株価上昇はいったんピークアウト?

図5 日経平均25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド (2022年4月8時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 上の図5は、前回のレポートでも紹介した、日経平均の25日移動平均線乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンド化したものです。

 前回のレポートでは、移動平均線乖離率の推移とボリンジャーバンドの形状から、「株価上昇がいったんピークアウトした可能性が高い」と指摘しましたが、実際に、先週の値動きは指摘した通りとなり、先週末8日(金)時点の乖離率はプラス0.78%でした。

 ほぼ25日移動平均線との乖離がなくなっている状態で、これは先ほどの図1でも確認しました。

 25日移動平均線がサポートとして機能して株価が反発していけば問題ないのですが、反対のシナリオになった場合、過去の推移をみると、プラス2σに沿って上昇した乖離率がピークアウトした後、今度はマイナス2σに向かって動いていく傾向がみられていたため、注意が必要です。

 では、株価が上方向と下方向のどちらに向かうのかについては、見通しにくくなっています。

図6 日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド (2022年4月8時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 上の図6は、75日移動平均線で見た乖離率推移のボリンジャーバンドです。こちらでも、乖離率の推移がいったんピークアウトしたように見えます。

 ここで焦点になるのは、ピークアウトした後の動きです。2020年11月から2021年2月にかけては、ボリンジャーバンドの中心線(MA)から上をキープしながら横ばいでもみ合う展開が続いていましたが、2021年9月からの動きはかなり軟調だったことが分かります。

 はたして今回はどちらのパターンになるのかですが、足元のバンドの幅を見ると、先週末の4月8日(金)時点でまだ拡大中です。

 下向きとなっているマイナス2σが上方向に向いた時の乖離率が中心線(MA)よりも上に位置していれば、株価は値を保ちながら落ち着きどころを探る展開となる可能性が高そうですが、現時点ではまだ判断できません。

 相場環境を見ても、「ゼロコロナ政策」の影響による中国経済への懸念や、今週はここ数カ月間の株式市場にとって鬼門となっているCPI(消費者物価指数)の発表も予定されています。

 さらに、ウクライナ情勢をめぐっては、ロシアが、5月9日の対独戦勝記念日に向けて軍事行動を活発化させるのでは、という観測が高まりつつある一方、国連の人権理事会ではロシアの理事国資格を停止する決議が採択され、米国ではレンドリース法(武器貸与法)の復活が全会一致で可決されるなど、ロシアへの圧力も強まっています。

 このように、相場の波乱になりかねない材料も多く燻(くすぶ)っているため、不安定な相場地合いが続いていることを念頭に置いて取引に臨む必要がありそうです。