QE3の縮小実施がバーナンキ発言によって好材料視され、日経平均は年初来高値更新

先週は、予測を上回る上昇となりました。16日(月)の時点では、FOMCの結果でQE3の縮小が見送られれば前週の下げ分を埋める上昇となり、縮小が決定されれば目先はいったん下落することを想定しました。しかし、18日(水)の時点では、アメリカではQE3の縮小が決定されても前週の下げですでに織り込んでおり、むしろ材料出尽くしとなって上昇するという見方が多く、そうであればFOMC後はどちらにしろ上昇する可能性が高く、問題はその上昇が上値を追っていくような上昇になるかどうかとしました。そして、先送りになれば目先下げた分を取り戻す動きとなってもそれ以上の上値追いは限定的としました。

しかし、バーナンキ議長の予想外の発言を伴ったQE3縮小実施が、想定していたような目先の悪材料としてではなく、好材料となったことでNYダウは約3週間ぶりの史上最高値更新となり、19日(木)の日経平均は△271の15,859円となって終値ベースで年初来高値となり、柴田罫線でも再び買転換の状態に戻りました。バーナンキ発言の内容は、大まかに以下のようなものです。

(1)1月から現状の850億ドルの資産買い入れ額を100億ドル縮小することで、スタートを少なくし徐々に増やす方法で市場にショックを与えない方法をとった。

(2)失業率が目標の6.5%を下回っても、インフレ率が2%を達成しない限り超低金利政策を維持すると表明し、市場に安心感を与えた。

(3)縮小は開始するが、景気が悪くなればQE3の規模を戻し、さらなる買い入れを行っても景気を維持させると表明した。

 

今年もあと5営業日で、16,000円の大台にのせて年末を終えるかどうか

先週末のアメリカ市場では、7-9月期のGDP確定値が前期比年率△4.1%と改定値の△3.6%から大幅上昇修正されたことでNYダウは16,287ドルまであり、△42の16,221ドルと史上最高値更新となりました。シカゴの日経225先物は15,915円となっており、16,000円が視野に入りました。さらに日本市場が休日の昨日のアメリカでは、先週のFOMCの結果や7-9月期GDPの上方修正を好感した流れが継続しクリスマスラリーの期待もあって△73の16,294ドルと史上最高値を更新し続けています。シカゴ先物は16,045円と16,000円の大台のせとなりました。

連休明けの日本市場は、シカゴの先物が16,000円にのせていたことや、寄り付き後為替が円安基調の動きとなったことで、△85の15,955円で寄り付くと10時過ぎには16,029円まで上昇し、前引けは△124の15,995円となりました。16,000円台回復は2007年12月11日以来約6年ぶりとなります。しかし、後場に入ると上げ幅を縮小し、結局△18の15,889円で引けました。ただし、今日の日経平均の上昇はこれまでと同じように先物買い(ファーストリテイリング、ファナック、KDDIなど)が継続して裁定買いを誘って日経平均が上昇している状況であり、トピックスはマイナスに転じるなど片寄った上昇となっています。騰落数は上昇銘柄367に対して下降銘柄1,275となっており、全体的な上昇に発展していません。

今週はクリスマス休暇で参加者は限られるため、25日(水)までは個人投資家主体の中小型株相場の可能性があります。25日(水)には証券優遇税制の廃止に伴う「節税対策」の売りも終了すると同時に、それ以降は来年1月からのNISAに絡んだ買いも入ってくるため、個人投資家の買い需要が高まります。又、外国人投資家も12月第2週まで7週連続の買い越しですので、クリスマス休暇を終えた外国人買いの期待もあり、年末高で終える可能性があります。

 

■来年の相場の展望…リスクを内包しながら上昇トレンドは続く■

年前半上昇すれば、年後半は要注意の相場展開へ

アベノミクス相場の第2幕がスタートしていますが、来年はアベノミクス相場の第1幕のような一方的な上昇相場にはなりにくいといえます。前提に考えておかなければならないことは、アメリカの「QE3の縮小が開始された」という事実です。目先は、バーナンキ発言によって好材料視されましたが、QE3の実施によってアメリカ株式は上昇を続け史上最高値を更新中ですが、QE3が終われば、アメリカ株高もどこかで大きく修正されることになります。過去にQE1で15%、QE2で18%の調整が行われた経験則から、今回のQE3の終わりは来年の後半といわれていますので、来年の半ば以降は注意する必要があります。もちろん、それまでは上昇し続けるといっているのではなく、上がったものは下がるというのが相場ですので、史上最高値圏にある以上、突然どこかで調整があって再び上昇するというパターンになるのがふつうです。穏やかな上昇では穏やかな下落となりますが、急上昇の相場は急落する可能性が高いので、このまま上昇が続けば、日米共に注意が必要です。日本の場合は、為替とアメリカ株式に連動しますので、NYダウの動きには注目しておかなければなりません。悪材料として利用される可能性があるのは、来年2月の債務上限引き上げ問題です。秋の中間選挙を控えて共和党もあまり強引なことはできませんが、一応悪材料として出てくれば、これをきっかけに上げ過ぎからの調整が起こる可能性があります。

来年の1月相場は、アメリカのQE3縮小開始がスタートして好材料としてとらえられ、目先の不透明感がなく経済指標の改善が相次いでいますので、株高・ドル買い基調が続けば、日経平均も16,000円の大台から18,000円相場に向けたスタートを切ることになります。その途中で、1月中旬から2月中旬に調整があれば、4月に向けて一段高が期待できることになります。ただ、ここからの新しい相場になるための、新しい材料がまだ見えていません。日本市場は、これまでは円安という材料によってのみ上昇してきたのであり、最近の円安1本の材料に対して主力輸出株の反応が以前に比べて弱くなっています。結局、アベノミクス相場といっても成長戦略などの具体案が展開しておらず、日本の実体経済を引き上げるような状況にはなっていません。日経平均の18,000円へのスタートもこの成長戦略が具体化してこなければ期待倒れになってきます。事実、先週までの上昇を見ても、先物主導で日経平均に連動する値ガサ株が買われ、指数だけ上昇してほとんどの中小型株はカヤの外の状態となったままです。12月は上昇すればいったん利益確定といってきましたが、ごく限られた銘柄しか上昇せず、利益確定のチャンスがないというのが現状です。

上昇期待はあるものの、現時点では相場の方向性が見えていませんので、相場は休むのが基本ですが、割安なものがあれば損切りを設定しての短期売買となります。1月に日経平均が上昇すれば、保有株の水準訂正を待って利益を確定するというスタンスとなります。

 

来年考えられる株式市場を動かす材料

(1)アメリカのQE3縮小の影響とアメリカ経済の回復の程度(特に雇用と住宅)

(2)為替の円安基調……アメリカではQE3の縮小のスタートと、日本は金融緩和が続くため、日米金利差からは円安基調となります。チャートでは、1ドル=110円を目指す形となっています。

(3)中国(尖閣諸島)、韓国(竹島)の領土問題……安倍総理は、これまでの弱気な外交と違って強気な外交戦略をとっているため、何が起こるかわからないという状況があります。

(4)新興国経済の停滞……QE3の縮小が進めば新興国から資金が引き上げられ、経済の停滞と通貨安が継続する可能性が高く、新興国に投資している日本企業に悪影響を与えることになります。

(5)ユーロ危機は脱したのか……欧州は失業率が高くドイツのみが栄えていたが、金融緩和策によって表面的には安定化してきている。しかし、デフォルト騒ぎのあったギリシャ、ポルトガル、スペインの経済が短期的に根本的な改善がなされたとは思えず、どこかでユーロ危機の再燃の可能性はあります。

(6)消費税増税の景気に与える影響……2014年度予算がどこまで悪影響を阻止できるか。

 

以上を考えれば、日本株式が2020年の東京オリンピックまでは、中長期の上昇トレンドが続くとしても、その過程には大きな上下動があっての相場展開となるのがふつうであり、高くなったところでは買わず、大きな調整を待って買う、ということがリスクを少なくする基本的な投資スタンスだということになります。特に国内要因としては、4月からの消費税増税問題がどうなるか見通せませんので、4月までは駆け込みの個人消費が活発化する可能性が高いため、4月までが一勝負となるかもしれません。1月中旬以降の調整を期待するところです。

(指標)日経平均

先週の予測では、17~18日のFOMCの結果をみるまでは円安基調となっても上値は重く、外国人はクリスマス休暇に入ってくるので出来高は減少し主力株は買われにくく、中小型株相場になる可能性が高いとしました。

週明け16日(月)は、FOMCを控えて「円買い・先物売り」となって先物主導で▼250の15,152円の大幅反落となりました。しかし、17日(火)は△125の15,278円と反発し、18日(水)はFOMCでのQE3縮小は見送られる観測の元に先物主導で△309の15,587円の大幅続伸となりました。結果的に、18日(水)のFOMCではQE3縮小の実施が発表されましたが、同時にゼロ金利政策が長期に渡って維持される緩和策が発表されたことで、経済の強さが持続されるとの見方からアメリカ株式が急騰し、為替も5年2カ月ぶりの104円台の円安となりました。これを受けて19日(木)の日経平均は△271の15,859円の上昇となってろあ買となり再び買転換となって週末20日(金)も△11の15,870円と続伸しました。

連休明けの24日(火)は、アメリカ株式の連日の史上最高値更新と104円台の円安を好感して約6年ぶりに16,000円の大台を回復しましたが、その後上値は重く△18の15,889円で引けました。今週は26日(木)以降に16,000円の大台にのせて、年末16,000円のせで引けるか注目となります。

 

〔昨年11月中旬からのアベノミクス相場を柴田罫線で振り返ると以下のようになります〕

昨年の6月4日の8,238円を安値に10月15日の8,488円、11月13日の8,619円と順上げの3点底(逆三尊天井)を形成し、11月13日の8,619円を安値にアベノミクス相場がスタート、11月19日に9,153円で買転換出現となって今年の5月23日の15,942円まで上昇しました。この1週間前の5月15日(水)にメッセージで「山高ければ谷深し」として急騰後の急落の可能性を指摘し、5月23日に戦後11番目の急落となりました。6月13日の12,415円まで下落後、7月19日の14,953円まで反発するものの戻り天井となって8月28日の13,188円まで再下落し、大きな三角保ち合い(A)の形となりました。この8月28日の13,188円から9月27日の14,817円まで戻したあと三角保ち合い(A)の上部で小さな三角保ち合い(B)を形成していましたが、11月12日の14,588円で上放れとなり、7月19日の14,593円を上に抜けたものの12月3日に15,794円で止まり、12月6日の15,112円まで下落してもみあいとなっていました。アメリカのFOMCの結果によっては、5月23日の15,942円突破は年明けに持ち越しかとも思われていましたが、予想外にQE3縮小の発表が現時点では前向きにとらえられ、NYダウの史上最高値更新、為替の104円台と5年2カ月ぶりのドル高・円安となったことで12月19日には15,859円と終値ベースで年初来高値更新となりました。5月23日の15,942円を突破すれば2007年の18,000円水準まではフシらしいフシはありませんので、来年はアベノミクスの成長戦略が具体的になれば、ここを目指すことになります。

日経平均

 

(指標)NYダウ

先週の予測では、17~18日のFOMCが焦点であり、経済指標の改善からみると、QE3縮小が実施されてもそれを受け入れる環境が整ったという見方から株価は堅調というものと、実施されればまだ織り込み不足ということで波乱含みの展開を想定しました。

結果的に、バーナンキ議長は来月からのQE3の縮小を発表しましたが、同時に株式市場を安心させるために「失業率が6.5%を下回ってもインフレ率が2%を下回っていればゼロ金利政策を続ける」と発表しました。株式市場はこれまで以上の緩和的な内容を好感し、18日(水)は△242の16,167ドルと大幅上昇して、柴田罫線ではろく買という追加の買法則が出現し、週末20日(金)は16,287ドルまであって△42の16,221ドルと11月29日のザラ場での史上最高値16,174ドルを上回って引けました。これは7-9月期GDP確定値が前期比4.1%増と改定値の3.6%を大幅に上回ったことでQE3縮小が1月から始まっても景気の強さを維持できるとの見方が市場に広がりました。

今週は、引き続き強気のムードの中で堅調な動きが想定されますが、24日の住宅販売の発表で良い数字が出ると買い安心感につながります。

週明け23日(月)は、先週のFOMCの結果や週末の7-9月期GDPの上方修正を好感した流れを引き継ぎ、△73の16,294ドルと更に史上最高値を更新しました。

 

改めてチャート分析してみますと、上向きの先細三角形(A)の中で2012年11月16日の12,471ドルを安値に(ほぼこの時にアベノミクス相場もスタート)買転換が出現して上放れし、5月22日に15,542ドルまで上昇しました。ここから6月24日の14,551ドルまで押し目を入れたあと緩やかな上昇トレンド(B)となっていましたが、この中で10月9日の14,719ドルを安値とする反発から上昇トレンド(B)を上に抜ける形となって、10月29日に15,680ドルで買転換となって11月29日に16,174ドルまで上昇しました。12月12日に15,703ドルまで押し目を入れたあとQE3縮小の発表が前向きに受け止められ、12月18日に16,167ドルでろく買(追加の買法則)が出て、16,287ドルまで上がって16,221ドルで引けました。現状では、昨年11月16日の12,471ドルを安値とする上昇トレンド(C)を引くことができ、この上昇トレンドをみる限り、当面の上値抵抗ラインは17,000ドル水準となります。目先は、12月12日の安値15,703ドルを終値で下回ると15,300ドル水準までの調整は考えられますが、10月9日の14,719ドルを切らない限り本格調整はないということになります。

NYダウ

 

(指標)ドル/円

チャートをみる限り、リーマンショック前の高値2008年8月15日の110.5円を突破すれば長期的には2,007円のサブプライムローン問題前の6月22日の124.1円を目指すことも想定されますが、それまでには何が起こるかわかりませんので、中期的(来年)は、まず110円を目指す動きとなります。当面は、105円台はフシがあるところですので、この水準で一服する可能性があります。ここを抜けると107円台がフシとなります。

2008年8月15日の110.5円からのドルの下降トレンド(A)の中で、2011年10月31日の75.6円で底打ちとなり、2012年2月1日の76.1円、9月13日の77.1円と順次下値を切り上げる順上げの3点底(逆三尊天井)となって10月19日に79.4円で買転換が出現し、アベノミクス相場がスタートする11月15日の80.9円でろく買出現となって上放れの形となったことで、昨年末の為替分析では、中長期の上昇トレンドへ展開したと分析しました。その後、アベノミクスによる日銀の金融緩和政策(異次元緩和)によって5月22日には103.7円までの急激な円安進行となりました。ここから8月9日の93.8円まで押し目を入れて三角保ち合い(B)を形成していましたが、10月8日の96.6円を安値に反発となって11月12日に99.7円で買転換出現と同時に上放れとなり、先週は5月22日の103.7円の年初来高値を更新し、12月19日には104.31円でろく買(追加の買法則)が出て、20日(金)には104.64円までのドル高・円安となりました。

ドル/円