2.クリスマス商戦は「ポケットモンスター ソード・シールド」と「ニンテンドースイッチライト」に期待

 任天堂にとって、今3Qのクリスマス商戦の目玉は、11月15日発売のNS用ソフト「ポケットモンスター ソード・シールド」です。ポケットモンスターの最新作です。前期業績のけん引役の1つとなった「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・イーブイ」(2018年11月16日発売)は前3Qだけで1,000万本、2019年9月末累計で1,128万本売れています。今回の「ポケモン ソード・シールド」が完全新作であることを考えると、最終的に1,500万~2,000万本の超大型作品になる可能性があります。

 この他、「リングフィット アドベンチャー」(10月18日発売)、「ルイージマンション3」(10月31日発売)も2019年クリスマス商戦の重要ソフトになると思われます。今4Qには、「あつまれ どうぶつの森」(2020年3月20日発売)が発売されますが、これも重要な大型作品になると思われます。

 またNSライトは、クリスマス商戦でどの程度売れるかが、今後の拡大程度を予想する上で重要になります。楽天証券では、NSライト販売台数を今期700万台、来期1,000万台と予想します。前回予想の今期400万台、来期600万台から上方修正します。

 スマホゲームでは、任天堂としては初めて本格的なガチャを導入した「マリオカートツアー」を9月25日に163の国、地域で配信開始しました。マリオカートツアーの課金売上高は、任天堂のこれまでのスマホゲームの中で最大となっているもようです。11月7日現在で日本では、ダウンロードランキングが4位、課金売上高ランキングが17位、アメリカでは同じく13位、23位、ドイツでは7位、22位となっており(ゲームカテゴリー内のランキング、iOSの場合、AppAnnieによる)、今のところ成功と言えます。12月にはグローバル対戦のベータテストを開始する予定ですが、ユーザー数と課金売上高の増加につながることが期待されます。

 これらのことを総合的に検討して、楽天証券では任天堂の2020年3月期業績を、売上高1兆3,700億円(前年比14.1%)、営業利益3,000億円(同20.1%増)と予想します。前回の売上高1兆3,000億円(同8.3%増)、営業利益2,900億円(同16.1%増)を小幅ですが上方修正します。

 なお、会社予想の売上高1兆2,500億円(前年比4.1%増)、営業利益2,600億円(同4.1%増)は、今2Q決算時に据え置かれました。前3Qは「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・イーブイ」「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」の大型作品があったため、今3Q業績が前3Qを上回ることができるかどうか不透明と会社側は考えているようです。

 ただし楽天証券では、前述のように「ポケットモンスター ソード・シールド」が超大型化する可能性があること、今3Qの「リングフィット アドベンチャー」「ルイージマンション3」、今4Qの「あつまれ どうぶつの森」にも期待できること、引き続き前期以前発売の旧作の売れ行きに期待できることから、会社予想はいずれ上方修正される可能性が高いと考えています。

表5 ニンテンドースイッチ用ソフトの発売スケジュール(任天堂製または任天堂が販売権をもっているソフトのみ)

出所:任天堂ホームページより楽天証券作成

3.2021年3月期も業績好調が予想される

 楽天証券では、NSハード標準型の販売台数を、2019年3月期1,695万台、2020年3月期1,700万台、2021年3月期1,500万台と予想しています(前回予想を維持します)。テレビに接続したり、本体画面を使い屋内でプレイされることが多い標準型の需要は、今期がピークで来期から減少すると予想しています。ただし、NSライト販売台数を2020年3月期700万台、2021年3月期1,000万台と予想していますので、2021年3月期までいわゆるニンテンドースイッチファミリーの販売台数は伸び続けると予想しています。

 このためNSソフト販売本数も、2019年3月期1億1,855万本に対して、2020年3月期1億6,000万本、2021年3月期1億9,000万本と、2021年3月期まで伸びると予想します(前回予想は、2020年3月期1億5,000万本、2021年3月期1億8,000万本)。

 この販売台数、販売本数予想に基づいて、楽天証券では任天堂の2021年3月期業績を、売上高1兆4,600億円(前年比6.6%増)、営業利益3,800億円(同26.7%増)と予想します。前回予想のおのおの1兆3,700億円、3,600億円から上方修正します。

 2021年3月期の任天堂製ソフトで注目できるのは、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド続編」です。また、NS発売1年目に発売された大型ソフト「マリオカート8 デラックス」「Splatoon2」「スーパーマリオ オデッセイ」の中で、最低1作の続編ないし新作が発売される可能性があります。これは任天堂製大型ソフトの開発期間がおおむね平均3年と推定されるからです。特に、2017年発売の「マリオカート8 デラックス」は、Wii U版のリメイクであったにもかかわらず、2019年9月末累計販売本数1,901万本というNS用ソフトの中でトップの実績を挙げています。そのため、マリオカートの新作がもし発売されるならば、大きな期待が持てると思われます。