アフリカ中央部と中東、西アジアで、“ウイルス”と“バッタ”が猛威を振るう

 米中問題から視点を、アフリカ中央部、中東、そして西アジアに向けると、穀物市場の動向に影響を及ぼすとみられる、大きな事象が発生していることに気が付きます。

 人類の生活を強く脅かす“ウイルス”と“昆虫”、具体的には、“新型コロナウイルス”と“サバクトビバッタ”が、猛威を振るっています。

図:アフリカ中央部、中東、西アジアにおけるサバクトビバッタの大群の活動範囲

出所:FAO(国連食糧農業機関)の資料より筆者作成

 2020年3月ごろは、オレンジ色で記した国々で、サバクトビバッタの大群が活動していました。その後、繁殖が起きて数が増え、大群の活動範囲が拡大し、5月になると、赤色で記した国々でも、大群が確認されるようになりました。

 以前の「新型コロナに加えてバッタも・・・短期的な反発に今すべきことは?」で書いたとおり、サバクトビバッタは群れを成すと、1日100キロメートル以上、移動することがあると、言われています。

 今回の大量発生は、一昨年、東アフリカで発生した大雨がきっかけで起きたと言われています。その後、繁殖を重ねて数が爆発的に増え、アフリカ大陸から紅海を渡りアラビア半島に、その後、アラビア半島からペルシャ湾を渡りイラン側に渡ったと、考えられます。

 FAO(国連食糧農業機関)が作成しているサバクトビバッタの大量発生に関する4月の月次レポートは、国名をオレンジと赤で書いた地域の国々(おおむね23の国々 アフガニスタン、エチオピア、インド、ウガンダなど。以下、警戒国)が、足元、サバクトビバッタの脅威にさらされていると、しています。

 サバクトビバッタは、一日に、自分と同じ重さの穀物を含む植物を食い荒らす、と言われています。1匹あたり数グラムから数十グラムだとしても、数千万匹が、数十日にわたって、食い荒らせば、国によっては食糧危機に陥ります。(サバクトビバッタが大量発生し、食料が減少する懸念が強まったため、アフリカ東部のソマリアでは2月、国家非常事態宣言が発令されました)

 また、サバクトビバッタの警戒国では、以下のとおり、新型コロナウイルスの感染者の増加が目立っています。

図:サバクトビバッタの警戒国における新型コロナウイルスの感染者数 単位:人

出所:Bing-data-Covid19より筆者作成

 FAOは、サバクトビバッタの大群を封じ込めるため、農薬を散布するなどの援助を申し出るも、新型コロナウイルスの感染が拡大しているため、思うように援助ができないことがある、としています。

 “ウイルス”と“昆虫”、2つの脅威にさらされている警戒国は、今、非常に困難な状況にあります。