5大商社、四つの投資魅力
私は、「株価指標で見て割安」というだけで、この5社を評価しているわけではありません。5社共通の投資魅力として、四つあります。
【1】「日の丸資源会社」として世界中に資源権益を有する
総合商社は、資源のない日本に欠かせない「日の丸資源会社」です。5社とも世界中で資源開発(または権益の買収)を行い、原油・天然ガス・鉄鉱石・石炭・銅・ニッケルなどの資源権益をたくさん獲得してきました。
資源価格が急騰した2023年3月期は、資源事業で巨額の利益をあげています。また、すぐには利益貢献が見込めませんが、地球規模の脱炭素の流れを見て、再生可能エネルギー事業(洋上風力・地熱・太陽光発電など)にも積極投資しています。
ただし、それだけならば、5大商社株を高く評価はできません。資源価格はこれからも乱高下すると考えられ、巨額の利益は必ずしも「持続可能」と考えられないからです。
【2】非資源事業を幅広く展開
5社とも、資源事業の利益の割合が高くなり過ぎないように注意しています。非資源事業を幅広く展開し、収益の安定化をはかっています。
個社別に力を入れる分野は異なりますが、世界景気の影響を受けにくい食料品・農業・消費関連(コンビニ経営など)・海外電力事業の他、新興国での社会インフラ整備事業(発電所・鉄道・上下水道などの建設・運営)、自動車・機械・化学品など幅広い事業を展開しています。
【3】大胆な攻めと堅実な守り
総合商社の戦略は、資源もなく少子化が進む日本がどう生きていくべきか、まさにその道筋を示していると考えています。政府が成長戦略としてやっていくべきことは、商社がほとんど手をつけています。
資源のない日本が生きていくのに不可欠な「日の丸資源会社」となっているほか、人口が増加していく新興国でのビジネスにも注力しています。
さらに、IT(情報技術)・バイオ・新エネルギー・ロケットなど、今すぐ花開かなくても、将来いつか大きな成長のタネになりそうなものには、片っ端から手を出しています。その貪欲さこそが、今の日本に欠けている成長力の獲得につながると思います。
それでいて、収益が悪化し損失が拡大するリスクが高まってきた事業に対しては、厳格な撤退基準を持っています。
見込み違いだった事業から、大きな傷を受ける前にすばやく撤退するところが、総合商社の強さの根底にあると考えています。
バフェット氏が5大商社に投資している理由は、そこにあると考えています。
【4】株主への利益配分に積極的
5社とも、コロナ・ショックのあった2021年3月期などを除けば、安定的に増配を行ってきていることに加え、自社株買いも継続的に実施しています。
5大商社の1株当たり配当金推移:2019年3月期~2023年3月期(会社予想)
単位:億円 | ||||||
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コード | 銘柄名 | 2019/3 | 2020/3 | 2021/3 | 2022/3 | 2023/3 会社予想 |
8001 | 伊藤忠 | 83 | 85 | 88 | 110 | 140 |
8002 | 丸 紅 | 34 | 35 | 減配 33 | 62 | 75 |
8031 | 三井物産 | 80 | 80 | 85 | 105 | 130 |
8053 | 住友商事 | 75 | 80 | 減配 70 | 110 | 115 |
8058 | 三菱商事 | 125 | 132 | 134 | 150 | 155 |
コロナショック | ||||||
出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成 |