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5年後のリスク

2016/4/6
先日、以前紹介したユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマー氏の講演会に行ってきました。同氏は毎年年初に今年の世界10大リスクを発表しています。
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先日、以前紹介したユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマー氏の講演会に行ってきました。同氏は毎年年初に今年の世界10大リスクを発表しています(第83回「2016年の世界10大リスク」2016年1月27日付参考)。同氏の予測や発言は、その後もネットやTV、また新聞にも時々取り上げられているため、年初の予測から変化はないかと追いかけてはいるのですが、現時点(3月)での予測を生(なま)で聴けるよいチャンスだと思い参加しました。会場は20分前にはほぼ満員で、その人気ぶりが窺えます。主催者の紹介によると、イアン・ブレマー氏は24歳でスタンフォード大学の博士号を取得し(旧ソ連研究)、弱冠25歳で同大学のフーバー研究所史上最年少のナショナルフェローとなった天才だそうです。そして28歳で現在の調査研究・コンサルティング会社のユーラシア・グループを設立しました。

現在45歳の生のイアン・ブレマー氏の印象は、「エネルギッシュだが、言葉を選びながら冷静に語る人物」という印象でした。非常にわかりやすい話しぶりで、どんな質問にもはっきりと答えていました。わからないことはわからないとはっきり言っていたのも印象的でした。講演名は「2016年の世界10大リスク」でしたが、実際の内容は5年後の重要なリスクという内容でした。講演会の内容に最近のニュースでの発言も加えてまとめたのが以下の内容です。

これらの内容は為替予測をする上で短期的に役に立つという話ではないですが、中長期的にはじわっと効いてくる内容です。また、経済リスクではなく、政治リスクからアプローチする内容ですが、為替予測の要因として政治リスクは重要です。一瞬にして経済要因を覆すことも起こり得るからです。政治リスクは中長期要因として捉えておくと役に立ちます。

中国リスク

5年後のトップリスクは中国でした。

中国は、2016年3月の全人代で2020年までの新5ヵ年計画を発表しました。その中で経造改革の推進を掲げ、GDPを2010年の2倍にする目標を打ち立てています。これに対してイアン・ブレマー氏は「2020年までに中国が構造改革といった大きな転換を早いスピードで実現できるのか不透明であり、私も実現できるのか全く予想がつかない。急速な改革は危険を伴い、中国共産党が支配的立場を失うきっかけにつながる恐れもある。政府もそれは望まないだろう。一方で改革を遅らせれば社会不安を引き起こすかもしれない。5ヵ年計画で掲げたGDPを達成するためには毎年6.5%以上の高い成長をする必要があるが、この構造改革とGDP目標達成の難しさや先行きの不透明感が最大のリスクである。中国がリスクに晒された場合、世界に与える影響は測り知れないだろう」と予測しています。年初の予測と比べると、3月に全人代で今後5年間の具体的な目標が掲げられたことによってリスクをより具体的に指摘しています。一方でブレマー氏は日本にとってはチャンスだと言っていました。日本の技術やサービス(例えば、高齢者向けサービス)は中国が必要としているものであり、日本は中国をライバル視するのではなく、中国が改革に成功すれば日本は中国を活用することが出来る大きなチャンスになると指摘していました。

中東リスク

年初の世界10大リスクではISIS(「イスラム国」)のリスクについて触れていましたが、講演会では中東が不安定になるリスクについて述べていました。ブレア―氏が言うには、

「中東は、これまで①米国の安全保障、②巨大なオイルマネー、③手厚い社会保障によるおとなしい民衆によって安定した地域として保たれていた。しかし、原油安による産油国への悪影響が大きなリスクになる。原油安は世界的な需要の減少によってだけではなく、技術進歩によるエネルギー革命によって、2020年までには「シェール」以外に世界で新たなエネルギー資源が掘り起こされるだろう。その結果、サウジやカタール、クウェートそしてイランなどの経済を原油に依存する中東産油国が持ちこたえるのは困難になるだろう。例えば、サウジは原油安によって財政赤字がGDPの16%になっており、外貨準備は2020年に枯渇する恐れがある。サウジの雇用の70%は政府雇用であり、社旗保障の削減だけは雇用を維持するのも難しくなるだろう。また、2020年までにイラク、シリアは分断する可能性があり、クルド人勢力は独立国家を形成するかもしれない。そして中東のテロ組織は各地に拠点をつくり、勢力を拡大していくだろう。リスクは中東だけにとどまらず広がっていく可能性がある。例えば、欧州諸国は難民やテロリストを完全に閉め出す事はできないだろう。また、ロシアや東南アジア諸国も同じような問題を抱えることになるだろう」と中東各国の政治的不安定リスクとテロの拡大を指摘しています。ロシアのシリア撤退によって、今後ISISの征討は誰が実行するのか。誰もやっておらず何も決まっていないことが懸念されると不安げに語っていました。

欧州リスク

欧州リスクは年初の10大リスクでもトップに挙げていますが、この講演会ではかなり悲観的な予測をしていました。「今後、欧州はゼロ成長が続き、シェンゲン協定も縮小・廃止され、観光はダメになるだろう。」と述べていました。見方をより厳しくした理由の一つとしてドイツで大晦日に起こった事件のことを繰り返し話していました。それは1,000人以上の難民が700人以上の女性を強姦・強盗した悲劇の事件のことです。3月に行われたドイツ州議会選挙では、メルケル首相率いる与党は失速し、反移民政策を掲げる政党が躍進しました。ブレア―氏は、その後のベルギー連続テロを受けて、「欧州のテロ対策は難しい。今後、欧州各国で外国人を敬遠するムードが拡大し、移民の受け入れは厳しくなるだろう」と述べています。そして、イギリスのEU離脱についても講演会ではイギリスは離脱しないだろうと言っていましたが、このベルギー連続衣テロ事件を受けて「欧州でテロ行為が続けばイギリスがEU離脱する可能性が高まるだろう」と予測を変えています。

シェンゲン協定=欧州の国家間において国境検査なしで ヒトの自由な移動を保障する協定

テクノロジーに脅かされるリスク

今年のダボス会議では第4次産業革命の影響が議題となり、人工知能や自動化によって労働が奪われ、2026年までには45%の仕事が自動化されるだろうとブレマー氏は述べています。「テクノロジーの進歩によって企業は効率性を高め多くの富を生むが、しかし、労働力という面では人間の重要性を奪うだろう。この結果、中間層の職が危機に晒されている。“世界の中間層”とは年収5,000.1万ドルの人たちのことであり、彼らは2020年までにテクノロジーにより仕事を奪われるだろう。そして2020年には、新興国でこのことが実体経済を脅かすリスクとなっているだろう。」と指摘しています。そして「政府が対応策でかじ取りを誤れば、多くの人が飢え死にする可能性がある。」と厳しい見方をしていました。

第4次産業革命⇒人工知能やビッグデータの発展によって予想される経済・社会の変革

仕事がなくなるという予測では、「テクノロジーによって今世紀末までに今の雇用の約75%が失われるという予測」もあります。また、野村総合研究所が2015年12月に発表したレポートでは「10〜20年後に日本の労働人口の49%の仕事が人工知能やロボット等で代替可能になるだろう。(601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確立を試算した結果)」と予測しています。その中には、タクシー運転手、宅配便、銀行の窓口受付など金融業務も入っていました。10~20年後というのも身近な未来です。技術進歩はいつも予測より速く進むため、前倒しでそういう時代が来るかもしれません。そういえば最近、驚くべきニュースが流れました。人工知能が囲碁のトップ囲碁棋士を圧勝したというニュースです。囲碁は将棋やチェスよりも碁盤の目が多く、人口知能が勝つのは後10年かかるだろうと言われていましたが、10年早く実現しました。

一方で、仕事がなくなるという予測ではなく、労働人口が減少するという予測が厚生労働省の雇用政策研究会から昨年11月に、2030年の労働力推計として公表されました。そのレポートによると、今後の日本経済が実質ゼロ%成長を続けると、就業者数は2014年比で790万人減少し、5,561万人になるとの試算です。約12%の減少になります。政府は日本の労働人口の減少を補うために女性や高齢者の労働参加を進めていますが、進めるスピードが遅いとテクノロジーの進歩による労働代替の方が速く進むかもしれません。そうなると政府が掲げる女性の社会進出はもっと遅れるかもしれません。

最後にイアン・ブレマー氏は、日本についてどう思うかという質問に対して、「日本は、経済は進んでいるが規模は縮小している。従って今後は外に出ていく必要がある。そのためにはコミュニケーション能力が重要になる。英語は自動翻訳機が進歩し技術的に十分対応してくれるだろう。それよりも違う世界観を持つひととコミュニケーションを取れる能力が重要となる。」と日本人への期待をもって講演会を締めくくっていました。

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