(6)預貸率(預金のうち貸金に回す比率)の低い金融機関にはダメージ大

地方の中小金融機関には、有望な貸出先がなく、集めた預金のほとんどを国債で運用しているところもあります。そのような金融機関は、長期金利の低下で大きなダメージを受けます。

預金を集めて国債を買って得られる利ザヤは、長短金利差だけで構成されていることになります。期間の短い預金で集めた資金を、期間の長い国債で運用していることだけが、利ざやの源泉ということになります。長期金利が0.06%まで下がったことで、新規に投資する国債では経費をまかなうことができません。過去に購入した金利の高い国債が残っている間は、一定の利ざやが得られますが、低金利が長期化すると、利ザヤ消滅のリスクが高まります。

ゆうちょ銀行(7182)は、これから運用の多様化、業務の多様化をはかっていくことで収益拡大を狙いますが、これまで貸付をほとんど行わず、ほとんど国債中心に運用してきたツケはかなり重いと考えられます。長期金利の低下が急激だっただけに、来期以降、収益の縮小がしばらく続くリスクが高まりました。

(7)業務の多様化が進んでいるメガ銀行へのマイナス影響は限定的

国内の利ざや縮小が経営にどれだけ大きな影響を及ぼすかは、銀行によって異なります。収益の多様化が進んでいる銀行ほど、影響は相対的に小さくなります。収益の多様化が進んでいない銀行には、重大な影響が及びます。

一般的に規模の大きい銀行ほど、収益の多様化が進んでいます。私は、3メガ銀行へのマイナス影響は限定的で、昨日の株価急落は過剰反応だと思っています。

3メガ銀行は、利ざやが相対的に厚い海外での与信を拡大しており、海外事業が成長を牽引しています。国内でも、伝統的商業銀行業務のほかに、証券・信託・リース・消費者金融などに収益源を多角化したユニバーサル銀行となっています。マイナス金利が導入された影響で、来期減益になるリスクは高まりましたが、それでも高収益を維持できると考えています。減配が必要になるような収益の悪化がないならば、配当利回りの高まった今は、投資魅力が高いと考えられます。

(8)損害保険株に改めて注目

損害保険は、原則1年契約です。生命保険のように20年30年と続く契約はほとんどありません。生命保険のような長期固定負債をかかえているわけではありません。したがって、日銀がマイナス金利を導入して、長期金利が低下しても、運用の逆ザヤが発生する懸念はほとんどありません。

日経平均が上昇する時、損保株の値動きが良くなることが過去によくありました。保有する資産(株や不動産)の時価が上昇することが意識されるからです。損保株の短期的な値動きは、保険業の損益よりも、保有する株や不動産の値動きで決まることが多いのです。今後、日経平均が底打ちして上昇が続くと考えるならば、ここから損害保険株への投資が面白くなります。

本業(保険業)の損益も、もちろん重要です。短期的な株価への影響は必ずしも大きくありませんが、長期的な株価変動には影響します。

日本の損保会社は長年にわたり、自動車保険の赤字に苦しんできました。ところが、近年、損益改善のために料率引き上げを実施した効果で、自動車保険は改善しました。つまり、本業損益は改善しつつあります。

私は、海外での事業拡大にも成功している東京海上HLDG(8766)に注目しています。同じ保険でも、生保株への投資は避けるべきですが、損保株への投資妙味は増していると考えています。

(9)その他金融(リースや消費者金融など)も金利低下で恩恵を受ける

その他金融業には、金利低下でメリットを受ける会社が多いです。たとえば、中小企業向けの小口リースを中心に展開しているリース会社は、金利低下で恩恵を受けます。リースの利ざやは、以下の3つから構成されます。

(リース業利ざや)=(長短金利差)+(信用力差)+(サービス料)

リコーリース(8566)は、複写機等を主に中小企業にリ-スしています。リース料には、事実上のサービス料が含まれています。トナーの補充やメンテナンスに、たびたび往訪することが、リース収益の根底にあると言えます。同様に、オリックス(8591)も、中小企業向けのリースが得意なので、金利低下のマイナスは小さいと考えられます。一方、大企業向けのファインナンシャル・リースは、マイナス金利の導入でダメージを受けます。リース業でも、中小企業向けのオペレーティング・リース比率が高いところほど、収益は安定的といえます。

消費者金融は、先ほど、話したとおり、金利低下がプラスに寄与すると考えられます。高水準の過払い利息返還請求が続く間は投資できませんが、利息返還請求が今後大きく減少に向かうという前提にたつならば、投資することも可能です。