14億の中国人民がレッドツーリズムに“熱狂”する3つの理由

『報告』は特筆すべき現状として、世代別にみて、レッドツーリズム参加者に占める25歳以下の割合が3年連続で増加、全体の2割を占めるに至っていると指摘しています。

 ここからは、中国の人々、特に若い世代が、なぜレッドツーリズムに興味を示し、実際に参加し、お金を落としていこうとしているのかを考えていきたいと思います。

 14億以上の巨大マーケットが、どのような思考回路と行動原理を持つ消費者たちから成っているのかを理解し、中国市場に投資をしていく上で、参考・判断材料になればと思います。

 以下、3つの背景・理由を挙げたいと思います。

1:「紅色」観光名所が国中にある

 一つ目に、中国が中国共産党一党支配の、社会主義というイデオロギーを掲げる「市場経済」ということもあり、どんな業界にも政治の影響が浸透している、故に、観光名所における「紅色市場」が顕著であり、国民が意識的、あるいは無意識のうちにレッドツーリズムに参加する確率が高くなっているという国情が挙げられます。

 ここに、中国政府が設定する「全国紅色旅遊経典景区名録」、すなわちレッドツーリズムにおいて古典的な名所リストを挙げますが、北京市15、遼寧省12、上海市7、山東省13、湖南省14、広東省13と、特に重点として挙げられている場所だけでもこれだけあるわけですから、旅行の道中で立ち寄らない可能性のほうが低いと言っても過言ではありません。

 言い換えれば、中国経済、特に内需拡大という意味で、ますます重要視されているツーリズムにとって、「紅色」という色素はそもそも広く、深く浸透しているということです。消費者、ユーザーにしてみれば、はじめから、関わらないことの方が難しい設定になっているのです。

2:「紅色」意識、党に忖度するビジネスが前提

 二つ目に、1点目に関連して、ツーリズムの供給側も、中国共産党という「お上」に忖度(そんたく)するという観点から、「紅色」を強く意識した商品づくりをする傾向にあるという国情が挙げられます。

 例えば、中国の大手コングロマリットで、特に商業不動産大手として著名な万達集団(03699、香港)は、前述の延安に「延安紅街」という、紅色を基調にした文化観光地を造っています。総建築面積は270万平方メートル、総投資額は120億元(約1,920億円)。端午節の初日、「延安紅街」にはのべ26万人が訪れ、紅色関連の施設や催し物を楽しんだといいます。

 この手の企業は、中国共産党を敵に回しては、ビジネスをやってはいけません。施設を造るための土地すら手に入れられません。故に、国民に大人気のエンターテインメント施設を造る際にも、随所に「紅色」の色素を入れ込む、あるいは自社のビジネスモデルの中に、適度に「紅色プロジェクト」を組み込ませることで、当局と良好な関係を構築しようとしている。恩を売り、保身につなげるという論理です。