JPX日経400は指数としての「連続性」は劣るものの・・・

筆者は、株価指数に重要なことは「連続性」だと思っています。言い換えれば、過去の数値との比較可能性です。

連続性は、構成銘柄が頻繁に入れ替われば入れ替わるほど低くなっていきます。

連続性が低いと、例えば10年前、20年前の指数の数値と現在の指数の数値とを比較すること自体が無意味になってしまいます。また、過去の数値をつなぎ合わせてできた株価チャートもまた意味のないものになってしまいます。

こうした観点からみれば、3つの株価指数の中で最も連続性の高いのはTOPIXです。東証1部上場の全銘柄を対象としていますし、東証1部に新規上場・昇格した銘柄を新たに組み入れる他は、銘柄の入れ替えも基本的に行われないからです。

日経平均株価は構成銘柄数が225銘柄しかないのと、2000年4月の採用銘柄大量入れ替えにより一気に連続性が失われてしまいましたが、それ以降はそこそこの連続性が保たれているといえます。

これらに対しJPX日経400は、構成銘柄数が400と少ないこと、毎年定期的に数十銘柄程度の銘柄入れ替えが行われると予想されることから、TOPIXや日経平均株価に比べて連続性が低くなってしまいます。

JPX日経400の現在と10年後を比べると、構成銘柄の半分以上が入れ替わっていた、ということも大いに考えられるのです。

株価が上昇しやすい銘柄選定であればインデックス投資家にはウェルカム

しかし、指数に連動するタイプのインデックスファンドやETFに投資するという観点からは、株価がより上昇しやすいような銘柄選定をしてくれる指数の方が投資家にとってよいはずです。

例えば、ニューヨークダウは構成銘柄が昔と今とでは大きく異なっていて、連続性が保たれているとはいえません。でも、その時代ごとの代表的な企業を構成銘柄とすることで、ニューヨークダウの価格の維持・上昇が保たれているのです。

そのため、ニューヨークダウに連動するタイプのインデックスファンドやETFを長期間保有することは、インデックス連動型の運用をする投資家にとって非常に有意義となります。

これと同じように、「ROE」という株価に対して大きな影響力があると思われる指標を考慮して採用銘柄の選定・入れ替えをするJPX日経400は、インデックス連動型の運用をする投資家にとっては望ましい株価指数といえるかもしれません。そして実際足元では、日経平均株価やTOPIXより高いパフォーマンスを上げているのです。

「ROE」重視の銘柄選定の効果はまだ未知数

ただし、「ROE」を重視した銘柄選定をすることが、従来の株価指数と比べて今後も継続的に高いパフォーマンスをあげることにつながるかは未知数です。

以前コラムでも申し上げましたが、懸念されるのは業績やROEが改善して株価が大きく上昇した後の銘柄を新規採用した結果、「高値掴み」してしまう恐れがあるという点です。

株価は過去ではなく将来を織り込んで動きます。そして株価は、ボロボロに売り叩かれた状態からまともな業績に戻る過程で最も上昇率が大きくなることが一般的です。

好業績や高いROEを長年維持できるような成長企業であれば問題ありませんが、上場銘柄の多くは国内外の景気に業績が左右されます。業績が回復してJPX日経400に採用されたものの、そこが景気のピークであり株価のピークであったという懸念は、どうしてもつきまとってしまうのです。

このような懸念もあり、10年後、20年後に日経平均株価やTOPIXと比べたパフォーマンスがどうなっているかを予想することはできません。

短期的にはJPX日経400が優位な状況が続くか

ただ、少なくとも現時点では、GPIFをはじめとして、JPX日経400採用銘柄に対する買い需要が強まることが期待できる環境なのは確かです。したがって、短期的に見ればJPX日経400のパフォーマンスが日経平均株価やTOPIXを上回る状態はもうしばらく続くのではないかと個人的には感じています。

また、JPX日経400連動型のETFや投資信託に資金が流入すれば、JPX日経400を構成する各個別銘柄にも買い需要が生じます。そのインパクトという面では、採用銘柄のうち小型株や、東証2部・マザーズ・ジャスダック上場銘柄には要注目です。

知名度も日々高まっている印象のあるJPX日経400。日経平均株価やTOPIXとともに、日本株を代表する株価指数に育っていくことを見守りましょう。