株式市場では、それをきっかけにして株価が大きく動くことがある「イベント」が存在します。突如今までとは異なる株価の動きが短期間に生じることになるため、事前に何らかの対応策を講じることが望まれます。

そこで今回のコラムでは、筆者が大イベントに備えて行っていることや、気をつけている点などをお話ししたいと思います。

今回の日銀政策決定会合で市場参加者が注目していた点とは?

9月14~15日にかけて、日銀政策決定会合が開かれました。市場参加者の間での注目点は、「果たして今回の会合で追加金融緩和が発表されるのかどうか」という点でした。

仮に追加金融緩和が発表されれば、株価が急騰する可能性が非常に高いことは過去の例からみても明らかなため、皆が固唾をのんで見守っていました。

その結果、金融政策は現状維持であることが決まり、これを受けて金融緩和を期待していた投資家からの売りが生じ、15日後場の寄り付きは前場に比べて株価が多少下がりました。

もし追加金融緩和が発表されたなら、おそらく株価は大きく上昇していたことでしょう。

株価が大きく動く「イベント」を事前に把握しておこう

このような、株価が大きく動くきっかけとなる「イベント」はいくつかあります。最近では、利上げを実施するかどうかに注目が集まった9月16日~17日のアメリカFOMCもその1つです。その他、アメリカの雇用統計や、ヨーロッパのECB理事会なども株価を動かす要因となります。

やはり現時点で注目しておかなければならないのが、アメリカの利上げの有無やその時期、そして日銀が追加金融緩和を行うかどうかです。

株価が大きく動けば、私たち個人投資家の投資成果にも大きく影響してきます。対応がまずければ、それだけ投資成果にマイナスの影響が生じることになります。

そのため、まずは株価が大きく動くきっかけとなりうるこうした「イベント」の存在をあらかじめ把握しておく必要があります。存在自体を知らなければ、事前に対応することすらできないからです。

これは、インターネットの投資情報サイトやニュースなどをこまめにチェックしていれば気づくことができます。イベントが近づいてくると、それに関する記事が明らかに増加してくるからです。

筆者は「イベント」に対してどのような投資行動を行うか

筆者はイベントが到来する前に、「株価が大きく上下に動く可能性がどの程度あるか」「株価が上と下のどちらに動くのか」「その直前において、市場全体が上昇トレンドか下降トレンドか」といったポイントを組み合わせて検討し、行動に移します。

といっても、筆者の場合、株価のトレンドに従った売買を実行する株価トレンド分析が基本ですので、そこからはあまり逸脱しないようにします。具体的には次のような感じです。

  • 株価が大きく上に動く可能性が高く、現時点で相場全体が上昇トレンドにある場合
    すでに個別銘柄への買いポジションを十分構築しているため特に何もしない。
    ポジションによっては買い増しをすることもあり。
  • 株価が大きく上に動く可能性が高く、現時点で相場全体が下降トレンドにある場合
    下降トレンドにある個別銘柄であっても、損切り価格が明確に設定できるもの(直近安値が存在するなど)や、もう少しで上昇トレンドに転じそうなものについて新規買いを実行する。
  • 株価が大きく下に動く可能性が高く、現時点で相場全体が上昇トレンドにある場合
    個別銘柄のうち上昇トレンドにあるがもう少しで下降トレンドに転じそうなものは売却してしまう。明らかな上昇トレンドにある銘柄についても一部利食い売りを実行する。つまり株価の大きな下落に備えて買いポジションを縮小させる。
  • 株価が大きく下に動く可能性が高く、現時点で相場全体が下降トレンドにある場合
    下降トレンドの個別銘柄は保有していないため対策の必要なし。上昇トレンドにある銘柄は上記③と同じ対応。
  • 株価が大きく上下に動く可能性はあるが、それほど高くない場合
    オプション取引で対応(下記の記載を参照してください)。

株価変動の可能性が高くない「イベント」にはオプションで対応

株価変動の可能性はあるものの、それほど高くない場合は、イベントに備えていつもとは異なる売買をすることは原則としてありません。その代りに、オプションの買いで対応しています。株価が上に動く可能性がある場合はコールオプション、下に動く可能性がある場合はプットオプションを買います。

例えば、今回(9月14日~15日)の日銀政策決定会合では、追加金融緩和が発表される可能性はそれほど高くないと判断していました。そこでコールオプションの買いを実行し、金融政策が現状維持であることが分かった段階でそれを売却しました。当然損失が生じましたが、これは株価急騰のリスクに備えた保険料と割り切って考えています。

9月14日・15日の時点では、日経平均株価や多くの個別銘柄の株価は下降トレンドとなっていました。ただ、個別銘柄の株価チャートの形状(下降トレンドだがもう少し株価が上昇すれば上昇トレンドに転じそうな銘柄が多い)からみて、仮に追加金融緩和が発表されれば、多くの銘柄が上昇トレンドに転換するという予測がたちました。

しかし、追加金融緩和が発表される可能性はそれほど高くないと踏んでいたので、追加金融緩和による株価上昇に期待して、わざわざ下降トレンドの銘柄を先回りして買うほどではない、と考えたのです。まだまだ下降トレンドの銘柄がほとんどであり、このタイミングで追加金融緩和が出た場合、その後に対応しても何とか間に合う、と考えての行動です。

予想していなかった「サプライズ」が生じたときはどうするか

ただし、株価に大きな影響を及ぼすイベントの存在を事前に完璧に把握できるわけではありません。時には事前に誰も予想していなかった「サプライズ」が生じることがあります。

例えば昨年10月末の「日銀サプライズ緩和」です。この金融緩和発表を受けて株価は大きく反応し、その日の日経平均株価は一時前日比900円近く、率にして6%近くの急騰をみせました。

そして株価チャートをみると、ちょうどこの株価急騰で、日経平均株価は上昇トレンドに転換しました。

日経平均株価 日足チャート

こうなると、さすがに何もしないわけにはいかないので、個別銘柄で上昇トレンドに転じたものについては、「翌日の寄り付きあたりで天井をつける可能性も高いだろうな」と思いつつも翌日に新規買いしました。

ただし、株価が短期間に急騰すると、その後早い段階で株価が目先的な天井をつけることが良くあります。そのため、新規買いの額を上昇トレンドに転換した銘柄に通常投入する資金の半分以下に抑え、後はその後の株価の動きをみて考えることとしました。

その後、日経平均株価こそ上昇を続けたものの、個別銘柄は調整局面に入ったものが多く、そうした銘柄は25日移動平均線に近づいて再び反発したタイミングなどを狙って新規買いをしました。中には再度下降トレンドに転じてしまったものも少なからず存在し、そうした銘柄は結果的に高値掴みになってしまいましたがルールに従って下降トレンド転換時に損切りを実行しました。

余計な情報を取り込まずに株価チャート1本で判断する方法もある

ちなみに、テクニカル分析一本で株式投資をしている投資家の中には、ニュースの類は一切見ないという方も少なくありません。これは、様々な情報が頭に入ってしまうと、売買の判断基準が主観により揺れ動いてしまうからです。例えば株価チャートを見る限りではどう考えても保有株を売る局面ではないが、イベントにより株価が大きく下がるかもという思いが頭をよぎり、売らなくてもよい株を売らされてしまう、といった弊害が生じるのです。

また、上記のように「サプライズ」により株価が大きく変動するようなケースでは、そもそもニュースをチェックしていても意味がなかったことになってしまいます。

ですから、将来何かしらのイベントが起こって株価が大きく変動する可能性があるとしても、それらを事前に一切気にすることはせず、株価チャートでトレンドを見極めて、そのトレンドにしたがって淡々と売買をしていくという戦略も一策です。

株価が突然大きく動くことから逃れることはできません。そして、それをあらかじめ完璧に予測することも不可能です。従って、事前の対応策としてこれが必ず正しいという答えはないのが実情です。

ですから筆者としては、「株価の反応がどうなっても大ケガをしないようにする」という点を重視して対応策を決定しています。読者の皆様のご参考になれば幸いです。