なぜROEが今注目されるのか

ROEの重要性は今に始まったことではありません。世界的に、ROEの重要性は以前から唱えられていました。

しかし、諸外国と比べると、日本株のROEは長年低い水準にとどまってきました。近年こそ日本株のROEは上昇傾向にありますが、それでも諸外国よりはまだまだ低い水準です。

日本株は、ROEが低い状況が長年続いてきたこともあり、ROEが株価に与える影響はあまり大きくありませんでした。そのため、PERやPBRなどといった株価指標に比べるとROEは軽視されがちでした。

ところが、最近になり、ROEが高い銘柄の株価が大きく上昇するようになりました。JPX日経インデックス400の銘柄選定基準にROEが導入されたことなども手伝って、今やROEは俄然注目を集めるようになったというわけです。

ROE使用上の注意点:過小資本銘柄には要注意

ROEを用いる際にはいくつか注意したい点があります。その1つは、過小資本銘柄への対応です。以下の例をご覧ください。

いずれも総資産が100億円のE社、F社があります。当期純利益はE社、F社とも5億円です。E社の自己資本は50億円、F社の自己資本は1億円です。

このとき、E社、F社のROEはそれぞれ次のようになります。
E社:5億円÷50億円×100=10%
F社:5億円÷1億円×100=500%

E社のROEが10%であるのに対し、F社のROEは500%と非常に高水準です。

この例のように、ROEの計算上、分母の自己資本が小さければ小さいほどROEは高くなってしまいます。しかし、これをみて「F社はROEが非常に高水準だから優良だ」と判断するのは早計です。

そこで、ROEだけではなく、ROA(総資産利益率)も併用するようにしましょう。ROAはROEの計算式の分母の自己資本を総資産に置き換えれば計算できます。ROAでみれば、E社もF社も5億円÷100億円=5%と同水準であり、F社の収益性がE社に比べて特段高いものではないことが分かります。

また、安全面にも注意を払う必要があります。F社の自己資本比率は1億円÷100億円=1%と非常に低い水準であり、安全性に問題があるといえます。

ROEだけをみれば優良企業に見えたとしても、それが過小資本によるものである場合は、他の指標も併用したうえで慎重に判断することが必要です。

ROE使用上の注意点:業種によりROEは大きく異なる

サービス業など、多額の資産を必要としない業種では、ROEをかなり高い水準にまで持っていくことができます。実際、ネット関連銘柄のROEが20%、30%と非常に高水準であることは珍しくありません。

一方、化学、鉄鋼、電力など多額の工場設備や固定資産が必要な業種(いわゆる「重厚長大産業」)では、どうしてもROEが低くなりがちです。

では、相対的に高ROEであるネット関連銘柄の株価が上昇を続け、低ROEの重厚長大産業の銘柄の株価が上がらないかといえば、決してそんなことはありません。相対的に低ROEの業種であっても、業績が向上すれば株価も上昇します。

あくまでもROEの水準にのみこだわって銘柄選択をするのであれば別ですが、ROEの高低はできるだけ同業種間での比較をするようにしましょう。

次回は、ROEとPBR、PERの関係性や、それらを用いたお宝銘柄の発掘法などについて取り上げたいと思います。