今日のポイント
- トランプ大統領は31日、日本を円安誘導国と批判。これを受けて、1ドル112円台へ円高が進んだ。米景気が好調で、米利上げが見込まれていることが、ドルを支えているが、トランプ不安が円高要因となっている。
- 足元発表中の10-12月決算は好調で、通期(2017年3月期)業績予想の上方修正が増えている。
(1)トランプ大統領がついに日本を円安誘導国として批判
31日は、ついにトランプ大統領の、日本批判が復活しました。日本は長年にわたり円安誘導を行ってきたと、日銀が異次元金融緩和を行っていることに不満を表明しました。大統領当選後、直接、円安を批判したことはありませんでしたが、当選後、初めての円安批判となりました。トランプ発言を受けて、ニューヨーク市場で1ドル112円台へ円高が進みました。2月1日の日本時間午前7時時点では、1ドル112.83円となっています。
トランプ大統領が、「中東・アフリカの7か国からの米国入国を制限する」大統領令を出したことに対する批判はさらに強まっています。トランプ大統領が、大統領令を批判した、米司法省トップを解任したことが、批判を強める要因となっています。
大統領令が引き起こした混乱を嫌気し、31日のNYダウは107ドル安の19,864ドルと続落しました。
(2)今期業績予想の上方修正額が大きい会社
先週から、日本の10-12月期(2017年3月期の第3四半期)決算の発表が本格化しています。事前予想通り、通期(2017年3月期)の業績予想を引き上げる企業が多くなっています。
1月31日時点で、今期業績の会社予想を集計したものが、以下の表です。
東証一部上場 3月決算 主要841社の業績(前年比増減率)推移
決算期 | 実績/予想 | 経常利益 | 最終損益 |
---|---|---|---|
2016年3月期 | 実績 | ▲ 1.3% | ▲ 4.7% |
2017年3月期 | 会社予想(5月時点) | + 0.6% | + 9.8% |
会社予想(12月時点) | ▲ 4.0% | + 4.2% | |
会社予想(1月時点) | ▲ 2.9% | + 5.5% | |
楽天証券予想 | + 0.9% | + 9.6% | |
2018年3月期 | 楽天証券予想 | + 7% | + 9% |
今期業績(会社予想)は5月から12月まで、下方修正が続きました。当初0.6%経常増益、9.8%最終増益が予想されていましたが、12月28日時点では、4.0%経常減益、4.2%最終増益の見込みとなっています。円高急進が、下方修正の主因です。
10-12月決算の発表が始まった1月からは、円安進行と、米国・中国の景気回復を受けて、業績予想の上方修正が増えています。1月末では、2.9%経常減益、5.5%最終増益の見込みとなっています。今後、10-12月決算の発表がさらに進めば、上方修正がもっと増えると思います。
楽天証券では、下半期の平均為替レートが1ドル113円となることを前提に、今期はほぼ5月時点の会社予想並みの利益(0.9%経常増益、9.6%最終増益)に着地すると予想しています。続く来期(2018年3月期)も、世界景気回復と円安の恩恵で、業績拡大が続くと予想しています。
(3)今期業績予想の上方修正額が大きい会社
10-12月決算の発表時に2017年3月期の経常利益(会社予想)を増額した企業、増額幅の大きい30社
コード | 銘柄名 | 増額 修正幅 | 修正後の今期経常(会社予想) | 前年比 |
---|---|---|---|---|
6762 | TDK | 1,370 | 2,120 | 131% |
6988 | 日東電工 | 160 | 850 | -17% |
9532 | 大阪瓦斯 | 150 | 930 | -31% |
6954 | ファナック | 124 | 1,546 | -33% |
9766 | コナミHLDG | 110 | 350 | 47% |
4568 | 第一三共 | 100 | 1,100 | -10% |
7205 | 日野自動車 | 100 | 690 | -28% |
5333 | 日本碍子 | 100 | 640 | -21% |
7276 | 小糸製作所 | 90 | 920 | 9% |
7012 | 川崎重工業 | 80 | 330 | -65% |
6645 | オムロン | 75 | 625 | -5% |
6594 | 日本電産 | 70 | 1,400 | 17% |
6770 | アルプス電気 | 65 | 410 | -18% |
8036 | 日立ハイテクノロジーズ | 60 | 520 | 7% |
4217 | 日立化成 | 55 | 545 | 2% |
6816 | アルパイン | 51 | 59 | -4% |
1944 | きんでん | 50 | 355 | 0% |
4204 | 積水化学工業 | 40 | 920 | 13% |
6724 | セイコーエプソン | 40 | 630 | -31% |
2281 | プリマハム | 36 | 150 | 71% |
6506 | 安川電機 | 30 | 315 | -12% |
7230 | 日信工業 | 25 | 115 | 55% |
6135 | 牧野フライス製作所 | 23 | 84 | -45% |
上方修正額トップはTDKです。今期の連結税前利益予想を1,370億円増額しました。ただし、それは高周波部品の会社持分の51%を米クアルコム社に譲渡することに伴い、売却益1,490億円を計上する一過性の要因によるものです。事業譲渡は、1月13日に公表済みで、今回の利益の増額修正にサプライズはありません。
私が注目しているのは、米国および中国で設備投資が増勢に転じ、日本の設備投資関連株の業績モメンタムが改善していることです。上記のリストでは、以下の企業に注目しています。
ファナックは、工作機械の心臓部であるCNC装置が中国・アジアで上向いてきたこと、産業用ロボットも米国・中国で回復しつつあることが、注目できます。
オムロンは、中国で制御機器の受注・売上高が伸びてきたことが注目できます。安川電機は、中国市場を中心に、スマホ・自動車向けの制御機器が伸びています。牧野フライスは、米国および中国で受注が伸びてきています。