景気予測に賭けるのはNG

 投資家は、できることなら景気拡大期だけ株を保有して、景気後退期では株を持っていないようにしたいと思います。そこで、「景気が悪くなるかもしれない」という話が出始めると、株を売る投資家が増えます。ただし、景気判断は水物。市場コンセンサスは往々にして外れます。

 誰もが景気に強気の時に、突然、景気悪化が始まります。誰もが悲観に打ちひしがれている時に、景気回復が始まります。後で振り返るのは簡単ですが、景気の転換点にいる時にそれを知るのは至難の技です。

 株は景気悪化への転換点より早く下げ始める傾向があります。ところが、コンセンサスベースの認識では、景気悪化の転換点が過ぎて相当の期間がたたないと景気悪化が認識されません。つまり、景気悪化への転換点では、まだ景気に強気の話が広がっているということです。コンセンサスベースの景気判断に従って動く投資家は、景気悪化による売りに全く間に合わないということです。

 コンセンサスベースで景気悪化が認識された時には、皮肉なことに、次の景気回復を買う上昇相場が始まっていることもあります。去年の3月中旬、コロナショックからの暴落が終わり、次の上昇相場が始まった時、「これは次の景気回復を買う流れだ」と認識できた投資家はほとんどいません。

 今、米景気が過熱→失速の懸念が出てきたことから、世界の株式市場は神経質になっています。こんな時、心配だから株をとっとと売ってしまおう、と思う投資家もいるかもしれません。ただし、そこに落とし穴があります。もし、世界景気が過熱することなく、巡航速度の拡大が長期化すると、どうなるでしょう。世界的な株高も長期化します。世界景気は失速すると決め打ちして、株を売り切ってしまうと、機会損失が非常に大きくなります。

 景気予測は当たらない、特にコンセンサス予想は良く外れることを前提に、投資リスクを管理する必要があります。