グラフ4 TSMCの月次売上高

(単位:100万台湾ドル、出所:会社資料より楽天証券作成)

グラフ5 TSMCの月次売上高:前年比

(単位:%、出所:会社資料より楽天証券作成)

表3 主なスマートフォン用電子部品の概要

3.自動運転と電気自動車で増加する自動車向け電子部品と半導体

2016年の年末から、自動車向け電子部品と半導体に、それまでとは違う動きが見られるようになりました。例えば村田製作所の主力製品の一つであるチップ積層セラミックコンデンサの自動車向けが増加しており、これが要因でコンデンサ売上高が高水準で推移しています(グラフ8)。同業他社が自動車向け大容量品の生産を取りやめた影響で村田製作所の受注が増加しました。それに加えて、自動車向けコンデンサの実需自体も増加しています。

チップ積層セラミックコンデンサは電圧制御を行う部品で、各種電子機器に欠かせません。自動車生産台数が大きく伸びていない中で、セラミックコンデンサの自動車向けが増加しているということは、自動車の中身が変化していること、電装化が更に進んでいることを示唆しています。

実際に、ルネサス エレクトロニクス、ロームなど車載用半導体の大手の自動車向けも順調に増加している模様です。半導体は電子部品を搭載した電子回路に装着されるため、半導体と電子部品の動き、特に車載用ロジック半導体、アナログ半導体と電子部品は同じ方向に動くと考えてよいと思われます。

自動車向け電子部品と半導体需要が昨年末から増加している要因は、まずADAS(先進運転支援システム)の普及です。ADASを車に装着する場合は、車の各所にセンサー(カメラ、LIDAR(光による検知システム)など)を取り付け、センサーで感知した車周辺の情報をADASに伝えて、ADASから各種の指示をブレーキその他の制御系に伝えることになります。そのため、ブレーキなどの周辺にADASからの指示を受け取り実行する各種半導体と電子部品を装着した電子回路を取り付ける必要があります。また、ADAS内にも各種の半導体、電子部品が搭載されています。車の設計にもよりますが、ADASを1台装着すると、車内に半導体が数個増加し、その周辺の電子部品も増加すると思われます。

この傾向は、自動運転の水準がADAS(レベル1)からレベル2、3へ進むに連れて強く現れると予想されます。レベル3~4になると、エヌビディアのGPU(画像処理プロセッサー)のような一つのCPUで自動車全体を管理するプロセッサーに集約される場合もあると思われます。一方で、レベル3~4ではセンサーの数が20個程度に増え、小型モーターやアクチュエーターを使って自動車の各所を精密制御する必要があるため、半導体、電子部品の総装着個数が減るとは考えにくい面もあります。

更に、電気自動車(EV)やPHVが普及すると、自動車の電動化がより一層進むと思われます。特に電気自動車は内部に約300ボルトの高圧電流が流れますので、複数の電力制御半導体が必要になります。また、バッテリーの電力消費を抑えるために、完全電子制御になります。そのため、EV、PHVは自動運転と相性がよいのです。

従って、自動運転と共にEVのブームに到来すれば、自動車用半導体と電子部品の需要は中長期で増加すると思われます。車が、半導体、電子部品、モーターの塊になるということです。

この分野での注目銘柄は、自動車用半導体ではルネサス エレクトロニクス(エンジン制御用半導体など)、ローム(電力制御用半導体など)、自動車用電子部品では村田製作所(自動車用チップ積層セラミックコンデンサ(大容量版)など)、TDK(チップ積層セラミックコンデンサ、各種センサなど)、日本電産(自動車用モーター、ADAS)などです。

表4 自動運転の各段階

表5 自動運転システムの世界市場予測