日経平均は底堅さを維持できる?判断のポイントは25日移動平均線

 月またぎとなった先週の国内株市場ですが、週末9月4日(金)の日経平均終値は2万3,205円となりました。前週末終値(2万2,882円)からは323円高、週足ベースでは3週ぶりの反発です。

 日本株は前週末の安倍首相辞任報道によるざわつきから早い段階で落ち着きを取り戻し、しかも週末にかけての米国株急落の影響を受けつつも、日経平均が2万3,000円台をキープできたことで前向きな印象を与えていますが、果たして日本株の堅調さが今後も続くのかが気になるところです。

 それでは早速、下の図1で足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年9月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の動きをローソク足でたどると、日経平均は週初の8月31日(月)に2万3,100円台を回復してのスタートとなりました。

 冒頭でも述べた通り、前週末の安倍首相辞任報道による「市場のざわつき」は早い段階で落ち着いたと言えます。来週14日に自民党の両院総会で総裁選が行われ、そこで次期自民党総裁が選ばれます。その後の国会で首相指名を受けることになりますが、現時点で多くの派閥から支持を受けた菅官房長官が優勢とされています。菅氏は安倍政権の中枢に長く関わっていたこともあり、市場は安心感で受け止めた反応と言えます。個別でも、携帯事業会社や地銀セクターなど、菅氏が言及した関連銘柄の売買がにぎわう場面も見られました。

 9月相場入りとなった1日(火)~2日(水)は横ばいの展開で、3日(木)には、大幅上昇を見せた米株市場の流れを受けて、「窓」空けによる一段高を演じます。この日の終値(2万3,465円)は新型コロナウイルスの感染拡大で急落する前の水準(2月21日の2万3,386円)を超えてきました。

 しかし、翌4日(金)の取引では一転して米株市場が急落し、今度は「窓」空けによる一段安となります。とはいえ、この日の日経平均の下げ幅(前日比1.1%安)は、米NYダウ(同2.8%安)と比べると小幅にとどまっているほか、2万3,000円台を維持し、ローソク足も陽線で終えており、底堅さと温度差を感じさせています。

 その一方で、東証1部の売買代金が2兆円を超えていたのは31日(月)のみで、週を通じて薄商いが続き、盛り上がりに欠けています。

 結果として、3日(木)のローソク足が2つの窓空けによってポツンと取り残される「アイランド・リバーサル」の形となっていますが、これを天井のサインとして読み取るかどうかが悩みどころです。多少株価が下がることも想定されますが、まだ25日移動平均線より上に位置していますので、ここを維持できるかを判断のポイントにするのが良さそうです。

日経平均のトレンド判断は先週から変化なし

 基本的に日経平均のトレンド判断は先週とあまり変化はなく、前回のレポートで紹介したギャン・アングルにおける「2×1ライン」の維持、もしくは「3×1ライン」へと向かう動きの見極めを続けることになりそうです(下の図2)。

■(図2)日経平均(日足)の動きとギャン・アングル(2020年9月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

米国株急落は「健全な調整」なのか、「相場の変調」なのか

 そして、足元の日経平均が堅調さを維持し、さらに上値をトライしていくためのハードルのひとつとして次に意識されるのは、先週の米国株急落が「健全な調整」なのか、それとも「相場の変調」なのかです。

■(図3)米NYダウ(日足)の動き(2020年9月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のNYダウ平均株価の値動きを振り返ると、コロナ・ショックによる急落時に空けた2月21日(金)~24日(月)の窓を埋めるなど、順調に上値を伸ばしていたのですが、3日(木)に前日比807ドル、翌4日(金)に同159ドル安と大きく下落しました。ただ、日経平均と同様に、節目の2万8,000ドル台を維持している他、25日移動平均線もサポートとして機能しており、下げ幅のインパクトの割にはまだ相場が崩れていないと見ることができます。

 確かに、8月に入ってからの米国株は、企業決算の通過や、抗コロナウイルスのワクチン開発や治療法認可への期待、FRB(米連邦準備制度理事会)によるゼロ金利政策の長期化観測が強まったことなどを背景に株価の上昇が加速してきました。とりわけ、NASDAQやS&P500が連日で史上最高値を更新するなど、過熱感を指摘する声も多く、そろそろ調整局面が来てもおかしくはありませんでした。

 さらに、先週は米雇用統計といった経済指標のほか、NYダウの銘柄入れ替えが実施されたり、アップル株やテスラ株の株式分割の影響があったり、米ネット証券のロビンフッドに対してSEC(米証券取引委員会)が注文処理の開示をめぐって調査に入ったと報じられたり、米ハイテク株の急騰の影にソフトバンクグループの関与が報じられるなど、売りの口実となるきっかけがたくさんありました。

 そのため、今のところは「健全な調整」の範囲と考えることができます。ただし、「相場の変調」となりかねない注意すべき点もあります。

今後の注意点:9月中旬以降のスケジュールとNASDAQのトレンド

 そのひとつが9月中旬以降のスケジュールです。ティックトック(TikTok)の米国事業売却交渉期限(15日)をはじめ、FOMC(米連邦公開市場委員会・15~16日)や1回目の米大統領候補討論会(29日)など、米国では注目のイベントが相次ぎます。その他にも、カナダの裁判所で継続審議となっている、華為技術(ファーウェイ)幹部の孟晩舟氏の米国への身柄引き渡しについて何らかの結果が出るのが、9月下旬以降とされていますので、イベントの多さによって積極的に上値を追いづらくなるほか、下げる場面が増えるなど、調整の長期化・深押しの可能性があります。

 そして、もうひとつはNASDAQのトレンドの強さです。

■(図4)米NASDAQ(日足)の動きとギャン・アングル(2020年9月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4ですが、先ほどの図2と同じようにNASDAQの日足チャートにギャン・アングルを重ねたものです。

 NASDAQは3月23日を底に、目立った調整もなく順調に値を戻し、25日移動平均線をサポートにしつつ、史上最高値を更新してきました。足元4日(金)の取引でも、終値ベースで25日移動平均線がサポートとして機能していますので、トレンドの基調は一応維持していると言えます。

 ここでギャン・アングルに注目すると、これまでのNASDAQはこれといった調整局面がないため、株価も「1×1」ラインに沿う格好です。この「1×1」ラインと株価の位置関係を見ていくと、株価と25日移動平均の関係で見えてこなかった、「大きく上方に乖離(かいり)する局面」から「接近する局面」、「ラインをまたぐ局面」、そして「上値のめどとなる局面」へと次第にトレンドの勢いが弱まっていることが分かります。

 したがって、NASDAQは上昇の勢いが弱まる中で1×1ラインや1万2,000pまで値を戻すことができるかが今後の焦点になるわけですが、先ほどの9月中旬以降のスケジュール感やこれまでの株価上昇のピッチが早すぎたことを踏まえると、短い期間で調整が終了し、1×1ラインに沿って上昇するのは少し難しくなっていると言えます。

 仮に25日移動平均線を下抜けてしまった場合、1万1,000pや1万pといった節目の株価や75日移動平均線などが下値の目安となり、荒い値動きを繰り返しながら時間を掛けて天井圏を形成し、「2×1」ラインへ向かう展開も想定しておく必要がありそうです。