原油急落の影響が、国際商品市況全般に広がってきました。13日にロンドン金属取引所(LME)の銅3カ月ものが1トン5,860ドルと節目の6,000ドルを割り込んだことを受けて、14日の東京株式市場では銅関連銘柄および原油関連銘柄の下落率が大きくなりました。

(1)銅が急落

原油下落に引っ張られるように、銅やニッケルなど、商品市況が全般に下げ足を速めています。

 

LME銅3カ月もの価格推移:2014年1月~2015年1月13日

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

(2)銅関連企業の株価も下落

銅急落を受けて、14日の東京株式市場では、銅関連銘柄が急落しました。

 

銅鉱山への投資額が大きい日本企業の14日の株価変動

コード 銘柄名 業種 14日終値:円 前日比:円 下落率
5713 住友金属鉱山 非鉄 1625.5 -143 -8.1%
5706 三井金属鉱業 非鉄 261 -14 -5.1%
5020 JX HLDG 石油 420.4 -17.4 -4.0%
8053 住友商事 商社 1138.5 -35.5 -3.0%
8002 丸紅 商社 669.1 -16.5 -2.4%

銅鉱山への投資額が大きい会社が多いのは、業種でいうと非鉄と商社です。銅精錬事業(銅鉱石を仕入れて精錬する事業)はかつて非鉄大手企業の主力事業の1つでした。2000年代に入って、世界的に銅鉱山の力が強くなり、精錬マージン(利ざや)の縮小が続いたことから、各社とも精錬事業を縮小し、鉱山への開発投資を増加させていきました。

一方、大手総合商社は、海外で積極的にさまざまな資源権益の取得を行ってきました。LNG・原油・石炭・銅・鉄鉱石などへの投資が膨らんでいます。

そういう流れの中で、住友金属鉱山(5713)は住友商事(8053)と共同で、チリのシエラゴルダ鉱山に大型投資を実行しました。その開山式が昨年10月に行われたばかりです。ただ、鉱山開発中に銅価格の下落が続いたため、鉱山収益が今後どうなるか懸念があります。

JX HLDG(5020)は、子会社のJX日鉱日石金属を通じて、三井金属鉱業(5706)とともに、チリのカセロネス鉱山に大型投資を行っています。また、丸紅は、チリのエスペランサ鉱山などに大型投資を行っています。

(3)資源価格上昇のスーパーサイクルは終焉か

最近、原油急落が話題になりましたが、価格下落が目立つのは原油だけではありません。近年、銅・ニッケル・鉄鉱石・石炭など、商品市況は軒並み大きく下げています。21世紀に入ってから続いてきた、資源価格上昇のスーパーサイクルは、終わったとの見方が増えています。

ここで、銅価格の動きを1998年までさかのぼってまで遡って、振り返ります。

 

 

LME銅地金価格推移:1998年1月~2015年1月12日

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

銅価格は、2000年代に入ってから、2010年まで急騰しました。途中、2008年にリーマンショックが起こって一時的に急落していますが、それを除けば、2010年まで上昇が急でした。これが商品市況上昇のスーパーサイクルと言われているものです。銅だけでなく、さまざまな天然資源価格が一斉に急騰しました。

新興国の成長による需要増に供給が追い付かなかったことが、このスーパーサイクルを引き起こしました。ところが、2011年以降は、価格下落が続いています。

新興国(特に中国)の景気停滞で、需要の伸びが鈍化したことに加え、供給が大幅に増えたことが、価格下落につながっています。

(4)鉱山開発の技術革新によって、天然資源の供給が飛躍的に拡大

近年のめざましい技術革新によって、これまで供給を増やすことが難しいと考えられてきた天然資源の供給が大幅に増えるようになりました。ガスや原油は、これまで採掘することができなかった非在来型(シェール)ガス・オイルの増産によって供給過剰に陥りました。銅も金もレアメタルも、新しい技術を使ってこれまで考えられていた以上に増産できるようになりました。

天然資源でも、ハイテク製品と同じように大量生産によって価格を大きく下げることが可能になったのです。銅市況の急落は、日本企業がチリで大型の銅山開発に成功し、生産を始めたこととも関係しているわけです。

(5)日本は、資源価格の全面安で大きなメリットを得る

短期的には、資源関連企業の業績下方修正によってネガティブな空気が広がりますが、長期的には、資源急落は日本経済に強い追い風となります。日経平均が、資源安を嫌気して下がっている今は、買い場との判断を継続します。