財産がいくらか分からなければ、対策が必要かどうかも分からない
ところで、筆者は相続に対する相談をいわゆる「親世代」(財産を渡す側)だけでなく、「子世代」(財産をもらう側)から受けることもよくあります。
子世代の方にとって気になるのが、「親はどのくらい財産を持っているのか?」「それに対して相続税はかかるのか? かかるとしたらどれくらいなのか?」という点です。
しかし、多くのケースで親世代が子世代に対して、財産の内容や金額を開示していないため、子世代はやきもきしています。
ただ、親世代がどのくらいの財産を持っているか、おおよそでも分からなければ、相続税の対策が必要かどうかも判断ができません。そのため、筆者からも有用なアドバイスができないのです。
なかなかハードルは高いとは思いますが、専門家のアドバイスを求めるのであれば、「自分は相続税を払う側だからいったいどのくらいの負担になるのか心配だ。どのくらいの額の財産があるのか事前に知っておきたい。」などと伝え、親世代の財産の内容について教えてもらうようにしてください。
小規模宅地の特例が使えるかどうかは早めに確認しておこう
自宅などに小規模宅地の特例が使えるかどうかの確認は、早めに行っておいた方がよいでしょう。
自宅以外に多額の財産がない場合は、小規模宅地の特例を使うことで相続財産が圧縮でき、相続税がかからなくなる可能性が高くなるからです。
小規模宅地の特例は非常に難解で、税理士であっても完璧に理解している人はまずいないと言ってよいくらいです。
ですから、ご自身で何となく「うちは多分使えそうだから大丈夫だな」と判断するのではなく、税理士に小規模宅地の特例が適用可能か、もし現時点で適用が不可能であれば、可能にするための方策が取れるかどうか、などを相談することをお勧めします。
さらには、相続人のうち誰が自宅を相続するかにより、小規模宅地の特例が使えるかどうかが異なることもあります。その場合はそれぞれのケースの税額をシミュレーションしたり、遺言書であらかじめ相続させる人を決めておくなどの対策も必要となってくる場合もあります。
相続税対策というものは、一度実行してしまうと元には戻せません。税理士・公認会計士などの専門家に相談の上、メリット・デメリットを把握したうえでよりよい方法を選択するようにしてください。