執筆:窪田真之
今日のポイント
- イエレンFRB議長が7月12日にハト派と取れる発言をしてから、ドルが主要通貨に対して全面安に。円高を嫌気して、日経平均の上値も重い。
- これから本格化する4-6月期の決算発表は、好調と予想される。政治不安・円高不安が上値を押さえる一方、好調な企業業績が下値を支える要因となると予想。
ドル安(円高)進行で日経平均下落、2万円前後の膠着続く
7月24日の日経平均は前日比124円安の1万9,975円でした。米金利の先高感が低下していることに伴うドル安(円高)が続いていることが嫌気されました。この日、ドル円は、一時1ドル110.62円まで円高が進んでいます。
膠着する日経平均:2016年1月4日―2017年7月24日
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イエレン発言で米金利の先高感が低下
米金利の先高感を低下させたのは、7月12日のイエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長による議会証言です。「ここからさらに大幅な利上げが必要なわけではない」と話し、ハト派姿勢を示したと受けとめられました。そこから、米ドルは主要通貨(円・ユーロなど)に対して、全面安となっています。
12日の議会証言で、イエレン議長が示唆したことが、もう1つあります。早ければ10月からFRBの保有資産の縮小を開始するというものです。FRBは巨額の米国債を保有していますが、それを「少しずつ減らしていく」というメッセージです。
実行すれば米長期金利を引き上げる効果があります。こちらの示唆は、タカ派と取ることもできます。ただし、市場はそう反応していません。それが、米ドルの長短金利の推移に表れています。
米ドル長短金利の推移:2016年12月30日―2017年7月21日
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昨年12月に続き、3月・6月とFRBは利上げを実施してきました。それを受けて、米国の短期金利は上昇が続いています。ところが、その間、長期金利は逆に下がっています。米国のインフレ率が思うように上がってこないことが、長期金利の上値を押さえています。
イエレン議長は、「利上げのペースがゆるやかになる」「米国債の保有を減らす」と2つのメッセージを出しました。短期金利の上昇ピッチをゆるやかにし、長期金利の上昇を促すものと考えられます。ところが、市場は、金融引き締めを続けにくい環境になってきていることを示唆したものと、とらえました。そのため、10年金利は、足元で再び低下しています。
今週25-26日のFOMC(米金融政策決定会合)に注目
26日(水)(日本時間では27日早朝)に、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表されます。今回は、政策変更はないと考えられます。注目されているのは、FOMCの声明文で、今後の金融政策にどのような示唆がされるかです。
FRBの政策方針にハト派トーンが出てきていると見ている市場は正しいのか、あるいは、FRBはタカ派姿勢を変えていないと見なすべきなのか、注目されています。それにより、ドル安(円高)が続くか、ドル高(円安)に反転するかが、決まります。