急速な円安進行を受け、輸出関連の主力株にけん引され11日連騰

先週の予測としては、チャート上は遅かれ早かれ2000年4月12日の20,833円を目指す流れといえるものの、短期的には過熱感も出てきており、20,000~20,500円での高値圏でのもみあいを想定しました。但し、アメリカの経済指標が良ければ早期利上げ観測が高まってドルが買われ、日米金利差拡大から一段の円安となって日本の株式市場にはプラスになるとしました。

結果的には、29日(金)には為替が1ドル=124.46円という2007年6月の水準までの円安進行となり、今期の輸出企業の想定為替レートが1ドル=115円ですので、主力の輸出企業に見直し買いが入り指数をけん引し、28日(木)は、日経平均は20,655円まで上昇しました。

週初めの25日(月)は、1ドル=121円台の円安を好感し、輸出関連株を中心に出遅れ銘柄の循環物色が続き△149円の20,413円となり、26日(火)は、欧州勢の参入でドル買い・円売りが加速し約7年11カ月ぶりの1ドル=122円台後半となったことで△23円の20,437円と続伸、更に27日(水)は1ドル=123円台となったことで△35円の20,472円となりました。28日(木)は、前日の欧米株式が大幅高となったことや1ドル=124円をつける場面もあり、良好な外部環境の元に20,655円まで買われ、終値は△78円の20,551円でした。週末の29日(金)も引き続き先高期待から売買代金・出来高が大きく膨らみ、△11円の20,563円と11日連騰となりました。

しかし、日本市場の引け後のアメリカ市場は、ギリシャ債務問題の進展がみられず欧州株式が大幅下落となり、1-3月期のGDP改定値が前期比年率+0.2%から-0.7%へ下方修正(市場予想は-0.9%)し、他の経済指標も弱かったことで利上げ先送り期待から利回りは上昇したものの、株式市場は好感せず▼115ドルの18,010ドルとなりました。シカゴの日経先物は▼105円の20,455円となっていました。

 

今週は、先週までの上昇基調を維持できるかどうかに注目

今週は、週初めは先週末の欧米株式の下落を受けて売り先行で始まりそうですが、下値確認後先週までの上昇基調を維持していけるかどうかが注目となります。

先週は、急速な円安進行を受けて大手輸出企業の収益が膨らみやすい(今期の為替想定1ドル=115円)ため、円安のプラスの側面に注目がいき、日経平均は29日(金)は約27年3カ月ぶりに11日連騰となりました。しかし、今週は週末のアメリカの5月雇用統計を控え、また不透明さが強まったギリシャ債務問題や最近の荒い値動きが目立つ上海株式が不安材料となります。

気になるのは、当面のアメリカ株式の動きです。週末のアメリカの雇用統計が改善すれば利上げ期待からドル高が一段と進む可能性がありますが、そうなると単純にアメリカの景気回復期待で株式が上昇するのか、それともアメリカの企業業績の悪化懸念から株式が下落するのかわかりにくいところがあります。アメリカの格言で「5月に株を売って、市場から去れ」というものがあり、6月は節税目的の個人退職年金の流入が一巡し、需給面の好材料がないと思われます。NYダウが17,776ドルを終値で切るようですと、いったん調整に入る可能性もあります。そうなるとこれまで上昇を続けていた日本株式もいったん調整ということも考えられますが、日本の場合は需給環境もよく、下げれば買いチャンスということになるでしょう。

本日6月1日(月)は、日経平均は先週末の欧米株安を受けて▼118円の20,444円で始まりましたが、売り一巡後は下げ渋る展開となり、前場は▼73円の20,489円でしたが、後場になると先高期待でプラスに転じ、△6円の20,569円と12連騰となりました。

 

 

 

(指標)日経平均

先週の予測では、2万円台での値固めが続く可能性高く、そのまま上昇しても20,500円水準からは上値は重いとし、20,000~20,500円の間での動きを想定しました。

先週は、過熱感が出ているとの見方もある中であっさりと5日続伸し、27年ぶりの11連騰となりました。為替の円安が121円台から124円台半ばまでの円安進行となったことで輸出の主力株関連やメガバンクを中心に買われ、出遅れ物色もあって出来高・売買代金共に増加する動きとなりました。25日(月)の20,318円を安値に28日(木)には20,655円まで上昇し、週の終値は20,563円でした。売買代金は28日(木)に3兆1,639億円、29日(金)に3兆6,663億円と2日連続で3兆円台となり、出来高も32.9億円と今年最高となりました。

柴田罫線では、20,500円水準からは上値は重いとしましたが、予想を超える円安進行で主力の輸出株がけん引し28日(木)には20,655円まで上昇しました。しかし、今のところ柴田罫線の終値ベースでは20,500円水準で止まっています。陰線が下に1本できて再上昇し、28日(木)の20,655円を終値で抜くと2000年4月12日の20,833円が射程距離に入ってきます。今週は週末にアメリカの雇用統計を控え、またギリシャの債務問題もあり、いったんスピード調整となるのか、それとも12連騰を目指すのか注目となります。11連騰で終われば、目標達成感から調整気味の推移も考えられます。

週明け6月1日(月)は、先週末の欧米株安を受けて▼118円の20,444円で寄り付くものの、後場になると先高期待でプラス圏に浮上し、△6円の20,569円と12日連続上昇となりました。

日経平均

 

(指標)NYダウ

先週の予測では、来週に5月雇用統計を控え、その前に多くの経済指標の発表があり、結果次第では相場に影響を与えるため、高値圏での上下動ということになるとしました。イエレン議長の経済指標の改善が続けば、年内利上げを行うという発言が背景にあります。

結局、大きな上下動のあと週末は▼115ドルの18,010ドルとなりました。連休明けの26日(火)はユーロや円に対してドルの独歩高となり、4月の耐久財受注も予想を上回ったことで市場の利上げへの不安が広がり▼190ドルの18,041ドルとなりました。しかし、翌日はギリシャの債務問題が合意への観測が流れたことで△121ドルの18,162ドルと反発しました。28日(木)は上海株式が-6.5%(▼321Pの4,620P)と急落したことや再びギリシャ問題が不透明になったことで▼36ドルの18,126ドルと反落し、週末の29日(金)は▼115ドルの18,010ドルの大幅続落で引けました。

今週は、週末の6月5日(金)に5月の雇用統計を控え、その前にも多くの経済指標があることからそれらを受けての利上げ観測の動向に注目となります。雇用統計が予想を上回れば早期利上げ観測からドルは買われるものの、早過ぎるドル高から企業業績の悪化を嫌気し、株式は売られる可能性もあります。柴田罫線では三角保ち合いを上放れし、5月19日に18,351ドルまであったものの、ここをピークに調整気味となっており、もし終値で17,776ドルを切ってくると目先は調整入りとなる可能性があります。

NYダウ

 

(指標)ドル/円

先週の予測では、アメリカの経済指標の改善が続けば景気回復期待からドルが買われ、3月10日の年初来高値122.03円を終値で更新するとドルの一段高となって124円水準まで買われてくるとしました。

結局、イエレン議長の年内利上げの可能性の示唆や労働市場への改善期待が広がり、ドル買いが進みました。また、IMFが日本政府に対して2%の物価目標達成のための追加の緩和策を促したことで円売り圧力が加わり、結果的に28日(木)は1ドル=124.46円と約12年ぶりの円安水準となりました。

アメリカの利上げが実施されるまではドル買い・円売りの流れは継続する可能性が高く、目先は5月の雇用統計が予想を上回れば更にドルが買われる可能性があります。逆に雇用統計が冴えなかったり、ギリシャ問題が悪化すればリスク回避の円高の可能性もありますが、限定的と考えられます。

ドル/円