米国株式が長期市場実績で秀でてきた理由

 長期的な視野で国際分散投資を目指す上で、米国株に絞って投資するのが良いのか「オルカン」(オールカントリー=世界株式)が良いのかが議論されています。参考までに、8月末時点での長期市場実績を米国株、世界株、日本株の総収益指数で比較してみました(図表2)。

「円建ての米国株」は出色のパフォーマンスで、約30年前(1993年1月)を起点にすると21.8倍に成長してきました。昨年来の為替の円安(ドル高)傾向に伴う為替差益が寄与し、円建て米国株のパフォーマンスが向上したことがわかります。円建ての世界株式(MSCI世界株価指数の総収益指数)は同じ期間に11.9倍となりました。

 一方、日本株(TOPIX[東証株価指数]の総収益指数)は最近こそパフォーマンスが改善していますが、1993年1月対比では2.9倍にとどまっています。

 世界株に分散投資することでリスクはやや低減できたものの、米国株のみの分散投資よりリターンが低くなってきたことがわかります。米国は移民効果で総人口や労働人口が伸び続けており、GDP(国内総生産)規模は世界1位を続けています。

 生成AI(人口知能)に象徴されるイノベーション(技術革新)や資本主義経済をけん引する世界の中核的存在であり続ける状況に変わりはないでしょう。

 なお、MSCI指数ベースで比較すると、米国株式市場の予想平均ROE(株主資本利益率)は17.8%と他市場を圧倒しています(例:日本株式市場の予想平均ROEは8.9%)。

 株主資本に対する利益率が平均的に高いことに加え、活発な自社株買いに象徴される株主還元を重視する経営姿勢は世界一とみられます。

 なお、米国では一般的な投資家に「Stay Invested」(長期投資が大切)といわれる投資教育が根付いており、押し目買いや積み増し買いの意欲が旺盛とされています。長期目線では今後も米国株式を中心とする国際分散投資を構築することが合理的と考えられます。

<図表2>世界株式をリードする米国株式のパフォーマンス 

(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1993年1月~2023年8月)