円安の行方、OPEC動向、日銀発言に注目

 OPEC(石油輸出国機構)のバルキンド事務局長は、16日、世界の原油需給バランスについて、早ければ12月にも供給過剰になり、来年もその状態が続くとの見通しを示しました。

 同氏は「世界的な燃料不足が続いていたものの原油在庫が増えてきているため、12月2日のOPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)の会合では生産方針について慎重に決めるべき」と指摘しました。

 また、IEA(国際エネルギー機関)は、16日に発表した月報で、価格上昇を受け産油量が世界的に増加し、石油価格の上昇が鈍化する可能性があるとの見方を示しました。

 これらの発言や月報を受けて16日の原油は下落しました。もし、原油がさらに下がれば、物価や小売売上高の前月比の伸びも鈍化してくることが予想されます。10月の米国CPIの中で、ガソリンは前月比で+6.1%、前年比では49.6%の大幅上昇となっており、物価を押し上げている要因となっています。

 また、10月の米小売売上高の中でもガソリン価格の高騰で給油所の売上高は前月比で3.9%の増加となっています。ガソリン価格は原油が下落すれば、すぐに価格に反映されるため、来月以降のCPIや小売売上高に影響を与えるのかどうか注目です。

 また、もうひとつ注目したい点は日本政府の対応です。10月以降の円安について、10月28日、黒田日本銀行総裁は、「今の若干の円安は(日本経済にとって)総合的に見てプラス」と肯定的に受け止め、円安けん制発言はしませんでした。

 一方、鈴木財務相は11月2日、「足元の為替水準などについてコメントは差し控えたい」と述べ、「為替が安定することが重要。為替市場の動向をしっかりと注視していきたい」と発言しました。

 このように円安傾向を示した為替相場について、政府と日銀の評価が微妙に異なっています。為替政策は政府の所管ですが、2013年の異次元金融緩和以来、日銀が相場に大きな影響力を持ってきたため、黒田総裁発言の注目度は高まっていました。

 また、2015年の時は、黒田発言で円安に歯止めがかかりましたが、その時は政府の足並みも同じで、政府からも似た趣旨の発言が出ています。

 政府はガソリン価格の高騰を受けて抑制策を講じようとしています。ガソリン高騰を招く円安についても、当然注視しているはずです。黒田総裁はけん制しなくても、為替政策を所管する政府が発言する可能性もあるため、注意が必要です。基本的には為替相場については「ノーコメント」と思われますが、その動向は注目しておく必要があります。