75日移動平均線を抜けきれない場合は要注意

 このように、日米の株式市場は株価の戻り基調に入った印象になっていますが、日経平均については少し気になることがあります。それは、最近の値動きが「昨年10月からの下げ方にとても似ている」という点です。

■(図3)日経平均(日足)の動き その2(2019年6月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3はやや期間が長めの日足チャートですが、10月2日の高値(2万4,448円)からの下落の動きをいくつかに分けてみると、(1)「窓」空けで25日移動平均線を下抜け、その後75日移動平均線も下抜け、(2)いったん下げ止まるも75日移動平均線が抵抗となり再び下落、(3)そのタイミングで25日と75日移動平均の「デッド・クロス」が実現、(4)しばらく75日移動平均線が抵抗となる広いレンジでのもみ合いが続き、(5)その後に大きく下落、という流れでした。

 最近の日経平均も、4月24日の戻り高値を起点にすると、(1)~(3)までの動きは昨年10月の時とそっくりです。現在は(4)の75日移動平均線による上値抵抗が意識されつつ、もみ合いになるのかといった状況です。

 必ずしも歴史が繰り返されるわけではありませんが、足元の株価の上昇をギリシャ神話の「イカロスの翼」に例えるならば、75日移動平均という太陽に近づくにつれて、株価上昇の翼を固めている蝋(ろう)が溶け出し、急降下してしまう展開もあり得るわけで、今後は75日移動平均線の上抜けが焦点になることと、抜けきれなかった場合、次の下落が大きなものになるかもしれないといった点には留意しておく必要があるのかもしれません。