22日夜、ECB(欧州中央銀行)は、事前予想通り、大規模な資産買い入れプログラム(追加金融緩和)を発表しました。内容の詳細も公表されました。毎月600億ユーロの資産買い入れを3月から開始して、来年9月まで続けるとしました。買い入れ規模は、総額1兆1,400億ユーロとなる見込みです。大規模緩和を好感して欧米株式は軒並み上昇しています。為替市場では、ユーロが下落、ドルが上昇しました。ドル円為替レートは、日本時間6時現在、118.60円です。今日の日本株は、欧州の緩和好感で上昇が見込まれます。

さて、今日は、資源安の日本企業に与える影響について考えを書きます。

2014年から15年にかけて、原油・石炭・LNG・石炭・鉄鉱石・銅・ニッケルなど、日本が輸入する資源の価格が下げ足を速めています。資源開発の技術革新によって供給が拡大した影響が響いています。

輸入原料の価格低下は日本経済に追い風です。ただし、影響の出方は、産業別・企業別に異なります。今日は、資源安がメリットになる株と、デメリットになる株について、考え方をまとめました。

(1)資源安でメリット・デメリットを受ける産業

資源安メリットは、幅広い産業に及びます。今日は、直接受ける影響が大きい産業に話しを絞ります。

直接メリットを受ける代表的な産業 デメリットを受ける産業
空運:ジェット燃料コスト低下 石油:在庫評価損・資源事業の収益悪化
海運:燃料(バンカーオイル)価格低下 鉱業:資源事業の収益悪化
タイヤ:原料(天然ゴム・合成ゴム)価格低下 非鉄:銅・ニッケル等資源事業の収益悪化
鉄鋼:原料(鉄鉱石・石炭)価格低下 大手総合商社:資源事業の収益悪化
農薬:原料価格低下

(楽天証券経済研究所が作成)

原燃料コストが低下しても、それが利益拡大につながらない産業もあります。原燃料価格が下がると、同時に製品価格(料金)も下がるからです。コスト低下分がすべて、製品価格(料金)低下で消えてしまう産業では、メリットは残りません。

たとえば、日本の石油化学産業は過当競争状態にあり、原料価格が下がる時は、製品価格が同時に大きく下がる傾向があります。したがって、石油化学産業は、原油安でメリットを受ける産業とはいえません。

間接的メリットを受ける産業は幅広く存在しますが、ここでは議論の対象としません。たとえば、物価が下がって消費が回復すれば小売産業にメリットがありますが、ここでは議論の対象に含めません。

(2)メリット・デメリットを受ける産業について説明した過去のレポート

(3)天然ゴム市況下落のメリットを受けるゴム(タイヤ)産業

今日は、ゴム(タイヤ)産業について説明します。まず、天然ゴム市況の推移を見てください。

天然ゴム市況推移:シンガポール商品取引所のRSS先物価格

天然ゴムは、ゴムの木の樹液から作られるので、天然資源ではなく農業製品です。ただし、過去20年の市況を見ると、天然資源と同じように急騰急落を演じています。

21世紀に入って世界の自動車保有台数の拡大により、タイヤに使うゴム需要も急拡大しました。ところが、天然ゴムの生産は急には増やせないため、ゴム市況は急騰しました。

トレンドが変わったのは2010年以降です。需要の伸びが鈍化したことに加え、東南アジアなどで供給が増加したため、一転して供給過剰となりました。ゴムの木は30年近く樹液が取れるので、ひとたび供給が増えると、簡単には減らせません。供給過剰を背景に、2010年以降は、ゴム市況の下落が続いています。

タイヤ原料には、天然ゴム以外に、石油由来の合成ゴムも使われます。合成ゴム市況も、原油(ナフサ)市況に連動して急騰・急落しています。

ブリヂストン(5108)など日本の大手タイヤメーカーは、現在、円安・原料安・米景気好調のトリプルメリットを受けて業績が好調です。もちろん、原料が下がれば時間を経て、製品価格にも下げ圧力は働きます。特に、新車用に自動車メーカーに納めるタイヤ価格には価格下げ圧力がかかります。ただし、古くなったタイヤの交換に使われる市販(更新)用タイヤは、価格下落圧力が相対的に弱く、収益性が改善します。

日本のタイヤメーカーにとって脅威になっているのは、米国で安価な中国製タイヤの販売が拡大していることです。ただ、日本のタイヤメーカーはその影響をまだ大きくは受けていません。品質で差別化ができているからです。

自動車タイヤでは、価格だけでなく、安全性や耐久性も重視されます。日本メーカーのタイヤは、品質で優位にあり、米国で高い支持を得ています。

タイヤ株、投資の参考銘柄

コード 銘柄名 株価:円 連結PER:倍 連結PBR:倍 配当利回り
5101 横浜ゴム 1,136 9 1.4 2.3%
5105 東洋ゴム工業 2,680 12 2.3 1.5%
5108 ブリヂストン 4,622 13 2.0 1.7%
5110 住友ゴム工業 1,850 10 1.5 2.2%
5191 住友理工 878 30 0.5 2.1%

(楽天証券経済研究所が作成)