7月15日~19日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は反落。前々週に警戒されたリスクが後退、米国の石油製品在庫の増加も重石となり、売りが先行する展開となった。WTI期近8月限は一時54.72ドルまで下落し、期近ベースとしては6月20日以来の安値を付ける場面も見られた。

 ハリケーンリスクが後退した。ハリケーン「バリー」はルイジアナ州に上陸したが、その影響が軽微であるとの見方が広がった。沖合の生産量は減少したが、早々に一部施設は操業を再開、原油需給への影響は限られる可能性が出てきたため、警戒して買われた反動から売りが出た格好。

 また、中東の地政学的リスクも後退した。イランのロウハニ大統領は14日、米国が制裁を解除して核合意に復帰するのであれば協議の用意があることを表明した。

 これに対してトランプ米大統領は16日、イランとの間で進展があったと発言。詳細については明らかになっていないが、ポンペオ米国務長官によると、核ミサイル計画についてイランは交渉の準備があるという。これらの発言を受け、両国の軍事的緊張の緩和への思惑が広がった。

 米国の石油製品在庫が増加したことも相場の重石に。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は予想以上の減少となった。しかし、ガソリン在庫が予想に反して積み増しとなり、ディスティレート在庫も予想以上に増加、なかでもディーゼル燃料の在庫が大幅に増えた。ドライブシーズンに伴う燃料油需要の増加が期待される時期にあるにもかかわらず、これら石油製品在庫が予想対比で大幅な積み上げとなったことを市場は嫌気した。

 直近のハリケーン「バリー」により原油生産量は幾分か減少しており、輸入タンカーの荷揚げが停滞した可能性もあるため、原油在庫はさらに減る可能性がある。しかし、市場は原油在庫の減少よりも石油製品在庫の増加、特にガソリン在庫の増加を弱材料としてクローズアップしたことからも、市場のセンチメントが弱気に傾いていることが窺える。

 このほかにも、米中貿易摩擦が長期化することへの警戒も圧迫要因となった。トランプ米大統領は中国との貿易交渉には時間を要すると発言した。エネルギー消費大国である両国の原油需要が、経済成長の鈍化により伸び悩むことが懸念された。また、同大統領の発言を受けて、上昇基調にあった米株式市場も摩擦による企業業績悪化への懸念から反落、リスク選好度が低下したことも原油相場を押し下げた。