日経平均は「窓」を空けて上昇

 6月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、先週末6月7日(金)の日経平均株価終値は2万884円でした。前週末終値(2万601円)からは283円の上昇、週足ベースでは新元号「令和」になって初めての上昇になります。

 また、週末の日経225先物取引が大取(大阪取引所)で2万1,050円、CME(シカゴ)が2万1,055円と節目の2万1,000円台を回復して終えており、今週は戻りをうかがうスタートが濃厚ですが、このまま株価水準を切り上げることはできるのでしょうか?

 まずはいつもの通り、下の図1で足元の状況から確認です。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年6月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 結論から言ってしまうと、日足ベースの日経平均のチャートの形はかなり改善しています。

 先週の日経平均の値動きを振り返ると、週の最初は下値を探る動きとなり、2万500円割れの場面も見られたものの、その後は大きく反発する展開へと転じました。

 ローソク足の並びをチェックすると、週初の3日(月)と5日(水)に2つの「窓」を空けたことによって、3日(月)と4日(火)のローソク足が離れ小島のように取り残される形になっていることが分かります。

 最初の窓空けは、米中関係の悪化や、移民問題を背景にトランプ米大統領がメキシコに対して関税を引き上げる旨のツイートをしたことをきっかけに下値を探る動きになったことで出現しましたが、次の窓空けは、その関税引き上げがひとまず見送られる方向に傾いたことや、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が利下げ期待を高める発言をしたことによって現れました。

 こうした離れ小島のような形は言葉の通り、「アイランド・リバーサル」と呼ばれ、相場が反転する時に現れるとされています。また、このアイランド・リバーサルが形成されると、株価が大きく動くことが多いとも言われています。

 どういうことかと言うと、アイランドにあたる部分、つまり先週の3~4日の取引は下値を探りに行く動きが活発だった場面で、相場の下方向をにらんで売り方が増えていたタイミングだったと考えることができます。しかし、見込みとは反対の方向に窓を空けて上昇してしまったため、売り方が含み損を抱えることになり、慌てて損切りを覚悟で買い返済に動いてきます。当然、他の取引参加者もこうした事態を想定して、踏み上げ的な買いを入れるため、より株価が上がりやすくなるというリクツです。

 

今週は2万1,000円台回復を意識、さらにその上も?

 そのため、冒頭でも触れた通り、今週の日経平均は2万1,000円台の回復と維持が意識されそうですが、今週末はメジャーSQが控えており、需給的な思惑も絡めばさらにその上にある25日移動平均線や75日移動平均線の突破があってもおかしくはなさそうです。実際に米NYダウのチャートを見ると、株価は3日(月)の「十字足」を境に反発し、終値での2万6,000ドル台の回復が射程圏内にあるほか、25日・75日移動平均線の上抜けを達成しています(下の図2)。

■(図2)米NYダウ(日足)の動き (2019年6月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

75日移動平均線を抜けきれない場合は要注意

 このように、日米の株式市場は株価の戻り基調に入った印象になっていますが、日経平均については少し気になることがあります。それは、最近の値動きが「昨年10月からの下げ方にとても似ている」という点です。

■(図3)日経平均(日足)の動き その2(2019年6月7日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3はやや期間が長めの日足チャートですが、10月2日の高値(2万4,448円)からの下落の動きをいくつかに分けてみると、(1)「窓」空けで25日移動平均線を下抜け、その後75日移動平均線も下抜け、(2)いったん下げ止まるも75日移動平均線が抵抗となり再び下落、(3)そのタイミングで25日と75日移動平均の「デッド・クロス」が実現、(4)しばらく75日移動平均線が抵抗となる広いレンジでのもみ合いが続き、(5)その後に大きく下落、という流れでした。

 最近の日経平均も、4月24日の戻り高値を起点にすると、(1)~(3)までの動きは昨年10月の時とそっくりです。現在は(4)の75日移動平均線による上値抵抗が意識されつつ、もみ合いになるのかといった状況です。

 必ずしも歴史が繰り返されるわけではありませんが、足元の株価の上昇をギリシャ神話の「イカロスの翼」に例えるならば、75日移動平均という太陽に近づくにつれて、株価上昇の翼を固めている蝋(ろう)が溶け出し、急降下してしまう展開もあり得るわけで、今後は75日移動平均線の上抜けが焦点になることと、抜けきれなかった場合、次の下落が大きなものになるかもしれないといった点には留意しておく必要があるのかもしれません。