貴金属ごとに用途が異なる点に注目

 一口に貴金属といっても、値動きが同一でないのは、用途が異なるためです。リフィニティブの資料をもとにした推計では、以下の通り、金(ゴールド)以外の3つは主に産業用に使われています。特にパラジウムは93.6%が産業用で使われています(景気動向に敏感な銘柄と言える)。また、プラチナが69.1%強、銀は56.0%です。

 金(ゴールド)は51.3%が宝飾用に使われています。プラチナは同用途に27.0%、銀は20.6%です。銀とプラチナは宝飾品としての色合いを併せ持っていると言えるでしょう。また、金と銀は、およそ20%、投資用として用いられています。

図:4つの貴金属の用途(2018年 筆者推計)

出所:リフィニティブの資料をもとに筆者作成

 このように、4つの貴金属の用途は異なります。この点が、値動きに差をもたらす最も大きな要因と考えられます。

 また、用途が異なる点以外の特徴は、以下の通りです。

・金(ゴールド)
通貨としての色合いが濃く、主要国通貨(主にドル)の代わり、「代替通貨」として注目されることがある、ビットコインなどの暗号資産と代替通貨の側面で競合することがある。有事のムードが強まれば資金の投資先として物色されることがあるが、目先は米国の金融政策に影響を受けやすいか。

・銀
2021年1月から2月にかけて米国で発生した「個人投資家の共闘」で価格が動いた。金(ゴールド)と同様、通貨の側面も残っているため、金価格に連動することがあるが、金よりも変動率が高い傾向がある。脱炭素起因の「太陽光パネル」の電極向け需要拡大が期待される。

・プラチナ
貴金属のリーダー的存在である金(ゴールド)につられて動くことがあるが、長期的にはまだ、2015年9月に発生したドイツの自動車大手のスキャンダル「フォルクスワーゲン問題」の尾を引いており、明確に上昇トレンドに移行できていない(プラチナの産業用の用途が減少する懸念)。しかし、脱炭素起因の「グリーン水素生成装置」や「燃料電池車」の電極向け需要の拡大が期待される。

・パラジウム
値動きが比較的大きい貴金属銘柄。値動きが大きい理由の一つに、市場規模が小さい点が挙げられる。また、「景気動向に敏感な産業用貴金属」の色合いが濃く、金(ゴールド)と連動しないケースがある。

 4つの貴金属は、それぞれに特徴があります。用途の違いのほか、それぞれに特徴がある点も、値動きに差をもたらす要因と言えます。特に今後、世界的なブームである「脱炭素」起因の新しい需要が増加する期待が高まっている銀とプラチナは、長期的に、独自の値動きを演じる可能性があります。

 一口に貴金属といっても値動きが同一でない、されど貴金属であることに変わりはない。これらの点に着目をすれば、資金配分を考慮することを前提に、自ずと4つの貴金属に分散投資をする意味が感じられてくるのではないでしょうか。

 先述のシミュレーションの資金配分(金48%、プラチナ22%、銀19%、パラジウム11%)は、金(ゴールド)をメインにしたものでしたが、金よりもプラチナが安く、かつプラチナに先高観が出た場合、プラチナと金の配分を逆にするのも一計だと考えます。

 また、銀が米国の個人投資家の共闘で買われている、主要生産国での供給要害でパラジウムが急騰しているなどの、短期的な事象が発生した場合は、それに応じ、短期的に資金配分を変えてみるもの面白いかもしれません。

 コモディティ(商品)全体の分散投資という意味で、コモディティ関連の指数に連動する金融商品を、そして、貴金属のみで分散投資をするアイデアを紹介しました。本レポートが皆様の役に立てば、幸いです。

[参考]コモディティ関連の具体的な投資商品

投資信託

eMAXISプラスコモディティインデックス

SMTAMコモディティ・オープン

iシェアーズコモディティインデックスファンド

ダイワ/「RICI(R)」コモディティ・ファンド

DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)

DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)

損保ジャパン・コモディティ ファンド 

外国株

iPathピュア・ベータ・ブロード・コモディティ(BCM)

インベスコDB コモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド(DBC)

iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN(DJP)

iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト(GSG)

 [参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

 楽天証券の純金積立「金・プラチナ取引」はこちらからご参照ください。

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)

商品CFD(金・銀)