増え続けている高齢者の生活保護

 現行の年金制度に大きく舵を切った2004年の国会審議(第159回国会 参議院決算委員会会議録第14号)における小泉純一郎首相の答弁や、それに先立つ2003年の議論(平成15年第9回経済財政諮問会議議事要旨)を踏まえると、今の年金制度は、生活保護との組み合わせを想定した制度という見方ができます。

【参考】小池晃議員の質問に対する小泉純一郎首相の答弁
「それは、公的年金ですべて生活できる人も一部にはいるでしょう。しかし、公的年金以外に自分の蓄えているものもあるでしょう。そして、なおかつ生活保護制度というのもあります。いろいろな組み合せです。そういう中で、しっかりとした社会保障制度を作っていこうということであります。」

 生活保護世帯数の推移をデータで確認すると、2004年当時に想定された高齢者世帯の生活保護受給者の増加が進行しています。

 厚生労働省が公表している「福祉行政報告例」および「被保護者調査」によると、2005年4月の生活保護世帯数(現に保護を受けた世帯数)は101万世帯、うち高齢者世帯数は45万世帯、高齢者世帯の比率は44.2%でした。

 生活保護世帯数は増加を続け、2019年4月には162万世帯、うち高齢者世帯数は89万世帯、高齢者世帯の比率は55%に達しています。

 景気の回復や生活保護受給審査の厳格化もあって、2014年頃から生活保護世帯数の総数はほぼ横ばいですが、高齢者世帯は一貫して増加を続けていることがグラフから読み取れます。

出所:厚生労働省「福祉行政報告例」および「被保護者調査」を基に筆者作成。2005年度より定義が変更されているため、グラフを分割。