょう。

 1965年といえば、第二次世界大戦後、まだ20年しかたっていない世界です。この当時の水準まで、石油の消費が減ることが、NZEシナリオを支えているわけです。それだけ、太陽光と風力由来の発電量を増やす、ということなのでしょうが、なかなか「大胆」です。