総合インフレ率は4.3%に上昇、日銀緩和は継続可能?

 24日の植田氏所信表明を、日本の株式市場は、とりあえず好感しましたが、植田氏が株式市場の期待通りの緩和を続けられるかどうかはわかりません。この日、総務省が発表した1月の消費者物価指数は、日本のインフレ率上昇が続いていることを示しました。

 日本には欧米に大きく遅れて、今、ようやくインフレの風が吹き始めています。総合インフレ率は、1月時点で、4.3%です。4%台のインフレ率が続けば、長期金利を0.5%以下に押さえつけておく日銀の金融政策は、維持できなくなる可能性もあります。

日本のインフレ率:2023年1月

出所:総務省統計局より作成

日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率推移:2020年1月~2023年1月

出所:総務省統計局より作成

 植田次期総裁は、「2023年度半ばに消費者物価上昇率(コア・インフレ率の上昇率)が2%を下回る水準に低下していく」と、日銀の従来の見解を踏襲しました。

 足元の4%台のインフレ率は一時的で、今後、急速に低下していくという見立てです。その見立てに基づき、現在の金融緩和は適切と述べました。ここだけ取ると、黒田現日銀総裁の見解とまったく同じです。それに株式市場はとりあえず、安堵(あんど)しました。

 ただ、それが植田氏の本音かわかりません。植田氏が新総裁にまだ着任していない段階で、現在の日銀の見解と大きく異なる発言をすることは、そもそも考えられず、植田氏は無難な発言に終始したともいえます。新総裁に着任し、さらにインフレ率の推移を見ていくうちに、さらなる長期金利の上昇を容認せざるを得なくなるとの思惑は残ります。

 私は、日銀が考えているほど、日本のインフレ率が急速に低下するとは考えていません。日本のインフレ率が年後半も3%台を維持し、1ドル=120円台へ円高が進む可能性はあると考えています。

 ただし、その場合、コアコア・インフレ率の高止まりが日本の企業業績を押し上げるので、金利上昇・円高があっても日経平均は大きくは下がらないと予想しています。