「同調」と「排他」の合わせ技は「攻撃」

 ここまで、ここ3カ月くらいの市場環境の変化について書きました。ここからは、OPECプラスの減産について、考えます。彼らが減産を行う理由は、自国の財政を安定化させるためだと、考えられていますが、ウクライナ危機勃発を機に解消が難しくなった西側と非西側の分断の中で起きている事象の一つととらえることで、減産を行う別の理由や、今後の展開が見えてきます。

図:2023年6~9月の西側と非西側における目立った動き(一例)

出所:筆者作成

 OPECプラスは4月に減産を強化し(各国削減量増加)、その後、6月に減産を来年末まで延長することを決定しました。8月にはOPECプラス内の最有力国であるサウジとロシアが自主的に行っている減産の期間を延長することを決定しました。

 同グループ全体での削減量増加・減産期間の延長、そして最有力国の自主減産延長と、原油価格を支えることに注力してきたことがわかります。

 範囲を非西側(OPECプラスに参加している国々は「非西側」に該当)に拡大してこの数カ月を振り返ると、BRICSプラスの結成、中国によるiPhoneの使用制限拡大、日本が処理水を放出したことを受けて反発する姿勢を鮮明にし、他の非西側諸国と足並みをそろえて一部食品の不買を開始、などの動きが生じました(一例)。

 一方、「西側」の動きを振り返ると、非西側と逆の動きが目立っていました。EUが処理水放出決定後、日本産食品の輸入制限を撤廃、イタリアが「一帯一路」構想(中国が提唱する欧州と東アジアを陸と海で結ぶ経済圏構想)から離脱することを宣言、米国が中国向け先端技術投資を規制、などの動きが生じました(一例)。

 双方のこうした動きは、相手を自分の領域(地域・考え方)から締め出す「排他」や、自分と同じ領域にいる国と行動をともにする「同調」などの性格を持っています。「排他」と「同調」が共鳴した場合は、「攻撃」になり得ます。上記はあくまで一例ではあるものの、最近は西側と非西側とで、報復的な動きが目立っていると言えそうです。

 ウクライナ危機が勃発してから鮮明になった西側と非西側の分断は、埋まるどころか深まっていることがうかがえます。OPECプラスの減産もこの渦の中で行われていると考えれば、単に自国の財政を安定化させるためではなく、西側に何らかの負の影響を与える(同調+排他→攻撃)、という目的が含まれている可能性はゼロではなくなってきます。

 OPECプラスが現在行っている減産に、同調や排他などの意図を持たせているのであれば、分断が埋まるまで減産は終わらず(現時点で少なくとも減産は来年12月まで続くことが決定している)、当面、原油相場が下がらない状態が続く可能性があります(下がっても、これまでのレンジ下限付近か)。