執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 仏大統領選・朝鮮半島有事の不安がやや低下したこと、発表中の3月決算が好調であることを受け、日経平均は19,000円台を回復。
  • 日経平均がこのまま一本調子に上昇するとは見ていない。政治不安の種は尽きないこと、米景気が減速していることが、懸念材料。

(1) 日経平均はボックス圏に戻る、円安と企業業績の回復を好感

先週の日経平均は、1週間で576円上昇し、19,196円となりました。年初から続いてきた18,900-19,600円のボックス圏に戻りました。

日経平均週足:2016年1月4日―2017年4月28日

(注:楽天証券マーケットスピードより作成)

仏大統領選および朝鮮半島有事の不安がやや低下し、1ドル111円台まで円安が進んだことと、現在発表中の3月決算が好調であることが好感されました。

ただ、このまま一本調子の上昇とはなりにくいと考えられます。今年は世界中に政治不安の種が尽きません。政治不安は目先やや緩和しただけで、これからも不安が高まるイベントがたくさん控えています。また、米景気に足元やや減速感が出ていることも上値を抑える要因となる可能性があります。

(2)仏大統領選と朝鮮半島有事の不安がやや低下

4月23日に実施された仏大統領選の第1回投票では、マクロン氏(親EU派・中道)がトップとなり、2位のルペン氏(反EU派・極右)と決戦投票に進むことになりました。5月7日に行われる決戦投票でもマクロン氏が勝利するとの見方が広がり、市場に安心感を与えました。

決戦投票の結果は、日本時間で5月8日の午前中に判明する見込みです。マクロン氏勝利の確率が高く、その通りになってもサプライズ(驚き)はありません。万一、ルペン氏勝利ならネガティブ・サプライズで円高株安が進むでしょう。ただ、その可能性は低いと考えています。

マクロン氏勝利で仏大統領選イベントを無事通過しても、それでEU(欧州連合)崩壊リスクがなくなるわけではありません。EU加盟国の国民には、以下の不満が蓄積しつつあります。

EUが域内の人の移動を原則自由としていることへの不満

移民によるテロ増加から反移民・難民感情が広がり、それが反EU感情につながっています。

ドイツおよびEU官僚に支配されることへの不満

EUではドイツ経済が圧倒的に強く、ドイツがEUを主導しています。財政の弱い国では、EUの命令で緊縮財政を強制されていることに、不満が高まっています。

朝鮮半島有事の不安もやや低下しました。米国・中国・ロシア・日本・韓国が連携して北朝鮮に圧力をかけ始めたことから、北朝鮮がすぐに暴発するリスクはやや低下したと見られています。ただし、北朝鮮が暴発して、日本や韓国が巻き添えを食うリスクがなくなったわけではありません。

(3)米景気がやや減速

米商務省が4月28日に発表した1-3月期GDP(速報値)は、前期比年率で0.7%増と、事前の市場予想(1.2%増)を下回り、3年ぶりの低い伸びに留まりました。GDPの7割を占める消費が0.3%増と急減速しました。自動車販売が落ち込んだこと、暖冬で衣料品販売が伸び悩んだことが影響しました。

米GDP成長率(季調済 前期比年率):2014年1-3月期~2017年1-3月期(速報値)

(出所:米商務省)

ただし、設備投資(9.4%増)は好調でした。企業業績が好調で、企業心理が前向きになってきていることが示されました。住宅投資(13.7%増)も好調でした。

自動車販売の不振を除けば、それ程、悪い内容とは言えません。低い伸びの米GDP発表後、ドル安(円高)が進むことはありませんでした。

今週、日本はゴールデンウイークで3日から連休に入りますが、その間、5月5日に4月の米雇用統計が発表されます。弱い指標の発表が続くと、米利上げの可能性が低下したと受け取られ、円高が進む可能性もあり、注意を要します。

GW明けの5月8日(月)東京市場は、仏大統領選の決戦投票結果と、4月の米雇用統計発表の影響を、同時に織り込むことになります。

(4)日本の企業業績に回復色強まる

発表中の、3月決算は、好調です。世界的な景気回復と、円安が業績に寄与しています。世界の政治不安が緩む局面で、日経平均は上値トライすると考えています。