2月19日、EIA(米エネルギー省)は、米国内のシェールオイル主要地区におけるさまざまなデータを公表しました。大概毎月第3火曜日に公表されるこのデータは、しばしば、原油相場を動かす要因になっています。

 米シェールはここ数年間、OPEC(石油輸出国機構)などによる世界の原油需給バランスを
引き締めて原油価格を上向かせる減産の効果を薄めてきました。このため、米シェールは
原油価格の上昇を望む市場参加者の間で、邪魔モノと見なされることがあります。

 OPECなどは2019年1月から新たなルールの下、減産を行っています。しかし、米シェールの生産量は衰えることなく増加し続け、統計史上最高を更新し続けており、「シェールが増えれば米国全体の原油生産量が増える」「米国全体が増えれば減産効果が薄れる」という状況が続いています。

 今回は、先週EIAが公表したデータを基に、今後の原油相場の動向を考える上で重要な米シェールオイルの最新の状況を、基礎知識を踏まえながら解説します。

図1:7つの米シェール主要地区

出所:EIAのデータより筆者作成

図2:米シェール生産プロセス 

出所:ヒアリングなどより筆者作成

 

米シェールオイル生産量増で、米国は産油国No.1の地位に返り咲く

 図3は、世界で3本の指に入る産油国の原油生産量の推移(1960~2017年)を示したものです。OPECが発足した1960年から1970年ごろまで、3カ国の中で最も生産量が多かったのは、米国でした。

図3:主要3産油国の原油生産量の推移(1960年~2017年) 

単位:千バレル/日量 
出所:OPECのデータより筆者作成

 OPEC発足後、サウジアラビアは生産量を急拡大させ、OPECのリーダーとして国際市場での発言権を手中にしました。ロシアもまた広大な国土から得られる豊富な資源を開発し、生産量を増加させました。

 一方、米国の原油生産量は1990年ごろから徐々に減少し始めます。米国が原油の輸入量を増加させ、原油の調達先を多角化し始めたためです。しかし、米国の原油生産量は2010年ごろから急増に転じます。米国でシェール革命が起きたためです。

 新たな手法による原油の生産が一般化し、米国各地で非在来型原油(米国の場合はシェールオイル)の生産が始まりました。米国は歴史的に経済発展と石油産業が深く関わってきたこともあり、これまで蓄積されたノウハウやインフラ、法律、石油産業への国民の思い、など、さまざまな米国特有の要素が革命を後押ししました。

 図4は、米国全体と、米シェール主要地区の原油生産量の推移を示したものです。

図4:米国全体および米シェール主要地区の原油生産量 

単位:百万バレル/日量
出所: EIAのデータより筆者作成

 EIAの統計によれば、2019年1月の米国全体の原油生産量は日量1,202万バレル、米シェール主要地区の原油生産量は日量822万バレルでした。勢いを伴い、1,200万、800万と、ともに節目に到達しています。2018年9月、EIAは2018年初旬に米国が世界No.1の原油生産国になったとしています。

 米国全体の原油生産量に占める米シェール主要地区の原油生産量のシェアは、68.4%でした(2019年1月時点)。

 図5は、そのシェール主要地区のシェアの推移を示したものです。

図5:米シェール主要地区の原油生産量の国内シェアと同地区の原油生産量

出所: EIAのデータより筆者作成

 シェール革命が起き、米シェール主要地区の原油生産量の急増し、そしてシェアが急上昇しました。「シェールが増えれば米国全体が増える」という状況が続いています。