先週は6月5日(火)のG7の緊急電話会議をきっかけに反発

先週は、4日(月)に日経平均は8,238円まで下げて▼144の8,295円と年初来安値を更新し、トピックスにいたっては約29年ぶりのバブル後の最安値となりました。欧州問題に加えて中国、米国の景気悪化が鮮明になり、これに対する政治的対策を求める催促相場となって世界同時株安となった結果でした。

すでに、5月18日(月)の予測では、「3カ月のスパンでみると現在は底値圏」とし、ただし、6月17日のギリシャ再選挙までは、ユーロ圏離脱問題が上値を押さえ、日経平均は8,135~8,300円を試す可能性があるともしました。この時点では悪材料のみが出現していますが、これらが目先織り込まれてしまうと次はプラスの材料に目が向くようになるとしています。

そして、先週の6月4日(月)の予測では「催促相場へ突入、底値圏でのキッカケ待ち」としましたが、この日の引け後のアメリカ市場では5日(火)にG7による緊急電話会議が行われることになったことで、NYダウは下げ幅を縮めて引けました。緊急の電話会議での具体的な声明はなかったものの、この電話会議をキッカケに欧米の追加の金融緩和期待が高まり、中国の予想外の利下げ発表(3年ぶり)もあり、ユーロも大きく買い戻されたことでドル/円は79円台まで円安が進行し、3日続伸となって7日は8,639円となりました。ただし、週末(8日)は利益確定売りから▼180の8,459円の大幅反落で引けました。

週末、スペインの金融問題で好材料出現し、今週は戻りを試す可能性が高い

8日(金)のアメリカ市場では、NYダウは一時▼62の12,398ドルまで下落しましたが、ECB副総裁がスペインが欧州各国に支援を要請すると発表したことで、スペインの金融不安の不透明感が後退し、NYダウは△93の12,554ドルと4日続伸となりました。

ユーロ圏財務相は、スペインの銀行の資金増強に向けて最大で1,000億ユーロ(約10兆円)の支援を行うことで合意しました。これでスペインの銀行の資本不足からの金融不安がユーロ圏に拡大せずに済むことになりましたので、好材料出現といえます。ただし、これは銀行問題に限ったことですので、いずれスペインの債務問題はあらためて出てくることになるでしょう。IMFはスペインの銀行増強に対して4兆円必要としていましたが、今回は10兆円という額ですので銀行の不透明感は大きく後退します。

日経平均はどこまで戻る可能性があるのか?

スペインの好材料が出なければ8,300~8,600円の安値圏でのもみあいが17日(日)のギリシャ再選挙まで続く可能性が高いとおもわれましたが、スペインの金融の不透明さも今回の世界同時株安の要因の1つでしたので、それが目先解消されるとなると上昇要因となります。 中国の5月の景気指標は予想通りに市場予想を下回っており、中国政府の先週の3年ぶりの0.25%の利下げは今後、本格的に景気対策を発動していくシグナルだととらえることができます。先週末、期待されていたバーナンキ議長の証言の中には具体的な追加の金融緩和はなかったものの、いつでも準備はできているとのスタンスがありますので、世界の株式は再び大きく下げる局面となればQE3の発動が想定されます。

以上を考えると下値は限定的で戻りを試す状況にあるものの、ギリシャの選挙で急進左派連合が勝利することになれば、ユーロ圏離脱の可能性がでて株式相場は不安定になると思われます。逆に中道派が勝利すれば、ギリシャのユーロ圏離脱問題は当面はなくなり、ユーロも買い戻され株式市場は大きく上昇する可能性があります。 これらの組み合わせによって日経平均は8,800円台で止まるのか9,000円を試す動きになるのか、さらに上昇するのかわかりません。先のことはわからないとすれば8,800円台からは安いところで買った株は利益確定していくということも必要となります。大きく戻るにしろ買うリスクが少ないのは戻したあとの押し目を待ち2番底で買うというスタンスもあります。

目先は、5月下旬もみあって出来高が増加していた8,570~8,650円のもみあいの上限を終値でハッキリこえることができるかどうかとなります。本日は前場8,665円まで上昇しましたが、大引けでは△165の8,624円となって8,650円を上回ることができませんでしたが、ここを上回って引けると8,800円台が次の上値目標となります。

(指標)日経平均

先週の予測では、欧州問題と中国、米国の景気悪化懸念に対する催促相場となっており、昨年の11月25日の安値8,135円を試す動きになりそうだとしました。6月4日(月)は前週の米国の雇用統計が予想を大幅に下回り、これを受けて一時8,238円と昨年11月以来の安値をつけ、トピックスは約29年ぶりの安値となりました。しかし、G7の緊急電話協議を受け、欧米の追加の金融緩和期待が高まり7日(木)には8,647円まで上昇しました。ただし、週末にはバーナンキ議長の踏み込んだ発言がなかったこともあり▼180の8,459円で引けました。

先週末にスペインの銀行救済に向けて欧州各国の間で1,000億ユーロの支援の合意ができたことを好感し、6月11日(月)は△165の8,624円の大幅上昇となりました。今週は17日にギリシャの再選挙を控えて上値は重いものの、もみあいの上限である8,650円水準を終値で抜いてくると8,800円台を試す可能性があります(柴田罫線では、本日8,660円以上で引けていれば買転換出現となっていたところですが、そうはなりませんでした。下げても押し目買いの形となりますので、もみあい後は上を試す可能性が高いと思われます)。

日経平均

(指標)NYダウ

先週は、チャートからみると1/2押し(12371ドル)を切って12000ドル水準の抵抗ゾーンまで到達してきたので、目先反発していいところへきているとしました。何らかの好材料が出ると反発のキッカケになるとしていました。

4日(月)はスペインの金融不安から12035ドルまで下落するものの、5日(火)にG7の緊急電話協議が行われることになり下げ幅を縮小しました。6日(水)には欧米の追加の金融緩和期待が高まり△286の12414ドルと今年最大の上げ幅となりました。その後も戻りが続き4日連続上昇となって、8日(金)は△93の12554ドルとなりました。1週間で435ドル上昇し、今年最大の上げ幅となっています。

今週は、17日にギリシャの再選挙を控え、その前には14日にイタリアの国債入札もあり、また米銀行の格下げ観測も出ており、不安定な値動きとなりそうです。チャートからみても12600ドル台は上値が重なるところであり、一服するところだと考えられます。しかし、先週末にスペインの銀行問題の不透明感が大きく後退しましたので、これが上昇要因となる可能性があります。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週は、急激なユーロ安からの反動や政府日銀による円売り介入の警戒感もあり、乱高下する可能性があるとして、77.5~79円を基本レンジとしました。

6月1日(金)に世界同時株安となってリスク回避の円買いから77.66円まで円が上昇しました。4日(月)には5日(火)にG7の緊急電話協議が開かれるということからユーロが買い戻され、電話協議以降欧米の追加の金融緩和期待が高まって6日(水)には79円台、さらに8日(金)には中国の予想外の3年ぶりの利下げを受け、79.75円のドル買い・円売りとなりました。

今週はギリシャ問題、スペインの銀行資本不足に対する具体的な方策が打ち出されてくれば、ユーロを買い戻す動きが広がり、ドル/円も80.5円ぐらいまでの円安が想定されます。78.5~80.5ドルのレンジを想定しますが、4月20日の81.78円のドルの戻り高値から下降トレンド(A)となっており、この中で6月1日に77.66円まで下げて7日に79.61円で買転換となって、ドルの下降トレンド(A)を上に抜けるかどうか(円安方向となるか)の微妙なところとなっています。

ドル/円