執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 6日の日経平均は2万円割れ。1ドル109円台に入った円高を嫌気。トランプ不安と、米長期金利の上昇が鈍いことが、円高進行の原因と考えられる。
  • 日経平均は目先、業績拡大期待と円高不安の綱引きで、2万円前後の値固めか。

(1)一時1ドル109円台に入った円高を嫌気、日経平均は2万円割れ

6月6日の日経平均は、一時1ドル109.63円まで円高が進んだことを嫌気し、前日比190円安の19,979円と、2万円を割れました。なお、ドル円為替は、8日の日本時間6時50分現在、1ドル109.40円となりました。6日のCME日経平均先物(6月限)は、19,940円でした。

日本の景気・企業業績の回復色が強まってきていることを受けて、日経平均は2万円を回復しましたが、引き続き、円高が進む不安と、世界的な政治不安に上値を抑えられる展開が続いています。

企業業績拡大への期待があるので、日経平均の下値は堅いと思っていますが、円高不安・政治不安が残る現状から、今しばらく2万円前後の値固めが必要と考えられます。

(2)世界景気と、世界の政治不安に反応して動く日経平均

2016年以降の、日経平均の動きを振り返ると、世界の景気と政治に反応して動いていることがわかります。日本株は、世界景気敏感株であり、世界の政治不安敏感株であることがわかります。

世界景気と世界的な政治不安に反応して動く日経平均:2016年1月4日―2017年6月6日

(出所:楽天証券マーケットスピードより楽天証券経済研究所が作成)

世界景気が悪化し、世界的に政治不安が広がった2016年1-6月は、外国人投資家の売りで、日経平均は急落しました。一方、世界景気回復が始まり、世界の政治不安が緩和した2016年7-12月は、外国人投資家の買いで日経平均は急騰しました。

2017年に入り、世界景気の回復は続いていますが、世界の政治不安は拡大しているため、日経平均は景気回復期待と政治不安の綱引きとなりました。2月までボックス相場が続きましたが、3月に、政治不安が強まり、一時、下値を試しました。ただし、4月後半から、日本の景気・企業業績の回復色が強まったことを受け、日経平均は急反発し、2万円台を回復しました。

日本株を動かしているのは、外国人投資家です。世界景気が悪化すると、製造業・輸出産業の比率の高い日本株を、外国人が売ってきます。世界の政治不安が高まると、為替市場では、円が安全資産として買われ、円高に反応して、さらに外国人が日本株を売ってきます。

逆に、世界景気が回復し、世界の政治不安が緩和すると、円安が進み、外国人投資家が日本株を買ってきます。

(3)「政治不安指数」のように動いているドル円為替レート

最近のドル円為替レートを見ると、世界の政治不安指数のように動いています。政治不安が高まると、円高(ドル安)が進み、政治不安が低下すると、円安(ドル高)が進んでいます。

ドル円為替レートの動き:2016年1月4日―2017年6月6日

(出所:楽天証券マーケットスピードより楽天証券経済研究所が作成)

実際は、ドル円為替レートは、政治不安だけに反応して動いているわけではありません。日米金利差にも反応しています。2016年12月と2017年3月に米FRBが利上げを実施したことで、日米短期金利差が拡大したことは、円安を進める要因となっています。ただし、米国が利上げを実施している割には、米長期金利の上昇が鈍いため、日米長期金利差の拡大があまり進んでいません。

2017年に入り、日米金利差拡大期待はあるのですが、政治不安の高まりから、ドル円は、円高方向に動いています。それが、日経平均の上値を抑える要因となっています。

(4)目先の注目材料

6月8日(木)に予定されているコミーFBI前長官の議会証言が注目されています。ロシアゲート疑惑が深まり、トランプ政権の迷走が続くと、円高要因となります。ただし、疑惑が一段と深刻化することがなければ、安心感が広がります。

もう1つの注目材料は、6月13-14日のFOMC(米金融政策決定会合)です。利上げ実施は、ほぼ確実と見られていますが、それで利上げうち止め感が出ると、円高が進む可能性もあります。利上げが続く見通しが広がれば、円安が進む要因となります。