今日のポイント
- 営業利益率が高い銘柄には、差別化された製品・サービスを有する企業が多い。好不況にかかわらず、安定的に利益率の高い銘柄が注目できる。
- 営業利益率は、業種によって水準が異なる。何%以上あれば、競争力が高いかは、業種によって異なる。1つの目安として、長期投資対象を選別する際、「営業利益率2桁以上」を条件として選ぶ方法は有効と考える。
本レポートでコメントする銘柄: 東証一部上場12月決算、営業利益率12%以上から選んだ6銘柄
コード | 銘柄名 | 21日株価 | 配当利回り | 営業利益率 | 最低投資金額 |
---|---|---|---|---|---|
2914 | 日本たばこ産業 | 4,045 | 3.5% | 26.5% | 404,500 |
4704 | トレンドマイクロ | 5,860 | 2.4% | 25.5% | 586,000 |
4746 | 東計電算 | 2,828 | 2.5% | 20.1% | 282,800 |
6464 | ツバキ・ナカシマ | 2,155 | 3.0% | 19.7% | 215,500 |
3405 | クラレ | 2,083 | 2.0% | 13.2% | 208,300 |
5108 | ブリヂストン | 4,828 | 2.9% | 12.5% | 482,800 |
(1)営業利益率の高い銘柄を重視する理由
今日は、12月決算で、予想配当利回り2%以上、営業利益率12%以上の銘柄から、投資の参考銘柄を、ご紹介しました。
私は25年間、日本株のファンドマネージャーをやってきて、東証株価指数を大きく上回るパフォーマンスを得ましたが、銘柄を選別する時、営業利益率をよく見ていました。営業利益率は、長期投資する銘柄を選ぶ際に、とても重要な指標の1つと考えています。
世間では、ROE(自己資本利益率)を重視して銘柄を選別するのが、はやっています。ROEの高さも、重要な指標の1つには違いありませんが、私は、営業利益率の方がはるかに重要だと思っています。銘柄選別において、ROEを話題にする人が多い割りに、営業利益率を話題にする人が少ないのを不思議に思っています。
ROEの話をすると複雑になり過ぎるので、今日は、営業利益率の大切さだけお話しします。ひとことで言うと、営業利益率には、会社がやっているビジネスの競争力が表れます。営業利益率の高い会社には、差別化された製品またはサービスがあり、業界シェアが高い場合が多いと言えます。逆に、営業利益率の低い会社は、差別化できていない分野で、過当競争におちいっている場合が多いと言えます。
(2)営業利益率は、安定的に高いことが望ましい
日本では、一般的には営業利益率が10%以上あれば、高い方といえます。ただし、営業利益率は、業種によって水準が異なるので、何%以上あると競争力が高いと、単純に言うことはできません。一時的に利益率が高くなっているだけの銘柄は評価できません。
景気敏感業種(鉄鋼や半導体製造装置など)には、好況時に、利益率がきわめて高くなるが、不況時に赤字になる銘柄もあります。そういう銘柄は、好況時の利益率が高くても評価はできません。
不況になっても高い利益率を維持できる銘柄も多数あります。NTTドコモ(9437)や、東京ディズニー・リゾートを運営しているOLC(4661)のように、不況時でも高い利益率を維持できる会社は、独占的な地位を有し、競争力が高い銘柄と言うことができます。
今日は、12月決算から、選んだ銘柄をご紹介しました。6月に中間決算を迎える銘柄です。冒頭の表にあげた銘柄のうち、トレンドマイクロと東計電算は、現時点で中間配当を出す予定がありませんが、それ以外は、6月27日(火)までに購入すると、6月中間決算の配当金を受け取る権利が得られます。
(3)冒頭で紹介した銘柄についてのコメント
営業利益率の高い会社には、何かキラリと光るものがあると言えます。
日本たばこ産業
日本で喫煙者が減少していることが不安材料となっていますが、タバコは、認可を受けた企業だけができる独占的事業であり、高い利益率が得られます。独占的な事業では、一方的に値上げを宣告すると、社会的な批判を受けることが多いのですが、タバコだけはその例外になっています。喫煙者が減少する中で、値上げを続けることで、高い利益を維持してきています。さらに、海外で積極的にM&Aを実施し、海外で利益を成長させていることが投資魅力になっています。最近の話題として、電子タバコで出遅れ、国内で外資にシェアを奪われていることが、不安材料となっています。将来、煙の出ない電子タバコが主流になる可能性が高く、この分野での巻き返しが待たれるところです。
トレンドマイクロ
インターネットのセキュリティ対策でリーダー的企業。「ウイルスバスター」など販売。個人向けは競争が激化して、成長が頭打ちだが、最近、法人向け事業が、大きく伸び始めた。2017年12月期の営業利益(会社予想)は、前期比9%増の375億円と、最高益を更新する見込み。
東計電産
クラウド・サービスが成長期に入っている。2017年12月期の営業利益(会社予想)は、前期比10%増の26.6億円と、最高益を更新する見込み。
ツバキナカシマ
ボール・ベアリング用の鋼球で高い技術力を結うを有する。
クラレ
ニッチ商品を次々と生み出し、成長させてきた。
ブリヂストン
タイヤで世界首位。米国で高いブランド力を持ち、高収益をあげている。中国製の安価なタイヤとの競争があるが、ブリヂストン・タイヤは安全性・耐久性で信頼高く、値崩れが起こりにくい。新車用タイヤは利益率が低いが、更新タイヤが利益率高い。更新タイヤは、好不況の影響が相対的に小さく、安定している。世界全体の自動車保有台数が伸びているので、更新タイヤの利益が安定的に伸びている。為替や、原料(天然ゴム)価格の変動の影響を受けて、大きく増減益することはあるが、長い目で見れば、安定的に高収益を稼ぐ体質。