今日のポイント
- 企業業績に回復色強まる。楽天証券経済研究所では、前期(2017年3月期)に約10%、今期(2018年3月期)に約13%の最終増益を予想。
- 日経平均は、政治不安と業績回復期待の綱引きで今しばらくボックス推移と予想。
(1)製造業・非製造業ともに業況が改善:3月日銀短観
2017年に入ってから、日経平均は、おおむね18,900-19,600円の狭いボックス圏で推移しています。強弱材料ががっぷり四つに組んでいます。日本の景気・企業業績に回復色が強まっていることが強材料、世界の政治不安が高まっていることが弱材料となっています。
昨日、3月の日銀短観が発表されました。日本の上場企業の業績動向をよく表すことで注目されている大企業DI(業況改善指数)は、以下の通り、製造業・非製造業ともに改善しました。
日銀短観で示される大企業製造業・非製造業DIの推移:
2012年3月―2017年3月
製造業・非製造業とも、DIは高い水準にあり、大企業の業況は良好と考えられます。なお、業種別で、DIが特に高い業種と低い業種を見ると、以下の通りです。
大企業・製造業の業種別DI
DIが高い主な業種 | 2017年3月 |
---|---|
汎用機械 | 25 |
非鉄金属 | 23 |
食料品 | 20 |
自動車 | 18 |
DIが低い主な業種 | 2017年3月 |
---|---|
造船・重機 | ▲ 21 |
鉄鋼 | 0 |
大企業・非製造業の業種別DI
DIが高い主な業種 | 2017年3月 |
---|---|
建設 | 43 |
不動産 | 35 |
通信 | 31 |
対個人・対事業所サービス | 30 |
DIが低い主な業種 | 2017年3月 |
---|---|
電気・ガス | 5 |
小売 | 5 |
(2)4月後半から始まる3月期決算発表に注目
大企業DIは高い水準にあり、2017年3月期決算は好調と考えられます。楽天証券経済研究所では、終わったばかりの前期(2017年3月期)の最終損益は約10%の増益であったと推定しています。また、今期(2018年3月期)、最終損益はさらに約13%増加すると予想しています(前提とする為替レートは1ドル110円)。
東証一部上場3月期決算主要841社の業績(前年比)
決算期 | 実績/予想 | 経常利益 | 最終損益 |
---|---|---|---|
2016年3月期 | 実績 | ▲ 1.3% | ▲ 4.7% |
2017年3月期 | 会社予想(5月時点) | + 0.6% | + 9.8% |
会社予想(12月時点) | ▲ 4.0% | + 4.2% | |
会社予想(4月3日時点) | ▲ 0.9% | + 8.5% | |
楽天証券予想 | + 1.8% | + 9.6% | |
2018年3月期 | 楽天証券予想 | + 9.4% | + 13.2% |
(出所)楽天証券経済研究所が作成。IFRS・米国基準採用企業は連結税前利益を経常利益とみなして集計。
ただし、日本企業は、期初は低め低めに業績予想を出す傾向があります。2017年3月期決算で発表される2018年3月期の業績予想は、上記の楽天証券予想より、かなり低くなると考えられます。
(3)政治不安が上値を抑える状況が続く
トランプ米大統領への期待が低下し、トランプ不安が広がっていることが、日本株の上値を抑えています。東アジアの地政学リスク(米中対立・北朝鮮の暴走)の高まりも、外国人投資家から見て、日本株が敬遠される要因となっています。
欧州の政治不安も、円高につながるリスクがあり、警戒が必要です。欧州各国で反移民・反EUを唱える極右・極左勢力が躍進していることが懸念されます。また、森友学園をめぐる日本の政治不安も、日本株を抑える要因となっています。
今しばらく、景気回復と政治不安の綱引きで、ボックス相場が続きそうです。