執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 年後半の日本株は引き続き、景気・企業業績の拡大(強材料)と、政治不安の拡大(弱材料)の綱引きとなる。
  • トランプ期待がトランプ不安に変わるリスク、世界中にポピュリズムが拡大するリスク、独裁国家(北朝鮮)の暴走リスク、東アジアの地政学リスクに注意が必要。

(1)政治不安が今年の重要テーマに

世界的な景気回復が続いています。日本でも、景気・企業業績の改善が続いています。景気・企業業績だけ見るならば、日経平均が年内に22,000円まで上昇することもあり得ると見えます。ただし、日経平均は上昇しても、年内は21,000円辺りが上限と私は考えています。

世界中で政治不安・地政学リスクが拡大しています。年後半、世界景気回復の勢いが衰え、政治不安が高まると、日経平均はピークアウトし、下落に転じる可能性があります。

年後半の日本株は、引き続き、企業業績の拡大(強材料)と、世界中の政治不安(弱材料)の綱引きとなるでしょう。政治不安が緩和する局面で上昇が見込まれますが、思わぬところで、ネガティブな政治イベントが起こり、円高株安に見舞われる可能性には、注意が必要です。

(2)注意を要する政治リスク

年後半にかけて、以下のリスクを心に留めておく必要があると考えます。

トランプ期待→トランプ不安に変わるリスク

米国で大統領支持率が一段と低下、トランプ大統領が、起死回生を狙って、対外的な強硬策を取るリスクを注意する必要があります。東アジアでの軍事的強硬策、対米貿易黒字国(中国・日本・メキシコ)への経済的強硬策、ドル高(円安)批判などが、潜在的なリスクとして意識されます。

欧州の政治リスク

仏大統領選は、親EU・国際協調主義のマクロン氏が勝利し、一安心となりましたが、これで、反EUの流れが変わったと考えるのは早計です。引き続き、EU加盟国で反移民・反EU勢力が拡大し、EU崩壊のリスクが高まる可能性があります。

欧州を含め、世界各国で、ポピュリズム(大衆迎合主義)が拡散していく流れは簡単には止まりそうにありません。欧州ポピュリズムは、さまざまな形で、極右・極左勢力に結束しつつあります。極右勢力は、対外強硬策を主張するため、地政学リスクの拡大を招き易いといえます。極左勢力は、資本主義の否定する政策を取るので、株式投資には逆風となります。

そうした状況が続く中、ブレグジット(英国のEU離脱)の条件交渉が進められていますが、困難を極める作業となっています。EUと英国がともに大きなダメージをこうむる「ハード・ブレグジット」になるリスクも警戒が必要です。

独裁国家の暴走リスク(北朝鮮)・東アジアの地政学リスク

今、世界中で、ポピュリズム(大衆迎合主義)が拡大する問題が続いていますが、その話しは、欧米など民主主義国家に限られます。社会主義国は、民主主義国家でない(普通選挙で国家代表を選ぶ仕組みがない)ので、ポピュリズムが拡散する余地がありません。

社会主義国では、独裁政権の暴走リスクが高まっています。それが世界的な地政学リスクの拡大につながっています。具体的には、北朝鮮で独裁政権が対外強硬姿勢を強めていく問題が起こっています。これに対し、米国が対外強硬策に転じているため、東アジアで、地政学リスクが高まっています。

社会主義国では、原則として私有財産が否定され、国家がすべての資産を保有しています。その国家を動かす権限が、共産主義政党に集中するため、独裁国家となりやすいと言えます。北朝鮮がその典型です。

中国は、北朝鮮のような独裁国家ではありません。ただし、中国共産党に権力が集中していることに不満が蓄積しています。それをそらすために、中国政府は、無理な景気拡大や対外強硬策を続けなくてはならない状態にあります。米国との対立が先鋭化するリスクには注意が必要です。

北朝鮮問題がいつまでたっても解決しないのは、中国が北朝鮮の民主化を望んでいないことが原因の可能性もあります。もし、金正恩政権が崩壊し、北朝鮮が選挙で国民の代表を選ぶ民主主義国家になると、中国は「民主化」が自国に波及することを心配しなければならなくなります。