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大統領がでたらめやっても何とかなるほど米経済は好調
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

大統領がでたらめやっても何とかなるほど米経済は好調

2017/1/31
トランプ大統領が、保護主義・自国中心主義の大統領令を乱発していることが、世界経済および株式市場にとって重大なリスクになっている。トランプ大統領の経済政策は、短期的に米景気を強くするものの、長期的には米経済を弱体化させると考える。
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執筆:窪田真之

今日のポイント

  • トランプ大統領が、保護主義・自国中心主義の大統領令を乱発していることが、世界経済および株式市場にとって重大なリスクになっている。トランプ大統領の経済政策は、短期的に米景気を強くするものの、長期的には米経済を弱体化させると考える。
  • トランプリスクは大きいが、2017年前半は世界経済の回復の勢いが強く、世界的な株高が続くと予想している。年後半に、世界的な株安になるリスクがあると見ている。

(1)「入国制限」で全米を混乱に陥れたトランプ大統領

大統領選中に、反グローバル・反資本主義の暴言を乱発して、世界を驚かせたドナルド・トランプ氏が、大統領就任後に過激発言をエスカレートさせています。大統領に当選した直後から、世界的に株が上昇して「トランプ・ラリー」と呼ばれるようになったことから自信を深めたのでしょうか、大統領令を乱発して、暴言を実行に移そうとして世界中に波紋を広げています。

トランプ大統領は、メキシコを含むNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを指示したことに加え、メキシコ国境に壁を築く大統領令にもサインしました。隣国同士は、どこでもさまざまな対立を抱えているものですが、深い経済関係で結びついたメキシコに対して、これほど一方的に敵意を示すのは常軌を逸しています。

27日に出した「テロ懸念国から米国への入国を制限する」大統領令も、全米に混乱を引き起こしました。この大統領令は、イラン・イラク・リビア・ソマリア・スーダン・イエメンおよびシリアから来た人々の米国への入国を制限する内容です。この7カ国をテロ懸念国と指定し、入国審査の厳格化によってテロリストを完全に排除できるようになるまで、米国に入国させないとしました。シリア以外の6カ国については6ヶ月間、シリアからの来訪者は無制限に入国禁止としました。

突然の大統領令を受けて、米国の空港で拘束されたり、米国行きの飛行機への搭乗を拒否されたりした人が、280人以上に上りました。これに対し、全米各地の空港で抗議デモが広がっています。正式なビザを持っている者まで突然拘束するやり方に対し、各地の司法長官から、「大統領令は憲法違反」との意見も出ています。

(2)米国を弱体化するトランプノミクス、4つの大問題

トランプ氏が打ち出す経済政策は、短期的に米景気を強くする可能性はあるものの、長い目で見ると、いずれも米経済を弱体化するものです。以下の4つの問題点が挙げられます。

  • 景気回復期に大規模景気刺激策

トランプ大統領がまだ何もしないうちに、米景気は回復色を強めています。にもかかわらず、トランプ大統領はここから大規模な公共投資を発動する方針です。

大規模景気刺激策には副作用が多いので、深刻な景気悪化局面以外は回避すべきです。大統領の人気取りのために景気回復期に大規模公共投資をやれば、後に、経済効率の悪化と財政赤字の拡大を生じます。さらに、大規模な「財政のガケ」が米景気を悪化させる問題もあります。

大規模公共投資は、始める時は景気を上向かせて歓迎されるが、後に反動で景気を下押しする問題があります。それは、日本や中国が経験してきたことです。たとえば、10兆円の公共投資をやれば、その年の景気にはプラスに働きますが、次年度以降にはマイナス効果が及びます。毎年10兆円の公共投資をやり続けることはできず、公共投資額を減らさざるを得なくなるからです。

オバマ前大統領も、就任直後は公共投資を増やして米国民に喜ばれましたが、後に財政のガケが景気に悪影響を及ぼす時には、米国民から嫌われました。

中国は、リーマンショック後の2009年に、4兆元(約66兆円)の公共投資を実施しました。それで、中国景気は急回復し、世界的な景気回復を牽引しました。この時は、中国の4兆元投資が世界経済を救ったと言われました。

ただし、中国は、この時に膨らんだ非効率な投資の整理と、財政のガケに、その後長く苦しむことになりました。4兆元の投資をやって良かったといえたのは、当初1年だけでした。

トランプ氏が公共投資の大判ぶるまいをすれば、後に禍根を残すことになるでしょう。トランプ大統領の考えに従うならば、米国は「メキシコ国境の壁建設」や「老朽インフラの更新」などに巨額の資金を投入することになります。新たな付加価値を生まない非効率な投資が増え、短期的に米景気を押し上げるものの、後に経済効率の悪化と財政のガケを残すことになります。

  • 保護貿易主義

米国はかつて長い間、鉄鋼産業を保護していました。その結果、米国の鉄鋼産業は競争力を失い、米国の自動車産業は高い鉄鋼製品を買い続けなければならなくなりました。

鉄鋼産業の例に限らず、競争力の弱い産業を保護するとさらに弱くなり、保護するためのコストがどんどん膨らむのが常です。

未来の技術を育てるために、技術開発企業を支援することが必要な場合はあります。ただし、トランプ大統領がやろうとしていることは、技術革新に遅れた企業を温存するための保護主義であり、長い目で見て、米経済を弱体化させると考えます。

  • 資源開発を重視、自動車の環境規制緩和を画策

トランプ大統領は、米国内で環境規制を緩和することを画策しています。もし実現すると、米国の自動車メーカーは、環境技術の開発コストや規制の束縛から解放され、燃費の悪いパワフルな大型車をたくさん売ることができるようになります。そうなると、一時的に米自動車メーカーの業績を改善する効果があります。

ただし、長い目で見ると、自動車産業を含む米国製造業の競争力を弱めることになります。米国で、省エネ・環境技術の開発が進まなくなるからです。今でも、省エネ・環境技術で水をあけられている日本やドイツとの技術格差は一段と開くことになるでしょう。

トランプ大統領は、環境規制によって認可が出なくなっている国有地でのシェールオイル開発をどんどん認可すると述べています。そうなると、米国の資源産業は一段と栄えることになるでしょう。

ただし、その先に問題が待っています。世界で「資源の呪い」と言われている現象があります。資源が発見され、資源産業が栄える国で、製造業が廃れていく現象を、資源の呪いと呼んでいます。資源で安易に稼げるようになると、雇用や技術開発が資源産業に流れるようになるからです。トランプ氏の政策で、米国の資源産業は一段と栄えるでしょうが、長い目で見て、米国の製造業を衰退させる要因となるでしょう。

  • 防衛・外交面で強硬策、移民排除

トランプ大統領は、米国第一主義のもと、米国にとって不都合な国に、強硬策を取る方針です。米国に刺激されて、米国と同様に、自国中心主義に舵を切る国が世界中に増えています。すべての国が自国中心で動くことにより、すべての国がダメージを受けるようになるリスクが高まっていると思います。

(3)それでも、短期的に世界的な景気回復が続くと考える理由

トランプノミクスの長い目で見た、大問題を考えると、暗たんとした気持ちになります。ただし、それは、少なくとも1年以上たってから、起こることです。短期的には、米景気は、順調に回復軌道をたどり、世界景気も回復歩調が続くと考えています。世界景気は今、資源価格の暴落ショックから立ち直り、資源安メリットをフルに享受する好循環に入りつつあると考えています。

私の2017年の日経平均のイメージは、前半高・後半安です。現時点では、トランプリスクを警戒しつつも、景気・企業業績回復の波に乗っていく局面と考えています。足元、発表になりつつある、10-12月決算内容は良好で、目先、日本の回復に、世界の投資家の目が集まると思います。

ただし、トランプ大統領が次々と、世界経済を破壊する大統領令を乱発し、世界中に不安が広がり、急速な円高が進むと、世界的な株安につながるリスクもあります。30日の欧米市場は、トランプ大統領の出した入国制限の大統領に世界中で抗議活動が広がったことを嫌気して、下落しました。今日の日経平均は、下落が見込まれます。

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