三菱UFJが逆行高、既視感

 12日は、日本のインフレ率上昇を受けて、日銀が長期金利上昇を容認する思惑が広がりました。円高が進み、日経平均が下落する中、三菱UFJフィナンシャル・グループ(三菱UFJ:8306)が前日比1.7%高となるなど、銀行株が一斉に上昇しました。

 金利上昇は日本の株式市場全体にとってマイナス材料ですが、銀行株にとっては大きなプラス材料なので、日経平均が下落する中で、銀行株は上昇しました。

 銀行株は、長年にわたり日銀のゼロ金利政策に苦しめられてきました。短期金利だけでなく、長期(10年)金利までゼロ近辺に固定されていたため、国内商業銀行業務の収益が大きなダメージを受けてきました。今やっと日本の長期金利に上昇余地が出てきていることは、銀行業にとっては「干天の慈雨」です。

「日経平均が下落する中で、銀行株上昇」、これには既視感を覚えます。昨年12月20日に同じ現象を見ているからです。

2022年12月の日経平均と三菱UFJフィナンシャル・グループ株の動き:2022年12月1日~30日

出所:QUICKより作成

 昨年12月20日、日経平均が2.5%安と売り込まれる中、三菱UFJは6%高と急騰しました。この日の正午に日銀がビック・サプライズ(大いなる驚き)を発表したことに反応した動きです。

 12月20日正午、日銀は「長期(10年)金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げる」と発表しました。当時日銀総裁だった黒田東彦氏は、かたくなに大規模金融緩和の維持、長期金利の上昇拒否を唱えていたため、マーケット関係者は「金融政策の変更はないだろう」と予想していました。

 ところが、昨年12月20日正午にいきなり長期金利の上昇容認を発表したことが、株式市場にとってビック・サプライズとなりました。この発表を受けて、20日午後には金融市場に波乱が起こりました。日経平均が急落、メガ銀行など金融株が急騰、円高が急伸、債券が下落(長期金利が上昇)しました。

 三菱UFJ株について、強い買い推奨を継続します。このまま一本調子の上昇は考えていませんが、乱高下しつつ上昇トレンドが続くと判断しています。

 割安な株価、安定的に高収益を上げるビジネスモデル、国内で金利上昇圧力が続くと予想していることが、株価に追い風になります。投資判断の詳細は、このレポートの末尾に添付している「著者おすすめのバックナンバー」を参照してください。