執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 4月後半から外国人の買いが増加し、日経平均の上昇を牽引。政治不安の緩和で、リスク・オンの流れが出ている。
  • 企業業績に回復色が強まっており、年前半、日経平均は上昇基調を保つと予想。ただ、年後半、景気回復が織り込み済みとなるタイミングで、政治不安が蒸し返すと、下落に転じるリスクがある。

(1)外国人の売買で動く日本株

4月後半から、外国人投資家の買いが増加しています。日経平均は、外国人の買いによって高値を更新しました。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):2016年1月4日―2017年5月9日

(出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成)
(注:上のグラフの外国人売買で、棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買越、
下(▲の方向)に伸びているのは売越を示す)

日本株を動かしているのは、外国人投資家です。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売ってくる傾向があります。

2016年は年初から外国人の売りが急増し、日経平均は急落しました。2016年11-12月は、トランプ・ブームで日経平均が急騰しましたが、外国人の買いが上昇を牽引しました。

2017年に入ってから、外国人の買いが止まると、日経平均はボックス推移となりました。3月に外国人の売りが増えると、日経平均は一時、ボックスを下へ抜けました。ところが、4月後半から、外国人の買いが増加すると、一転して日経平均は上昇に転じました。まだ統計は出ていませんが、日経平均が高値を更新した5月は、外国人の買いがさらに増えていると考えています。

外国人投資家の売買を予測できれば、かなり高い確率で、日経平均の短期的な動きを予測できるのですが、残念ながら、外国人の売買を当て続けることはできません。ただ、いくつかの法則性はあるので、ある程度、予想することはできます。

外国人から見ると、日本株は「世界景気敏感株」で「世界の政治不安敏感株」です。世界景気回復の見通しが強まる時、世界の政治不安が緩む時、外国人は日本株を買い越す傾向があります。

外国人の買いは続くでしょうか?今後、世界的な政治不安が再燃することなく、世界景気の改善が続けば、日本株は外国人の買いで上昇が続くと考えられます。私は、世界景気の改善は続くが、政治不安は今後、何度も蒸し返すと見ています。

(2)政治不安のネタは尽きない

仏大統領選で「極右ルペン氏当選→EU崩壊加速」となるリスクは杞憂に終わりました。北朝鮮暴発で日本や韓国が巻き込まれるリスクも低下しました。これで、足元、政治不安が緩和したと見なされています。

ただし、政治不安・地政学リスクのネタは多数残っており、今年は不安が何回も蒸し返すと思います。主な懸念材料をあげると、以下の通りです。

  • 朝鮮半島有事リスク(リスクは低下したが、無くなったわけではない)
  • 米中対立先鋭化、南沙諸島で不測の事態が起こるリスク
  • シリア内戦泥沼化(米がアサド政権をミサイル攻撃、米ロ関係悪化、ISが漁夫の利)
  • ハード・ブレグジットのリスク(英国もEUも大きなダメージを受ける英・EUケンカ別れ)
  • EU解体リスク(EU各国で反移民・反緊縮・反EU運動がさらに拡大)
  • トランプ政権迷走リスク(支持率低下、政策実行能力低下、対外強硬策を強化)
  • 世界各地でテロが頻発するリスク
  • 安倍政権の指導力低下(森友学園問題・閣僚辞任など影響)

(3)日本の景気・企業業績の回復色が強まる

政治不安のネタは尽きませんが、景気・企業業績の回復色は、強まりつつあります。政治不安がなくなることはありませんが、不安が緩和する局面では、日経平均の上昇期待が高まります。今年の前半は、企業業績回復の勢いが強く、政治不安があっても、日経平均の上昇トレンドが続くと予想しています。

注意すべきは年後半です。景気回復が織り込み済みとなるタイミングで、政治不安が蒸し返すと、日経平均は下落に転じる可能性もあります。今年は、前半高・後半安の展開になる可能性もあります。

ただ、今すぐ弱気に転じる必要はないと考えています。日経平均は20,000円台に乗せ、最大で21,000円まで上昇する可能性があると予想しています。

今後の、企業業績モメンタム(勢い)と日経平均の動きを見ながら、年後半の投資戦略を考えていきます。