(3)JR九州の2つの強み

将来に向けて期待される強みが2つあります。1つは、鉄道以外の事業で、安定的に高収益をあげる力があることです。駅ビル不動産事業は、前期に営業利益で204億円を稼ぐ高収益事業です。さらに大型商業施設の運営、ホテル、建設など、幅広い多角化事業で、毎年、安定的に利益を稼ぎ続けています。

JR九州のもう1つの強みは、九州新幹線および観光列車事業が、アジアからの観光客増加で、好調なことです。不振だった鉄道事業に、ようやく成長の芽が出てきています。

先に上場したJR3社(東日本・東海・西日本)は、いずれも新幹線が成長事業で最高益を更新する原動力となってきました。これに対し、JR九州は、当初、新幹線を保有していなかったため、成長の元がありませんでした。2011年に九州新幹線が全線開通してからは、新幹線に新たな業績拡大の期待がかかっています。加えて、「ななつ星」などの豪華観光列車や、D&S列車(デザイン&ストーリー列車:観光用にさまざまな趣向を凝らした列車)が観光客に人気を博していることも追い風です。

ところで、JR九州は、新規上場時に政府(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)の保有株をすべて売り出します。上場と同時に、完全民営化が一発で実現します。これでJR九州の経営を縛る「JR会社法」の適用から外れることができます。経営自由度が高まることにより、JR九州の積極経営が加速することが期待されます。

(4)先に上場しているJR3社との比較

JR九州(証券コード番号9142)は、成長力では、JR東日本(9020)・JR東海(9022)・JR西日本(9021)に見劣りします。九州に観光ブームの追い風が吹いているとは言え、乗客が減り続けている赤字ローカル線を抱えていることが、足を引っ張ります。

ただし、その分、配当利回りで見ると、JR九州に分がありそうです。JR九州の公募価格は決まっていませんので、あくまでも目論見書の想定価格2,450円で計算したものですが、年率の予想配当利回り【注】は、約3%となります。JR3社の配当利回り(東日本1.4%、東海0.7%、西日本2.2%:9月27日時点)よりも、高くなりそうです。

ただし、同じ民営化株では、日本たばこ産業(2914)(配当利回り3.1%)、NTTドコモ(9437)(配当利回り3.0%)のように、利回りの高いものもあります。

【注】JR九州の年率の予想配当利回り

JR九州は当面、連結配当性向を30%とする方針を表明しています。言い換えると、毎年の連結純利益の30%を、配当金として株主に支払う方針です。ただし、今期(2017年3月期)だけは、連結配当性向を15%とする予定です。上場日(10月25日)から、決算期末(3月末)まで5ヶ月強しかないからです。

JR九州が今期末に予定する1株当たり配当金は、37.5円です。JR九州の想定価格2,450円に対し、1.53%となります。半期で1.53%の配当を出すわけですから、年率換算すると、約3%の配当を出すことになります。

(ご参考)9月中間配当について

今日(9月28日)、9月に中間決算を迎える銘柄を購入しても、9月中間配当金を受け取る権利を得ることはできません。9月中間配当金を受け取る権利を得るためには、昨日(9月27日)までに、購入する必要がありました。

だけは12月決算ですが、その他の銘柄は3月決算で、9月に中間決算を迎えます。日本たばこ産業(2914)本日のレポートで紹介した銘柄で、