減産の遠因はリーマンショック!?

 OPECの減産について、筆者は大きな疑問を抱いています。なぜ、財政収支が均衡するために必要な原油価格を上回っているにもかかわらず、サウジアラビア(OPECの盟主)は減産を続けているのか、という疑問です。

 先ほどの図「WTI原油先物価格とOPEC月報および会合のトピック」で、赤線で記したとおり、IMF(国際通貨基金)のデータによれば、サウジアラビアの同価格は85.8ドル(2022年時点)です。現在の原油価格は90ドル近辺で推移しています。つまり、同国の財政収支に危機をもたらす水準ではなくなっているのです。

 それでも減産を行っていることを考えれば、OPECプラスは原油相場の上昇以外に、減産を行う意味を見いだしている可能性があると、筆者は感じています。

 減産を実施して供給減少観測を強めることで、原油価格を高止まりさせることができます(中国の需要増加観測も高止まりの要因)。そして世界の多くの国でインフレ(原材料高タイプのインフレ。需要増加タイプではない)が発生します。

 現に今、西側諸国ではインフレが深刻化し、中央銀行が急に利上げをして社会が混乱したり、コスト増加や賃上げなどで企業が疲弊したりしています。市民生活にも大きな影響が出ています。

図:リーマンショック以降の西側と非西側の動き(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 彼らが減産などによって西側諸国にダメージを与えることを企図しているかは、わかりませんが、上記のようにリーマンショックを起点に考えると、同ショックが西側と非西側の分断を深刻化させたり、減産でダメージを与えたりする動機になっている可能性を決して否定することはできないでしょう。