今後の注意点:9月中旬以降のスケジュールとNASDAQのトレンド

 そのひとつが9月中旬以降のスケジュールです。ティックトック(TikTok)の米国事業売却交渉期限(15日)をはじめ、FOMC(米連邦公開市場委員会・15~16日)や1回目の米大統領候補討論会(29日)など、米国では注目のイベントが相次ぎます。その他にも、カナダの裁判所で継続審議となっている、華為技術(ファーウェイ)幹部の孟晩舟氏の米国への身柄引き渡しについて何らかの結果が出るのが、9月下旬以降とされていますので、イベントの多さによって積極的に上値を追いづらくなるほか、下げる場面が増えるなど、調整の長期化・深押しの可能性があります。

 そして、もうひとつはNASDAQのトレンドの強さです。

■(図4)米NASDAQ(日足)の動きとギャン・アングル(2020年9月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4ですが、先ほどの図2と同じようにNASDAQの日足チャートにギャン・アングルを重ねたものです。

 NASDAQは3月23日を底に、目立った調整もなく順調に値を戻し、25日移動平均線をサポートにしつつ、史上最高値を更新してきました。足元4日(金)の取引でも、終値ベースで25日移動平均線がサポートとして機能していますので、トレンドの基調は一応維持していると言えます。

 ここでギャン・アングルに注目すると、これまでのNASDAQはこれといった調整局面がないため、株価も「1×1」ラインに沿う格好です。この「1×1」ラインと株価の位置関係を見ていくと、株価と25日移動平均の関係で見えてこなかった、「大きく上方に乖離(かいり)する局面」から「接近する局面」、「ラインをまたぐ局面」、そして「上値のめどとなる局面」へと次第にトレンドの勢いが弱まっていることが分かります。

 したがって、NASDAQは上昇の勢いが弱まる中で1×1ラインや1万2,000pまで値を戻すことができるかが今後の焦点になるわけですが、先ほどの9月中旬以降のスケジュール感やこれまでの株価上昇のピッチが早すぎたことを踏まえると、短い期間で調整が終了し、1×1ラインに沿って上昇するのは少し難しくなっていると言えます。

 仮に25日移動平均線を下抜けてしまった場合、1万1,000pや1万pといった節目の株価や75日移動平均線などが下値の目安となり、荒い値動きを繰り返しながら時間を掛けて天井圏を形成し、「2×1」ラインへ向かう展開も想定しておく必要がありそうです。