ベータ値が意味するものとは?

 いくつかの銘柄につき、対TOPIXの過去100週間のベータ値を掲げると以下の通りです。

トヨタ自動車(7203):1.198
武田薬品工業(4502):0.541
ファーストリテイリング(9983):1.148
野村ホールディングス(8604):1.935
新日鐵住金(5401):1.411
 ベータ値は、個別銘柄のリスクを知るために大いに参考になる指標です。ベータ値が1であれば、株価指数と同程度のリスクとなります。ベータ値が2の銘柄は株価指数の2倍のリスクがあり、ベータ値が0.5の銘柄は株価指数の半分のリスクであることを意味します。

 ここでの「リスク」とは値動きの大きさのことです。したがって、上記を言い換えれば、ベータ値が2の銘柄は株価指数の2倍の値動きをする、という意味になります。ベータ値が高いほどその個別銘柄に内包するリスクが大きく、低いほどリスクが小さくなります。

 

ベータ値から見えてくるある傾向とは?

 なお、ベータ値はあくまでも過去の実績に過ぎず、将来の値動きを保証するものではありません。したがって、現在のベータ値と3年後、5年後のベータ値は異なってきます。

 しかし、ベータ値を見ると、次のような傾向を知ることができます。

(1)景気敏感株VSディフェンシブ株

 過去のベータ値の推移から、鉄鋼、海運、不動産、証券といったいわゆる景気敏感株は、ベータ値が高くなる傾向にあり、逆に医薬品、食料品、小売りといったいわゆるディフェンシブ株はベータ値が低くなる傾向にあります。景気敏感株の中にはベータ値が2以上の銘柄も散見されますが、ディフェンシブ株は0.5以下のベータ値のものが数多くあります。

(2)業界上位銘柄VS業界中位・下位銘柄

同じ業界に属する銘柄のうち、業界上位銘柄は相対的にベータ値が低く、業界下位銘柄ほどベータ値が高くなる傾向にあります。例えば鉄鋼株であれば業界トップの新日鐵住金(5401)は1.411ですが業界2番手、3番手のJFEホールディングス(5411)、神戸製鋼所(5406)はそれぞれ1.669、1.620です。

(3)低位株VS値がさ株

 値がさ株に比べて、株価が低い銘柄の方がベータ値が高くなる傾向にあります。

 これらの傾向を一言で表すなら、「業績の変動が激しい銘柄ほど、ベータ値は高くなる傾向にある」ということができます。