全く新しい株価指数「JPX日経インデックス400」

皆さまは、日本株の株価指数といえば何を思い浮かべますか?代表的な株価指数といえば、「日経平均株価」と「TOPIX」です。これらの株価指数はテレビのニュースでも伝えられています。

実は、今年の1月6日から、新しい株価指数が誕生したことをご存知ですか?それは「JPX日経インデックス400」というものです。

公的年金の積立金をはじめ、あまりリスクを取ることができない投資資金を運用する際は、株価指数と同等の投資成果を目指したいわゆる「インデックス運用」がよく行われます。

しかし、株価指数を構成する銘柄の中には業績が良くない銘柄も含まれていて、当然そうした銘柄の株価は低迷します。こうした銘柄が株価指数の足を引っ張っている、という指摘が以前からなされていました。

公的年金の積立金をはじめ、インデックス運用で投資資金を運用する立場からしても、日経平均株価やTOPIXよりも高い投資成果が期待できる株価指数があれば望ましいことは言うまでもありません。

こうした背景のもと、「利益」や「収益性」といった、既存の株価指数では考慮されていない要素を取り入れて構成銘柄を選定した「JPX日経インデックス400」が登場したのです。

公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、インデックス運用のベンチマークとして、従来のTOPIXに代えてJPX日経インデックス400を採用するのではないかといわれています。

JPX日経インデックスの特色は「構成銘柄の選定基準」にあり

JPX日経インデックス400は、400銘柄から構成されていますが、「利益」と「収益性」という、他の株価指数とは異なる基準で銘柄が選定されているのが大きな特色です。

まず、過去3期全ての期で営業赤字や最終赤字である銘柄や、過去3期いずれかで債務超過だった銘柄などは無条件で選定銘柄から外されます。

その上で、売買代金や時価総額の上位1000銘柄のうち、3年平均のROE(自己資本利益率)や3年累積の営業利益などで順位付けをして400銘柄を選定し、構成銘柄とします。

つまり、利益や収益性の観点からみた「優良企業」、言い換えれば「株価の上昇がより期待できる銘柄」で構成されているのがJPX日経インデックス400なのです。

また、日経平均株価やTOPIXと違い、東証1部上場銘柄以外の銘柄(東証2部、マザーズ、ジャスダックなど)も構成銘柄に含まれている、というのが特徴です。

つまり、東証1部上場銘柄でなくとも、利益や収益性の面で優れている銘柄であればJPX日経インデックス400の構成銘柄に採用されるということです。もし採用されれば、インデックス売買に伴う買い需要だけではなく、知名度が上昇するという点からも株価にとってプラスの影響が期待できます。

例えば、ジャスダック上場のUSEN(4842)がJPX日経インデックス400に採用されたことには筆者自身も驚きました。構成銘柄採用が発表された昨年11月6日の終値は265円でしたが、翌11月7日にはこれを好感して大きく上昇、今年1月10日高値447円までの上昇率は69%に達しました。

ただ、毎年8月には構成銘柄の定期入れ替えも行われます。毎年50銘柄程度の入れ替えが想定されているようですが、仮に構成銘柄から除外されることになれば、逆に株価が大きく下落する要因になることには注意が必要です。

銘柄選定基準から浮かび上がる「懸念材料」も

「利益」や「収益性」により銘柄選定を行い、優良企業を集めて構成された株価指数との呼び声も高いJPX日経インデックス400ですが、懸念材料もあります。それは、400の構成銘柄から漏れてしまった銘柄の株価上昇率が、構成銘柄の株価上昇率を超えてしまうことです。

例えば、パナソニック(6752)は、TOPIXはもちろんのこと(TOPIXは東証1部上場の全銘柄で構成されるため)、日経平均株価の採用銘柄でもありますが、JPX日経インデックス400の構成銘柄には選ばれませんでした。2012年3月期、2013年3月期と2年続けて巨額赤字を計上したためです。

しかし、最近のパナソニック株は右肩上がりに上昇していて、1月10日も昨年来高値を更新しています。昨年11月6日(JPX日経インデックス400の構成銘柄発表日)から現在までのパナソニック株の上昇率は、TOPIXやJPX日経インデックス400の上昇率を大きく上回っています。

株価というものは、赤字続きでボロボロに売り叩かれた状態から、業績底打ち、黒字転換を果たす時期に最も大きく上昇するものです。

しかし、その最も株価が上昇する期間は、JPX日経インデックス400の銘柄選定基準に当てはめると、どうしても構成銘柄から漏れてしまいます。

赤字続きの銘柄が業績復活を果たしてJPX日経インデックス400にようやく採用される頃には、その銘柄の株価はすでに大きく上昇してしまった後です。

JPX日経インデックス400では、過去の決算における業績や収益性により構成銘柄が選ばれます。でも、株価は過去の決算ではなく将来の業績を織り込んで動きます。この株価と業績のタイムラグにより、構成銘柄に選ばれたときには株価が既に大きく上昇した状態、逆に構成銘柄が除外されるときには既に株価が大きく下落した状態、となってしまうことが大いに懸念されます。

株式会社日本取引所グループおよび株式会社日本経済新聞社の公表資料「新指数「JPX日経インデックス400」の算出・公表開始について」(平成25年11月6日)の別紙2をみると、2006年8月末~2013年8月末の7年間で、JPX日経インデックス400のTOPIXに対する累積超過リターンが約6%あります。これだけ見るとJPX日経インデックス400の方がTOPIXよりも高いパフォーマンスが期待できるようにみえます。

しかし、今後も同様の成果が保証されているわけではありません。上記のような懸念材料もあるため、JPX日経インデックス400はTOPIXよりも必ず高いリターンが得られる、と決め付けることは避けた方がよいと思います。

JPX日経インデックス400と他の株価指数との分散投資が無難か

JPX日経インデックス400は、日経平均株価やTOPIXと同じように「株価指数」です。したがって、指数連動型のETFなどインデックス投資をする個人投資家にとっては大いに注目すべき新しい株価指数といえます。先日、JPX日経インデックス400に連動するタイプのETF2本が1月28日に上場予定であることが発表されました。

でも、日本株のインデックス投資を行う場合、日経平均株価、TOPIX、そしてJPX日経インデックス400のどれに投資すべきかは、迷うところです。例えば、リーマンショック後の5年間は、日経平均株価がTOPIXを上回るパフォーマンスをみせました。

しかし、どの株価指数が最も高いリターンを得られるかを推測するのは「当て物」の類です。そもそも、インデックス投資は個別銘柄への投資に伴うリスクやリターンのブレを排除し、市場平均と同じ程度のリターンで良しとする投資手法です。

また、JPX日経インデックス400が、より株価の上昇が期待できる銘柄で構成されているとしても、上で述べたような懸念材料もあります。

したがって、日経平均株価、TOPIX、JPX日経インデックス400のどれが最も高いリターンを上げるかを当てに行くのではなく、例えば投資資金を日経平均株価、TOPIX、JPX日経インデックス400に3等分して運用するなど、より「平均」を目指した方法を取ればよいのではないかと思います。

JPX日経インデックス400はまだ生まれたての株価指数です。私たち個人投資家も、日経平均株価やTOPIXと同様、日本を代表する株価指数に成長するのか、暖かく見守っていきたいものです。